最高裁平成21年6月5日、一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の各不許可処分取消請求事件 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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最高裁平成21年6月5日、一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の各不許可処分取消請求事件

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相続

最高裁平成21年6月5日、一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の各不許可処分取消請求事件

【判示事項】 浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者に対してされた浄化槽清掃業不許可処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者からされた浄化槽清掃業の許可申請につき,浄化槽法(平成16年法律第147号による改正前のもの)36条2号ホ所定の欠格事由に該当することを理由として不許可処分がされた場合において,上記許可申請に係る区域内では浄化槽の清掃と上記汚泥等の収集運搬を一体として併せて行わせる趣旨の下に他の事業者に対する一般廃棄物収集運搬業等の許可がされていたなど判示の事情の下で,上記申請者から上記汚泥等の収集運搬の要請があった場合には上記事業者はこれに応ずる義務があるとし,両者の間で上記汚泥等の収集運搬につき業務委託契約が締結される見込みがあったのかどうかなどの事実について審理を尽くすことなく,上記申請者は上記汚泥等の収集運搬を上記事業者に業務委託することができる体制にあったとして,上記不許可処分を違法とした原審の判断には,違法がある。

【参照条文】 浄化槽法(平16法147号改正前)36 、浄化槽法35-1
【掲載誌】  最高裁判所裁判集民事231号121頁、判例タイムズ1304号149頁

1 Xらは,一般廃棄物(し尿汚泥)の収集運搬及び浄化槽の清掃が既存許可業者Z(補助参加人)によって行われている区域において,これらの事業に新規に参入しようとし,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)7条1項に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可申請(以下「申請①」という。)及び浄化槽法35条1項に基づく浄化槽清掃業の許可申請(以下「申請②」という。)をしたが,旧大野広域連合長(地方自治法284条3項参照)から,いずれも不許可とする処分を受けた。
本件は,広域連合長の事務を承継したY(豊後大野市長)に対し,Xらが各処分の取消しを求める訴訟である。控訴審判決は,申請①に係る不許可処分は適法としたが,申請②に係る不許可処分は違法としてこれを取り消したことから,これについてYから上告受理の申立てがあった。Xらからの不服申立てはなかったため,上告審で審判の対象となったのは,申請②に係る不許可処分の違法性の有無のみである。
2 本件に関連する法制度についてみると,まず,一般廃棄物の処理については,市町村が,一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物処理法6条1項),自ら又は第三者に委託してこれを行うとされており(同法6条の2),当該市町村は,自らこれを処理することが困難な場合で許可申請の内容が上記計画に適合するものである等所定の条件を満たした場合に,一般廃棄物収集運搬業の許可をすることができる(同法7条1項,5項)。そして,この許可につき,判例(最高裁判決平成16年1月15日・判タ1144号158頁)は市町村長に広範な裁量を認めている。
 他方,浄化槽清掃業の許可基準についてみると,まず浄化槽の清掃は環境省令で定める浄化槽の清掃の技術上の基準に従って行われるベきものであり(浄化槽法4条8項,9条),当該技術上の基準の一つとして,引き出し後の汚泥等が適正に処理されるよう必要な措置を講じることが定められている(環境省関係浄化槽法施行規則3条12号)。そして,判例(最高裁判決平成5年9月21日・裁判集民事169号807頁,判タ829号141頁)は,浄化槽清掃業の許可申請者が,浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集,運搬につき,これに必要な一般廃棄物処理業の許可を有せず,また,他の一般廃棄物処理業者に業務委託すること等により適切に処理する方法も有していないという事実関係の下において,上記許可申請者には,浄化槽法36条2号ホ所定の欠格事由(浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者)があるとしている。本件で,上記広域連合長が申請②を不許可とした理由も,浄化槽の清掃の結果,引き抜かれた汚泥等を適正に処理する体制が確認できないためというものであった。
3 控訴審判決は,申請①に係る不許可処分については,裁量逸脱はないとしたが,申請②に係る不許可処分については,Zのみで広域連合の区域内におけるし尿汚泥の収集運搬を行うことを前提としてZに一般廃棄物収集運搬事業の許可等がされている以上,Zは,当該町村の住民等からし尿汚泥の収集運搬の要請があった場合には,特段の事情のない限り,これに応じる義務があるから,Xらは,Zに対し,浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬を業務委託することができる体制にあったとして,これと異なる判断の下にされた不許可処分は違法としたものである。
 これに対し,本判決は,広域連合が定めた一般廃棄物処理計画は,区域内での浄化槽の清掃とこれにより引き出される汚泥等の収集運搬については,両者を一体として併せてZのみに行わせるという趣旨であり,この趣旨の下にZに対しし尿汚泥の収集運搬に係る一般廃棄物収集運搬業の許可がされたものであるから,Zとしては,住民等から浄化槽の清掃とこれにより引き出される汚泥等の収集運搬とを併せて依頼された場合に,これを引き受けて業務を適切に行いさえすれば,同計画に従った業務を遂行しているということができるのであり,これを超えて,他の事業者が行う浄化槽の清掃により引き出される汚泥等につき収集運搬を行うことを義務付けられる理由はないとして,控訴審判決を破棄した。
4 浄化槽清掃業の許可基準について判示した平成5年の上記判例は,その判示内容からすれば,他の一般廃棄物処理業者に控訴審判決がいうような業務引受け義務があるとはいえないとの立場に立っているもののように思われるが,この点につき明示的に判断を示したものではなかった。この点,本件の控訴審判決が一般廃棄物収集運搬業者であるZに引受義務があるとしたため,本判決がこれについて明示的に判断をすることになったものと解される。
 なお,現行法制上,国民生活に不可欠な一定の公共サービスについては,法律の規定により,事業者に対し供給義務や業務引受け義務が課されているが(電気事業法18条,ガス事業法16条,鉄道営業法6条,道路運送法13条等),一般廃棄物処理業者には,法律の条項上,こうした義務は課されていない。
しかしながら,本判決は,そのことから一般的にZには業務引受義務がないとはせず,本件における廃棄物処理計画の趣旨等を踏まえて,Zが当該計画で予定されている以上の業務引受義務を課されることはないとしたものである。
なお,このような業務引受義務を肯定するものとして北村喜宣「判評」自研66巻5号111頁,この見解に疑問を呈するものとして阿部泰隆「一般廃棄物処理業・浄化槽清掃業の許可法制の問題点(2・完)」自研68巻4号3頁がある。