金融商品取引法の投資者保護基金の概要 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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金融商品取引法の投資者保護基金の概要

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金融商品取引法の投資者保護基金の概要

投資者保護基金は,金融商品取引法(以下、法という)79条の56の規定による一般顧客(適格機関投資家・国・公共団体を除く)に対する支払その他の業務を行うことにより投資者の保護を図り,もって金融商品取引に対する信頼性を維持することを目的とする投資者保護基金(以下「基金」という。)である(法79条の21)。

「顧客資産」とは,金融商品取引業に係る取引(有価証券店頭デリバティブ取引その他の政令で定める取引を除く。)に関し,一般顧客の計算に属する金銭又は金融商品取引業者が一般顧客から預託を受けた金銭等をいう(法79の20第3項)。

金融商品取引業者(政令で定める金融商品取引業者を除く。)は,いずれか一の基金にその会員として加入しなければならない(法79条の27第1項)。

投資者保護基金の主な目的として、一般顧客が当該認定金融商品取引業者に対して有する債権であって基金が当該認定金融商品取引業者による円滑な弁済が困難であると認めるもの(以下「補償対象債権」という。)につき,一定の金額の支払を行うこと(法79条の56第1項)、弁済困難な金融商品取引業者に対する顧客資産の返還資金の貸付けを行うこと(法79条の59)の2つである。

◎弁済困難の認定

以下の事由により、金融商品取引業者が弁済困難と認められる場合(79条の53)には、基金に通知される。弁済困難事由として、金融商品取引業の登録の取消し、業務の全部又は一部の停止の命令、廃止、破産・民事再生・会社更生(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律含む)の手続開始、特別清算の開始の申立てを行ったとき等である。

 基金は、通知を受けた場合には、投資者の保護に欠けるおそれがないことが明らかであると認められるときを除き、当該通知に係る金融商品取引業者(以下「通知金融商品取引業者」という)(79条の53)につき、顧客資産の返還に係る債務の円滑な履行が困難であるかどうかの認定を、遅滞なく、行わなければならない(79条の54)。

◎顧客資産の補償金の支払い

基金は,会員である金融商品取引業者について,破産の申立てがされたなどの通知を受け,法79条の54の規定に基づき顧客資産の返還に係る債務の円滑な履行が困難であるとの認定をした場合,認定を受けた金融商品取引業者(以下「認定金融商品取引業者」という。)の一般顧客の請求に基づいて,法79条の55第1項の規定により公告した日において現に当該一般顧客が当該認定証券会社に対して有する債権(当該一般顧客の顧客資産に係るものに限る。)であって基金が政令で定めるところにより当該認定証券会社による円滑な弁済が困難であると認めるもの(以下「補償対象債権」という。)につき,一定の金額(上限1千万円)の支払を行うものとされている(法79条の56第1項)。

最高裁判決平成18年7月13日・民集60巻6号2336頁、『金融商品取引法判例百選』74事件は、旧・証券取引法79条の20第3項2号にいう「証券業に係る取引」の解釈につき,「補償対象債権の支払によって投資者の保護,ひいては証券取引に対する信頼性の維持を図るという,基金が設けられた趣旨等にかんがみると,証券業に係る取引には,証券会社が,証券業に係る取引の実体を有しないのに,同取引のように仮装して行った取引も含まれるが,上記趣旨等からして,当該証券会社と取引をする者が,取引の際,上記仮装の事実を知っていたか,あるいは,知らなかったことにつき重大な過失があるときには,当該取引は証券業に係る取引の該当性が否定される。本件各社債取引は,証券会社とその顧客との間における社債取引として行われたものであり,本件各社債取引がA証券によって証券業に係る取引のように仮装されたものであるとしても,本件各社債取引者らが,本件各社債取引の際,そのことを知っていたか,あるいは,知らなかったことにつき重大な過失があるという事情がない限り,本件各社債取引は証券業に係る取引に当たると解すべきである。」と判示した。なお,上記悪意又は重過失についての主張,立証責任が基金側にある。

◎金融商品取引業者に対する顧客資産の返還資金の貸付け

基金は、基金の補償の対象となる認定金融商品取引業者以外に対して、顧客資産の返還資金の貸付けを行う。

 基金は、通知金融商品取引業者(認定金融商品取引業者を除く。)又は通知金融商品取引業者に係る顧客分別金信託(43条の2第2項)の信託の受益者代理人の申込みに基づき、その必要と認められる金額の範囲内において、これらの者に対し、顧客資産の返還に係る債務の迅速な履行に必要な資金の貸付け(以下「返還資金融資」という。)を行うことができる(79条の59第1項)。

 返還資金融資の申込みを行う者は、当該申込みを行う時までに、当該返還資金融資に関し、次に掲げる要件のすべてに該当することについて、内閣総理大臣の認定(以下この条において「適格性の認定」という。)を受けなければならない(79条の59第2項)。

返還資金融資が行われることが顧客資産の返還に係る債務の迅速な履行に必要であると認められること。

返還資金融資による貸付金が顧客資産の返還に係る債務の迅速な履行のために使用されることが確実であると認められること。