新人店長は「新人オリエンテーション」を必ず自分で実施しよう

「では今から、この店で働いていくことについて『大切なこと』をお話しします。今日からの仕事にとても大切なことですから、しっかりと聴いて理解をして下さいね。」

この日は、先日採用された新人パート・アルバイトの勤務初日。そのスタートの1時間。この店では、初日を迎えた新人パート・アルバイトに対して、店長から直接、「この店で働いていくことについて店長や会社がこだわっている事柄」を、丁寧に説明をしています。この店ではこれを「オリエンテーション」と名付けています。

この「オリエンテーション」では、「時間管理や言葉使い、あいさつ、身だしなみ、ルール」などの基本的なことから、「この店の歴史やお客様に対する想い、店が目指している理想の姿」などのビジョンについて、店長自らが説明をします。そして最後に「仕事をして行く上で悩み事が出来たときの対処方法」について伝えます。新人パート・アルバイトは、このオリエンテーションを受けることで、この店で働いて行くことへのモチベーションと緊張感、さらに責任感を高めていきます。

あるカフェで店長を任されているＡさんが、このオリエンテーションで特にこだわっているのは、「この仕事だけは誰にも任せない」というポリシーです。私は彼女に、そのこだわりの理由を尋ねました。彼女は答えてくれました。
「新人のパート・アルバイトは、誰もが不安と期待を持って初日を迎えます。その緊張感はもの凄いものがあるはずなんです。その最高の緊張感があるときに、私は、新人パート・アルバイトに伝えたい言葉があるんです。」

彼女はその伝えたい言葉を続けました。
「ひとつめは、『先輩から仕事を教えてもらっていたら、微妙に教える内容が違うように感じることがある。そんな時は店長に相談して下さい。』と言うことなんです。作業やルールはマニュアルを作っているんだけれど、微妙に解釈が違ったり、教え方が違ったりすることがあるんです。新人はそれで混乱して悩んでしまいます。その修正は私の仕事、いえ、私の責任なんです。」彼女は、さらに続けました。「もうひとつは、『人間関係で困ったら、私に相談しなさい』と言うことなんです。だって、バイトをする中で一番の悩みは、人間関係ですものね。これも、解決するのが私の仕事、責任ですから。」

新人パート・アルバイトが、バイトを辞めるタイミングは、3日目、30日目、3ヶ月目と言われています。このタイミングで発生する悩み事は、仕事についての技術的な問題以上に人間関係の問題が大きいのです。また、ちょっとした言葉のかけ方ひとつで「怒られた」「笑われた」「からかわれた」「嫌われた」と思ってしまうのが新人です。ベテランにとってはたわいのないことでも、新人には大きな問題なのです。それにいち早く気がついて、すぐに解決しないと、その新人は辞めてしまいます。

そんな新人が、悩んだらすぐに店長に相談出来る様に「初日の一番最初の1時間」は、絶対に店長がオリエンテーションを行う。彼女がこだわっているのはこういう理由の為なのです。彼女のこのこだわりの成果は、新人パート・アルバイトの1ヶ月以内の初期退職がゼロという成果を生んでいます。店長自らが、新人のアルバイトのスタートをサポートすること。これが、新人の不安の解決に大いに役立つのです。

さて、あなたは、新人パート・アルバイトの初日をどの様に迎えていますか？