未公開株の販売・無登録業者と金融商品取引法、不法行為責任 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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未公開株の販売・無登録業者と金融商品取引法、不法行為責任

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未公開株の販売・無登録業者と金融商品取引法、不法行為責任

 無登録業者が違法に未公開株を販売する事例の弊害について、平成23年に金融商品取引法が改正された。(ジュリスト2012年8月号「特集 金融商品取引法 施行5年の軌跡と展望」、「近年の金融商品取引法に関する改正の概要」)

 金融商品取引法の改正前においても、ほとんど価値がなく譲渡性のない未公開株を高値で売りつけられた場合、不法行為に基づく損害賠償請求が可能であった(『金融商品取引法判例百選』29事件)。

 以下、条文のみを記載する場合は、金融商品取引法の条文である。

◎無登録業者に対する規制

1 金融商品取引業者などの商号。名称の使用禁止(31条の3)

2 広告・表示の禁止(31条の3の2第1号)

3 契約の締結・その勧誘の禁止(31条の3の2第2号)

4 無登録業者による未公開有価証券の売付け等は無効(171条の2)

 この規定により、法改正前とは異なり、公序良俗違反(民法90条)かどうかを問題とするまでもなく、原則として、無効であり、不法行為に基づく損害賠償請求、不当利得返還請求ができる。

5 裁判所の禁止・停止命令(192条)

6 罰則

◎商号等の使用制限

 金融商品取引業者でない者は、金融商品取引業者という商号若しくは名称又はこれに紛らわしい商号若しくは名称を用いてはならない(31条の3)。

◎金融商品取引業を行う旨の表示等の禁止

 金融商品取引業者等(第34条に規定する金融商品取引業者等をいう。)、金融商品仲介業者その他の法令の規定により金融商品取引業(第33条の5第1項第3号に規定する登録金融機関業務を含む。以下この条において同じ。)を行うことができる者以外の者は、次に掲げる行為をしてはならない(31条の3の2)。

 第36条の2第1項に規定する標識又はこれに類似する標識の掲示その他の金融商品取引業を行う旨の表示をすること。

 金融商品取引業を行うことを目的として、金融商品取引契約(第34条に規定する金融商品取引契約をいう。)の締結について勧誘をすること(第2条第8項各号に掲げる行為に該当するものを除く。)。

◎未公開有価証券

第171条の2第1項の「未公開有価証券」とは、社債券、株券、新株予約権証券その他の適正な取引を確保することが特に必要な有価証券として政令で定める有価証券であって、次に掲げる有価証券のいずれにも該当しないものをいう。(第171条の2第2項)

 金融商品取引所に上場されている有価証券

 店頭売買有価証券又は取扱有価証券

 前2号に掲げるもののほか、その売買価格又は発行者に関する情報を容易に取得することができる有価証券として政令で定める有価証券

◎無登録業者による未公開有価証券の売付け等は無効

 無登録業者(第29条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで第28条第1項に規定する第1種金融商品取引業又は同条第2項に規定する第2種金融商品取引業を行う者をいう。以下この項において同じ。)が、未公開有価証券につき売付け等(売付け又はその媒介若しくは代理、募集又は売出しの取扱いその他これらに準ずる行為として政令で定める行為をいう。以下この項において同じ。)を行った場合には、対象契約(当該売付け等に係る契約又は当該売付け等により締結された契約であって、顧客による当該未公開有価証券の取得を内容とするものをいう。以下この項において同じ。)は、無効とする(第171条の2第1項)。

ただし、当該無登録業者又は当該対象契約に係る当該未公開有価証券の売主・発行者(当該対象契約の当事者に限る。)が、当該売付け等が当該顧客の知識、経験、財産の状況及び当該対象契約を締結する目的に照らして顧客の保護に欠けるものでないこと又は当該売付け等が不当な利得行為に該当しないことを証明したときは、この限りでない(第171条の2第1項ただし書)。

◎裁判所の禁止・停止命令

第192条  裁判所は、緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、金融商品取引法又は金融商品取引法に基づく命令に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。

  裁判所は、前項の規定により発した命令を取り消し、又は変更することができる。

  前2項の事件は、被申立人の住所地又は第1項に規定する行為が行われ、若しくは行われようとする地の地方裁判所の管轄とする。

  第1項及び第2項の裁判については、非訟事件手続法の定めるところによる。

◎罰則

 届出等を要する有価証券を募集・売出した場合、あるいは、無登録業者については、以下の罰則が適用される。

第197条の2  次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは5百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

1号  第4条第1項の規定による届出を必要とする有価証券の募集若しくは売出し、同条第2項の規定による届出を必要とする適格機関投資家取得有価証券1般勧誘又は同条第3項の規定による届出を必要とする特定投資家等取得有価証券1般勧誘について、これらの届出が受理されていないのに当該募集、売出し、適格機関投資家取得有価証券1般勧誘若しくは特定投資家等取得有価証券1般勧誘又はこれらの取扱いをした者

10号の4  第29条の規定に違反して内閣総理大臣の登録を受けないで金融商品取引業を行った者

第200条  次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

12号の3  第31条の3の2の規定に違反した者

13  第32条の2第1項(第32条の4及び第57条の26第1項において準用する場合を含む。)又は第3項の規定による命令に違反した者

第205条の2の3  次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

2号  第31条の3、第43条の4第1項、第66条の6又は第194条の規定に違反した者

(両罰規定)

第207条1項  法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。

2号  第197条の2(第11号及び第12号を除く。) 5億円以下の罰金刑

5号  第200条(第12号の3、第17号、第18号の2及び第19号を除く。)又は第201条第1号、第2号、第4号、第6号若しくは第9号から第11号まで 1億円以下の罰金刑

6号  第198条第4号の2、第198条の6第8号、第9号、第12号、第13号若しくは第15号、第200条第12号の3、第17号、第18号の2若しくは第19号、第201条(第1号、第2号、第4号、第6号及び第9号から第11号までを除く。)、第205条から第205条の2の2まで、第205条の2の3(第13号及び第14号を除く。)又は前条(第5号を除く。) 各本条の罰金刑

  第1項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

(法人の役員等に対する罰則の適用)

第207条の2  第197条の2第12号、第198条第5号又は第203条第1項に規定する者が法人であるときは、これらの規定は、その行為をした取締役、執行役その他業務を執行する役員又は支配人に適用する。