特許法条約批准に伴う米国特許法規則改正のポイント(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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特許法条約批准に伴う米国特許法規則改正のポイント(第2回)

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特許法条約批准に伴う米国特許法規則改正のポイント(第2回)

2014年1月21日

河野特許事務所
弁理士 河野英仁

 

 

5.優先権の回復

(1)優先権主張が遅れた場合の取り扱い

 PLT第13条は優先権主張の訂正に関し以下の通り規定している。

 

PLT第 13 条

優先権主張の訂正又は追加;優先権の権利の回復

(1) [優先権主張の訂正又は追加] 規則に別段の定めがある場合を除き、締約国は、以下を条件として、出願(「後の出願」)に関して優先権主張の訂正又は追加を規定する。

(i) その趣意での申請が規則に定める要件に従って官庁に対しなされていること、

(ii) 申請が規則に定める期間内に提出されていること、及び、

(iii) 後の出願の出願日が、優先権が主張されている先の出願の出願日から起算される優先期間の満了日を超えていないこと。

(2)[遅れて出願された後の出願]第15条を勘案し締約国は、先の出願の優先権を主張している又は主張することができた出願(「後の出願」)の出願日が、優先期間の満了日より遅いが、規則に定める期間内である場合は、以下を条件として、官庁は、優先権の権利を回復することを規定する。

(i) その趣意の申請が規則に定める要件に従って官庁に対してなされること、

(ii) 申請が規則に定める期間内に提出されていること、

(iii) 優先期間を遵守できなかった理由を申請において明示すること、及び、

(iv) 後の出願が優先期間内に提出できなかったことが、状況に応じたしかるべき措置を講じたにもかかわらずに生したものであること、又は締約国の選択により、それが故意ではなかったことを官庁が認可すること。

(3)[先の出願の写しの提出不履行] 締約国は、第6条(5)に基づき要求される先の出願の写しが、第6条に従って規則に定められた期間内に官庁に提出されなかった場合、以下を条件として、官庁は、優先権の権利を回復することを規定する。

(i) その趣意での申請が規則に定める要件に従って官庁に対してなされていること、

(ii) 第6条(5)に基づく規則に定められた先の出願の写しの提出のための申請が期間内に提出されていること、

(iii) 提供されるべき写しの請求が、先の出願が提出された官庁に対して規則に定める期

間内になされていることを官庁が認可すること、及び、

(iv) 先の出願の写しを規則に定める期間内に提出すること。

(4)[料金] 締約国は、(1)から(3)に基づく申請に関して料金を支払うことを要求することができる。

(5)[証拠] 締約国は、(2)(iii)に規定された理由を裏付ける宣言書又は他の証拠を、官庁によって設定された期間内に官庁に提出することを要求することができる。

(6)[拒絶に際しての意見を述べる機会] (1)から(3)に基づく申請は、申請者が、拒絶されることに関して合理的な期間内に意見を述べるための機会を与えられることなしに、全て又は一部を拒絶されることはない。

 

 すなわち、PLT第13条(2)では優先権主張出願が12ヵ月の優先権主張期間内に行われなかったとしても故意ではない場合、優先権の回復を認める旨規定している。

 

 これを受けて、米国特許法規則1.55が改正された。規則1.55(c)では、後の出願が、優先権主張期限の満了後の出願日を有するが、当該期限満了日から2ヵ月以内である場合、国際特許出願に関するPCT規則26条の2.3(受理官庁による優先権の回復)の規定[1]、または、請願書の提出により、後の出願の優先権を復活することができる旨規定している。ただし、後の出願の提出の遅延が、故意によるものではないことが必要とされる。

 

 改正内容は以下のとおり。

改正前

改正後

規則1.55  外国優先権の主張

* * * * *

 (b) 一定の状況の下では,非仮出願の出願人は,発明者証及び特許の何れをも付与する国における1又は2以上の発明者証の出願を基礎として優先権主張をすることができる。35 U.S.C.第119条(d)に基づいて,そのような国における発明者証の出願を基礎として優先権を主張するためには,出願人は,(a)に記載されている当該権利についての主張を提出する時に,宣誓供述書又は宣言書を含めなければならない。宣誓供述書又は宣言書は,明示の陳述であって,当該人は,自らが知る限りにおいて,発明者証の出願をする時に,優先権主張の基礎を形成している特定のクレームの主題に関し,特許又は発明者証の何れを出願するかの選択権を有していたことを,調査の上,認めている旨のものを含まなければならない。

(c) そのような主張が本項の規定に従って受理される場合を除き,35 U.S.C.第119条(a)から(d)まで又は第365条(a)に基づく優先権主張であって,(a)に定められている期間内に提出されなかったものは,権利放棄されているものとみなされる。35 U.S.C.第119条(a)から(d)まで又は第365条(a)に基づく優先権主張が(a)によって定められている期間の後に提示された場合において,先の外国出願を,その出願番号,出願国(又は知的所有権当局)及び出願の年月日を明示することによって特定した主張が故意によらず遅延していたときは,その主張は受理されることがある。35 U.S.C.第119条(a)から(d)まで又は第365条(a)に基づく優先権主張の遅延に関する受理申請には,次のものが添付されなければならない。

(1) 先の外国出願についての,35 U.S.C.第119条(a)から(d)まで又は第365条(a)及び本条に基づく主張(ただし,先に提出されている場合を除く)

(2) §1.17(t)に記載されている割増手数料,及び

(3) (a)(1)に基づいて優先権主張が提出されるべき日からその主張が提出されるまでの遅延全体が故意によるものでなかった旨の陳述書。長官は,遅延が故意によるものでないか否かについて疑義があるときは,追加情報を要求することができる。

 

規則1.55  外国優先権の主張

* * * * *

    (b) 後の出願の提出時期

 本セクション(c)に規定された場合を除き、非仮出願は、外国出願が提出された後、12ヶ月以内(意匠出願の場合は6ヶ月以内)に提出しなければならず、または、非仮出願は、外国出願が提出された後、12ヶ月以内(意匠出願の場合は6ヶ月以内)に提出された出願の米国特許法第120条、121条または365(c)に基づく利益を主張しなければならない。当該12ヶ月の期限は、米国特許法第21(b)(及び規則1.7(a))及びPCT規則80.56ヵ月の期間は米国特許法第21(b)(規則1.7(a))に従う。

 

 

 

 

 

(c)遅延した後の出願の提出

 後の出願が、本章パラグラフ(b)に規定する期限の満了後の出願日を有するが、当該期限満了日から2ヵ月以内である場合、国際特許出願に関するPCT規則26条の2.3(受理官庁による優先権の回復)の規定、または、本パラグラフに従う請願書に基づき、後の出願の優先権は復活できる。ただし、本セクションパラグラフ(b)に規定する期限内の当該後の出願の提出の遅延が、故意によるものではないことが必要とされる。本パラグラフに基づき提出された後の出願における優先権の復活のための請願書は、以下を含まなければならない。

 (1)既に提出されている場合を除き、優先権が主張される外国特許出願を特定しており、出願番号、国(知的財産機関)、出願年月日を特定する出願データシート(規則1.76(b)(6))における米国特許法第119(a)(d)または(f)、または365(a)または(b)に基づく優先権の主張

 (2)規則1.17(m)に規定する請願費

 (3)本セクションパラグラフ(b)に規定する期限内に後の出願を提出することの遅延が、故意によるものでないことの陳述書

 

 

(2)時期に遅れた優先権主張の手続

 故意でないことを理由に優先日から14月以内に優先権主張を行う場合、以下の書類を含む請願書を提出しなければならない。

 

(i)既に提出されている場合を除き、優先権が主張される外国特許出願を特定しており、出願番号、国(知的財産機関)、出願年月日を特定する出願データシート(規則1.76(b)(6))における米国特許法第119条(a)~(d)または(f)、または365条(a)または(b)に基づく優先権の主張

(ii)規則1.17(m)に規定する請願費(1700ドル)

(iii)12ヵ月期限内に後の出願を提出することの遅延が、故意によるものでないことの陳述書

 

(3)施行時期

 2013年12月18日から施行される。なお、対象出願及び特許の出願日及び登録日に関わらず2013年12月18日以降から適用される。

 

(4)故意によるものではないことの基準

 一連の改正により故意でない場合の救済が認められることとなった。MPEP711.03(c)(II)(C)(1)では、「故意でない」とは認められない例を過去の判例に照らし以下のとおり記載している。

 

認められない例

(i)出願人が意図的に選択した手続の進め方から生じた遅延は,特許規則1.137(b)に規制を受ける範囲内の「故意でない」遅延ではない。

(ii)出願人が,(クレームが特許できない,庁指令における拒絶が克服できない,又は発明が継続手続を正当化するほどの十分な商業的価値がない等の理由により)出願が放棄されることを意図的に容認する場合は,当該出願放棄は,意図的に選択した手続の進め方とみなされ,その結果生じる遅延は,特許規則1.137(b)の規制を受ける範囲内の「故意でない」ものとみなされない[2]

(iii)意図的に進められる手続は,出願人が再検討した上で,取るべきであった手続に対して考えが変わった場合に,故意でないものにはならない[3]

(iv)出願人が意図的に選択した手続の進め方から生じる遅延は,次の理由の何れかでは,特許規則1.137(b)の規制を受ける範囲内の「故意でない」遅延とならない。

(A) 未決の庁指令において依拠された参照事項を克服してクレームが許可可能になると出願人がみなさない。

(B) 許可された又は許可可能なクレームが,特許取得費用に見合った十分な幅又は範囲を有すると出願人がみなさない。

(C) 特許に特許取得費用に見合った十分な価値があると出願人がみなさない。

(D) 特許が特許取得して得られる利益を維持するほど十分な価値を有するものであると出願人がみなさない。又は

(E) 出願人が,最終的に特許取得することに依然として関心を有しながらも,特許手数料及び手続手数料を延納しようとしているにすぎない。

(v)出願放棄の後に生じる状況の変化は,出願放棄を容認することを過去に意図的に決定したことから生じた遅延を,「故意でない」ものにしない。

 

6.要約書の文字数制限

 規則1.72では要約書のワード数は150を超えてはならないと規定されていた。今回の法改正により「好ましくは150ワードを超えてはならない」と規則1.72が改正された。もちろん極端にワード数が多くなることは避けるべきではあるが、今後は特段ワード数を気にすることなく要約書を作成すればよいこととなった。改正内容は以下のとおりである。

 

改正前

改正後

規則1.72発明の名称及び要約

(b) 明細書における技術開示についての簡単な要約は,独立した用紙上で「要約」又は「開示の要約」の見出しを付して始まらなければならず,その個所はクレームの後が望ましい。要約を記載した用紙は,出願の他の部分又は他の資料を含むことができない。35 U.S.C.第111条に基づいてされる出願における要約は,その長さが150語を超えることができない。要約の目的は一般に,合衆国特許商標庁及び公衆が一読することによって,技術開示の内容及び要旨を,迅速に決定することができるようにすることにある。

規則1.72発明の名称及び要約

(b) 明細書における技術開示についての簡単な要約は,独立した用紙上で「要約」又は「開示の要約」の見出しを付して始まらなければならず,その個所はクレームの後が望ましい。要約は開示範囲内で詳細に記載しなければならず、好ましくは150ワード超えてはならない。要約の目的は一般に,合衆国特許商標庁及び公衆が一読することによって,技術開示の内容及び要旨を,迅速に決定することができるようにすることにある。

 

 本規則は2013年12月18日施行される。ただし、2013年12月18日以降の出願のみならず、2013年12月18日以前の出願日を有する出願にも同様に適用される。

 

以上

 

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[1] PCT規則26の2.3 受理官庁による優先権の回復

(a) 国際出願の国際出願日が、当該優先期間の満了の日の後であるが、当該満了の日から2箇月の期間内である場合には、受理官庁は、出願人の請求により、かつ、(b)から(g)までの規定に従うことを条件として、当該受理官庁が採用する基準(「回復のための基準」)が満たされていること、すなわち、当該優先期間内に国際出願が提出されなかつたことが、次のいずれかの場合によると認めた場合には、優先権を回復する。

(i) 状況により必要とされる相当な注意を払つたにもかかわらず生じた場合

(ii) 故意ではない場合

 各受理官庁は、これらの基準のうち少なくとも一を適用するものとし、また、これらの両方を適用することができる。

(b) (a)の規定に基づく請求は、次のとおりとする。

(i) (e)に規定する期間内に当該受理官庁に提出すること。

(ii) 当該優先期間内に国際出願を提出されなかつたことの理由を記載すること。

(iii) 望ましくは(f)の規定に基づき要求される申立てその他の証拠が添付されているものとすること。

(c) 先の国際出願についての優先権の主張が当該国際出願に記載されていない場合には、当該出願人は、(e)に規定する期間内に、26の2.1(a)の規定に基づく優先権の主張を追加する書面を提出する。

(d)(a)に規定する請求の提出は、(e)に規定する期間内に回復請求手数料の受理官庁への支払を条件とすることができる。当該手数料の額は、受理官庁が定める。当該手数料の支払期間は、受理官庁の選択により、(e)に規定する当該期間の満了の後最長2箇月の期間延長することができる。

(e) (b)(i)、(c)及び(d)に規定する期間は優先期間の満了の日から2箇月とする。ただし、出願人が、第21条(2)(b)の規定に基づき早期の国際公開を請求する場合において、国際公開の技術的な準備が完了した後に(a)の規定に基づく請求若しくは(c)に規定する書面で提出されたもの又は(d)に規定する手数料で支払われたものは、当該期間内に提出されなかった又は支払われなかつたものとみなす。

(f) 受理官庁は、事情に応じて相当の期間内に(b)(iii)に規定する理由の陳述を裏付ける申立てその他の証拠を提出することを要求することができる。出願人は、受理官庁に提出した申立てその他の証拠を国際事務局に提出することができる。この場合には、当該写しを一件書類に含める。

(g) 受理官庁は、(a)の規定に基づく請求の全部又は一部に関し、拒否しようとすることについて事情に応じて相当の期間内に意見を述べる機会を出願人に与えることなく、これを拒否しない。受理官庁による拒否しようとする書面は、(f)の規定に基づく申立てその他の証拠を提出する求めとともに出願人に送付できる。

(h) 受理官庁は、速やかに次のことを行う。

(i) 国際事務局に(a)の規定に基づく請求の受理を通知すること。

(ii) 当該請求に基づく決定をすること。

(iii) 出願人及び国際事務局に当該決定及び当該決定が基づいた回復のための基準を通知すること。

(i) 各受理官庁は、国際事務局に当該受理官庁が採用する回復のための基準及びこれに関する後の変更を通知するものとする。国際事務局は、当該情報を速やかに公報に掲載する。(略)

[2] In re Application of G, 11 USPQ2d 1378, 1380 (Comm'r Pat. 1989)

[3] In re Maldague, 10 USPQ2d 1477, 1478 (Comm’r Pat. 1988)

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