- 田原 洋樹
- 株式会社オフィスたはら 代表取締役 人材育成コンサルタント
- 東京都
- 人材育成コンサルタント
対象:ビジネススキル
BIZトレンド『人材定着コラム』 ~⑦新卒採用者の離職を防ぐために気をつけること~
の投稿記事をシェアしております。
3年で3割が離職の背景に迫る・・・
厚生労働省が10月29日付けで公表した、最新の新卒者離職率(2010年3月卒業生対象)は、大卒者31%(前年比+2.2)、短大卒39.9%(同+0.6)、高卒者39.2%(同+3.5)と
各層で前年を上回る結果となりました。
景気が上向きつつあるとはいえ、依然厳しい就職環境を潜り抜けて来た優秀な戦力を失うことは企業にとっては大きな痛手であることは言うまでもありません。
この現象の背景には一体何があるのでしょうか?
学生は就活で燃え尽き症候群に陥ったのか?
学生の就職活動は厳しさを増していると聞きます。
内定をもらうどころか、書類選考を通過し面接にたどり着くだけでも、相当な競争率になっています。
エントリーシートの平均提出数は26社(就職ジャーナル2013年調べ)で、中には100社を超えるような学生もいます。
多くの企業に対しアプローチを繰り返す中で、学生は疲弊し、自信を失っていきます。
そして、ようやく内定通知を手に入れる頃には、精根尽き果てた、いわゆる「燃え尽き症候群」に陥っている学生も少なくありません。
配活の果てに・・・
しかし、就活で疲れ切った彼らには、まだ大切な活動が残っているのです。
最近、内定後に繰り広げられている、配属活動、いわゆる配活です。
※配活とは??
就職活動
で内定
を得た学生
がそこで活動を終了
せず、入社
後希望
通り
に配属
(職種
や部署
、勤務
地など)されるよう企業研究を続けたり、さまざまな機会
をとらえて内定先にアプローチ
したりすることを配属活動、略して「配活」と呼びます。若者
の労働観、就労
観を反映
した新しい動き
として注目
されています。
就活~配活と過酷な時間を過ごし、並々ならぬ「想い」を持って入社式を迎える彼ら。
一方で、受け入れ側は、主にバブル世代を中心としたマネジャー層がチームの代表として、彼らを待ち構えます。
バブル世代の多くは、楽々就職戦線を勝ち抜いてきた世代。内定拘束旅行に象徴されるように、企業側からさんざんチヤホヤされて入社した世代です。
ここで新卒者は、大きな世代間ギャップに直面することになるのです。
二つのミスマッチ
いざ入社となると、彼らは二つのミスマッチを経験することになります。
一つ目は、想定していた「イメージ」とはかけ離れた仕事の環境やその内容。
つまりハード面でのミスマッチです。
就活や配活を通して抱いていた仕事のイメージと、現実に目の前にした仕事に向き合った時にギャップが生じてしまいます。
入念な活動をしてきたからこそ、理想と現実に苦しむのは多少なりとも誰もが経験することでしょう。
そして、二つ目のミスマッチ。これは先ほど挙げた「バブル世代」と言われる彼らの上司との仕事観のギャップです。言わばソフト面でのミスマッチです。
入社前にそれほど苦労をしてこなかった彼らの上司は『入社して3年はつべこべ言わずに黙って仕事をしろ!』と、彼ら新卒社員の苦悩を一蹴するような対応をしがちです。
そのような上司の態度に、彼らは言いようもない「絶望感」と「喪失感」に襲われると言います。
彼らがどれ程までして、入社までの時間を費やして来たのか?
バブル世代を代表する上司は、まずはそのプロセスに理解を示すことが必要です。
彼らが3年間で離職する背中を見て、「最近の若い奴らは・・・」と愚痴をこぼす前に
やるべきことはそれほど難しいことではありません。
やるべきことは??
まず、一つ目のミスマッチ、つまり仕事内容に対するミスマッチを軽減するには
配属前に面談を必ず実施する。そして、その面談で「仕事内容に対する部下への要望や期待」をしっかりと伝えること。また部下からも自身の要望や中長期の目標をヒアリングし、その目標に向けて、目の前の仕事とどう向き合って行くのかをしっかりと議論することが求められます。
その議論を通じて、部下が何を望んでこの会社を選んだのか?また仕事を通じて何を実現させたいのか?そのためにどのような仕事をやりたいのか?彼らの入社前の想いをしっかりと聴き、受け止めることで、二つ目のミスマッチも軽減されてゆくのです。
3年で離職をする彼らは入社までの苦労を考えると、その「決断」が決して本意ではない状況下で下されたことだと察しがつきます。
せめて上司の理解があったら・・・。
せめて上司から部下へ配属への期待や要望が伝わっていれば・・・。
ダイヤモンドの原石を手放すという不幸は、あなたのチームだけでなく、社にとっても大きな損失なのです。もちろん、離職者自身にとってもそれは同じことなのです。