有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする損害賠償請求訴訟の動向 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする損害賠償請求訴訟の動向

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有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする損害賠償請求訴訟の動向

 (1)西武鉄道事件

 西武鉄道株式会社の株式を取得した投資家が,同社が有価証券報告書に親会社の持株数等について虚偽の記載をして上場廃止事由に該当する事実を隠蔽していたとして,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求めた事件である。

 西武鉄道事件判決は,上記の虚偽記載がなければ投資家らが西武鉄道株を取得することはなかったとした上で,このような場合の投資家の損害は,取得価額と処分価額の差額を基礎として,当該虚偽記載に起因しない下落分を上記差額から控除して算定すべきであると判断した。

 (2)ライブドア事件

 株式会社ライブドアの株式を取得した投資家が,同社が有価証券報告書に実際は経常利益が赤字なのに黒字と偽った虚偽記載をしていたとして,金融商品取引法21条の2に基づく損害賠償を求めた事件である。同事件においては,同条2項によって損害額を推定する場合において投資者が請求することのできる賠償額が,いわゆる取得時差額(取得価額と想定価額の差額)に限られるのか,虚偽記載等と相当因果関係のある損害全てを含むのかが争われた(前者の考え方によれば,2項推定損害額のうち取得時差額を超える分は同条4項又は5項によって減額すべきこととなる。)。

 ライブドア事件判決は,金商法21条の2第2項にいう「損害」とは虚偽記載等と相当因果関係のある損害を全て含むものであって,これを取得時差額に限定することはできないとして,同条5項にいう「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下り」とは,取得時差額に限られず,虚偽記載等と相当因果関係のある値下がりの全てをいうと判断した。

 (3)アーバンコーポレイション事件

最判平成24年12月21日、アーバンコーポレイション再生債権査定異議事件

裁判集民事242号91頁 、判例タイムズ1386号169頁

臨時報告書に虚偽記載等がされている上場株式を取引所市場において取得した投資者が当該虚偽記載等がなければこれを取得することはなかったとみるべき場合,上記投資者に生じた当該虚偽記載等と相当因果関係のある損害の額は,上記投資者が当該虚偽記載等の公表後,上記株式を取引所市場において処分したときは,その取得価額と処分価額との差額を基礎とし,経済情勢,市場動向,当該上場株式を発行する会社の業績(その後、会社が民事再生手続開始)など当該虚偽記載等に起因しない市場価額の下落分を上記差額から控除して,これを算定すべきである。