早わかり中国特許:第30回 中国特許民事訴訟の基礎 - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許:第30回 中国特許民事訴訟の基礎

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

2014年1月31日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2013年11月号掲載)

 第30回 中国特許民事訴訟の基礎

 

1.概要

 第29回に引き続き中国民事訴訟法について解説する。

 

2.差止め請求(侵害の停止)

(1)差し止め請求の根拠

 中国における民事訴訟の中心的役割を果たすのが差し止め請求(中国では即時停止という)である。

 差し止め請求に関しては専利法第11条及び第60条の規定が根拠となる。

 

専利法第11条

 発明特許権及び実用新型特許権が付与された後、本法に別段に定めがある場合を除き、いかなる機関又は組織又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。すなわち、生産経営の目的とするその特許製品を製造、使用、販売の申し出、販売、輸入、又はその特許方法を使用、その特許方法により直接得られた製品の使用、販売の申し出、販売、輸入はしてはならない。

 外観設計特許権が付与された後、いかなる機関又は組織又は個人も特許権者の許諾を得ずに、その特許を実施してはならない。すなわち、生産経営の目的とするその外観設計特許製品の製造、販売の申し出、販売、輸入はしてはならない。

 

専利法第60条

 特許権者の許諾を得ずにその特許を実施し、すなわち特許権を侵害し、紛争を引き起こした場合は、当事者が協議により解決する。協議を望まず又は協議が成立しないときは、特許権者又は利害関係者は人民法院に提訴することができ、また専利業務管理部門に処理を申請することができる。

 

 

(2)特許製品を組み込んだ製品

 発明特許または実用新型特許に係る侵害部品を組み込んだ最終製品を製造及び販売する行為も差し止めの対象となる(司法解釈[2009]第21号第12条第1項)。

 

司法解釈12条第1項

「発明または実用新型特許権を侵害する製品を部品とし、他の製品を製造した場合、人民法院は専利法第11条に規定される使用行為に該当すると認定しなければならない。当該他の製品を販売した場合、人民法院は専利法第11条に規定される販売行為に該当すると認定しなければならない。」

 

 すなわち第1侵害者が製造販売したイ号侵害製品を組み込んだロ号製品を、第2侵害者が製造、販売した場合、専利法第11条に規定する使用または販売行為に該当し、同様にロ号製品も差し止めの対象となる。

 また、第1侵害者及び第2侵害者の間で分業協力が存在する場合、共同侵害に該当する(司法解釈[2009]第21号第12条第3項)。

 

 

(3)特許方法により得られた一次製品

 特許方法により得られた一次製品を使用及び販売等する行為に対しても差止めを請求することができる。すなわち、特許方法を使用して得た一次製品については、人民法院は専利法第11条に規定される特許方法により「直接得られた製品」に該当すると認定しなければならない(司法解釈[2009]第21号第13条第1項)。

 

 また、当該、一次製品をさらに加工、処理して後続する製品を獲得する行為も、当該特許方法により「直接得られた製品」の使用に該当し、差止めを請求することができる(司法解釈[2009]第21号第13条第2項)。

 

(4)外観設計特許権の効力

 外観設計の場合、被疑侵害者が外観設計に係る特許製品を、生産経営の目的で、製造及び販売等をした場合は、これらの行為の差止めを求めて人民法院へ提訴することができる(専利法第60条)。外観設計の場合、「使用」行為が実施行為に含まれていないことに注意すべきである。この点、「使用」行為をも実施行為の一つとして規定する日本国意匠法とは相違する(日本国意匠法第2条第3項)。

 なお、第3次専利法改正により、外観設計特許に係る製品の「販売の申し出」も侵害行為の一態様として追加された(専利法第10条第2項)。なお、発明及び実用新型に基づく特許権については、「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」に適合させるべく法改正前から販売の申し出は侵害行為の一態様として規定されていた。

 外観設計侵害の発見場所は、展示会であることが多い。展示会で模造品を出展されていたとしても、当該模造品が展示会場内で販売されない限り従来は差止めることはできなかった。外観設計特許権の保護レベルを向上させるべく、専利法第10条第2項に「販売の申し出」を追加したものである。これにより、展示会での模造品の出品行為を差止めることが可能となった。

 外観設計特許権侵害に係る部品を組み込んだ最終製品を製造及び販売した際の特許権の効力については、司法解釈[2009]第21号第12条第2項にその解釈が示されている。

 

 司法解釈12条第2項

「外観設計特許権を侵害する製品を部品とし、他の製品を製造しかつ販売した場合、人民法院は専利法第11条に規定される販売行為に該当すると認定しなければならない。」

 

 すなわち、侵害品に係る部品を用いた最終製品を製造かつ販売した場合、部品に係る外観設計の「販売」行為に該当する。

 

(5)差し止め請求権の制限

 特許発明の技術的範囲に属し特許権侵害が認められた場合でも、社会公共の利益等に反する場合は、差し止め請求が人民法院により否定される。例えば、富士化水事件では[1]、脱硫装置に関する特許が中国企業(武漢晶源)により取得されていた。武漢晶源は、特許侵害であるとして、脱硫装置を導入した日本企業富士化水(第1被告)と中国企業である華陽電業(第2被告)とを同脱硫装置の使用差止めを求めて人民法院へ提訴した。

 

 人民法院は、第1被告である富士化水に対しては差止めを認めたが、2被告である中国企業の華陽電業に対しては差止めを認めなかった。華陽電業は既に2基の脱硫装置を運営しており、これを停止するとすれば、現地経済及び住民の生活に悪影響を及ぼすことになる。また、このような脱硫方法は国家の環境保護政策にも沿うものである。人民法院は、特許権者の権利と社会公益とのバランスを考慮した上で、一方の被告華陽電業に対する脱硫方法の継続使用を認めた。

 

 このように社会公共の利益に反する場合は差し止め請求が否定されるが、このような事例は必ずしも多くない。

 



→続きは、月刊ザ・ローヤーズ2013年11月号をご覧ください。





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[1] 武漢晶源環境工程有限公司訴日本富士化水工業株式会社等侵犯発明専利権紛争案、福建省高級人民法院2008年5月12日判決(2001)闽知初字第4 号、最高人民法院2009年12月21日判決(2008)民三終字第8号

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