研修などで、あるテーマに沿って議論して、グループとしての総意を導いてもらうようなワークをすることがありますが、そんな中で特に若手社員に見受けられる光景として気になることがあります。それは、意見が対立するような議論をできるだけ避けようとすることです。
誰かが初めに言った意見にそのまま迎合して、他の人は自分の意見をほとんど言わずに終わったり、それぞれの人が意見はいうものの、それをすり合わせたり調整したりしようとせずに、多数決などで決めてしまおうとします。
多数決というのは議会などでの決議方法としてはあるものの、一般的な場面では少数意見の無視ですし、時間切れでどうしても決めなければならない時にやむを得ず使うものです。またビジネスの場面であれば、多数決で物事を決めることは、よほど議論が煮詰まってどうにも調整がつかないような状況にでもならない限りはめったにありません。顧客との意見調整であれば、多数決などあり得ません。
研修ではもちろん「そんな決め方はやり直し!」となる訳ですが、だいたい初めはキョトンとしています。多数決は公平で民主的と思っているのか、多数意見の人も少数意見の人もそれで納得している様子です。
前述のようなことを説明して、なぜダメかがようやく理解してもらえる訳ですが、議論を避ける、意見を言わないという部分は、日常にもいろいろな形で出てきます。
○その場では何も言わずに納得している様子だったのに、影でいろいろ文句を言う。
○「部長からみんなに言って下さい!」など、上司の権威に頼って意見をまとめようとする。
○事前の意向確認や根回しということを適切に行わないので、「そんなの聞いてないぞ」というような内容のことが突然出てくる。
その他にもいろいろなことがあるでしょう。
これはやっぱり小学校中学校といった子供の頃から、意見の違う相手とコミュニケーションを取って、合意できる妥協点を見い出すなど、意見がぶつかることを避けてきている傾向があるのだと思います。本人が無意識のうちに身についてしまった習慣なので、改善するには地道に指摘、指導を続けるしかありません。
若手社員を観察している中で、もしも何かを決めようとしている場面で、安易に多数決などで決めているようであれば、それが正しいことばかりではないと、しっかり指摘する必要があると思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
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