- 真鍋 貴臣
- 香洋ファイナンシャル・プランニング事務所 代表者
- 香川県
- ファイナンシャルプランナー
対象:家計・ライフプラン
「就活にはリクルートスーツ」が常識になったのは。
確かに就活の場で冒険をする必要はないので無難な装いを選択すること自体は間違いではないのですが、私が面接するならば「リクルートスーツを着ている事」よりももっと別の部分を見ると思います。
■本質を隠したまま行われる日本の就活
私がサラリーマン生活と、その後の経営者生活を通して感じる事は「会社には合う・合わないがある」ということです。
しかし日本人、とりわけ私から下の世代は物事をスペックで判断しがちです。
スペック=定量判断なわけで、いわば机上での判断、企業診断でいえば決算書分析、家計診断でいえばキャッシュフロー分析などにあたり、就活で言えば給料や有給、年休、福利厚生などの「分かりやすい情報」を元に判断を行うのです。
更に、最近ではこれに付け加えて「ブラック企業診断」なども行っているようですが、いずれにせよ机上の分析であることに変わりはありません。
しかし、就活において本来見るべき部分は「その会社でやっていけそうかどうか」という点にこそあるはずなのですが、長引いていた不況が「就職で失敗したくない」という心理に働きかけることで、多くの人はそういった本来的な「やっていけるかどうか」という皮膚感覚よりも定量判断の方に重きを置くようになっていったのです。
ただ、商売の現場を見ず決算書分析だけしても企業の経営改善ができないように、皮膚感覚を無視した就職がうまく行く事も少ないでしょう。
■企業も「幸せな就職」を望んでいる
ここで会社側に視点を戻すと、会社としても長く働いてくれる人を採用したい事に変わりはありません。
しかし、面接に来る人の頭にある優先順位の第一位は「兎に角この会社から内定をもらう事」であり、リクルートスーツという「制服」を着て「マニュアルどおりの対応」をしてくるため、「どんな人物なのか、どんな性格で、どんな考え方を持っているのか」という判断をする事は容易ではありません。
となると、会社側も当然スペックやその場の雰囲気を基準に判断するしかないわけで、就活者も企業側も、本来意思疎通すべき部分をブラックボックスにしたまま「就職」という契約行為に至ってしまい、その結果「こんなはずじゃなかった」という不幸な事態に陥るのです。
現代の若者がこれまでになく「終身雇用」を望んでいるにも関わらず離職率が高い背景には、こうした「失敗回避行動が引き起こす認識のずれ」が存在するように思います。
■面接官が本当に知りたい事
もし本当に「幸せな就職」を望むならば、まずその会社(あるいは業種)でアルバイトをし、会社の「本質」を見ておく事を勧めます。
もしそれが叶わず、就職活動という枠組みの中で決断するならば、極力「あなた」という人間を相手に見せ、また相手からもどんな会社であるのか、どんな人間を求めているのかを聞き出すことを勧めます。
そして、その結果として就職できないことを恐れないという事です。
リクルートスーツで個を消すならば、少なくとも面接官の前では(失礼のない範囲で)自分の事を脚色せず話してみて欲しいと思います。
多分、それこそが面接官の本当に聞きたい事だと思います。