中国特許判例紹介(31) 特許が無効とされた場合の遡及効発生時期(第2回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国特許判例紹介(31) 特許が無効とされた場合の遡及効発生時期(第2回)

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特許が無効とされた場合の遡及効発生時期

~専利法第47条における遡及効発生時期が争われた事例~

中国特許判例紹介(31)(第2回)

2014年2月28日

執筆者 河野特許事務所 弁理士 河野 英仁

 

陝西東明農業科技有限公司

                   再審申請人(一審被告、二審上訴人)

v.

陝西秦豊農機(集团)有限公司

                           再審被申請人(一審原告、二審被上訴人)

 

 

3.最高人民法院での争点

争点1:専利法第47条第2項における「無効とされる前」はどの時点か

 本案の経緯をまとめると以下のとおりである。

 
 執行が、特許が無効とされる前であれば専利法第47条第2項の規定に基づき、遡及効を有さない。専利法第47条第2項における「無効とされる前」が、以下のどの時点に該当するのか否かが問題となった。

 

決定日(2011年3月15日)

発送日(2011年3月25日)

到達日(2011年4月3日)。

 

 

4.最高人民法院の判断

争点:専利法第47条第2項における「無効とされる前」は決定日前である

 最高人民法院は専利法第47条第2項の立法趣旨は、公平と秩序の協調及び衡平の実現にあり、かかる観点から分析を行った。特許無効宣告請求の審査決定は、特許権が無効宣告を受けた後に未だ執行或いは履行を終えていない特許侵害判決、調解書、特許侵害紛争処理決定、特許実施許諾契約、特許権譲渡契約等に対し遡及力を付与し、特許侵害者、特許の実施許諾を受けた者及び譲渡を受けた者の正当な利益を補償し、特許権者が無効特許を利用して不当な利益を得ることを防止するものである。

 

 その一方で、既に執行または履行を終えた特許侵害判決、調解書、特許侵害紛争処理決定、特許実施許諾契約、特許権譲渡契約に対し、特許無効宣告審査請求決定に遡及力を持たせないことで、既に形成され、かつ、安定化した社会秩序を維持することとしている。

 

 無効宣告された特許権は始めから存在しなかったものとみなされるため、特許権を基礎とする特許侵害判決、調解書、特許侵権紛争処理決定、特許実施許可契約、特許権譲渡契約等、確定した利益は本来特許権者が獲得すべきではない。そのため専利法第47条第2項の規定は、特許無効宣告請求審査決定が遡及力を有する事を原則とし、遡及力を有しないことを例外としている。

 

 最高人民法院は以上の立法趣旨に照らし、無効宣告の時間点を確定する際に、以下の要素を考慮しなければならないと判示した。

 

1:時間点は対世性を有するべきであり、また社会公衆が公開により知ることができ、かつ、明確に知ることができるものでなければならない。

 

2:時間点は確定性を有するべきであり、また一つの確定の時点であり、原則として当事者の具体的状況またはその他人の要素で容易に変動が発生しないことが必要とされる。

 

3:時間点は、比較的早い法律意義を有し、できるだけ無効宣告請求審査決定の遡及力が発揮する機会を増加できるものであることが必要とされる。

 

本案中、第16225号決定は、三つの法律意義の時間点を有する:

決定日(2011年3月15日);

発送日(2011年3月25日);

到達日(2011年4月3日)。

 

 決定日(2011年3月15日)は無効宣告請求決定がなされた時間である。決定日は無効宣告請求審査決定書において明確に記載されており、社会公衆は容易に知ることができる。無効宣告請求決定がなされれば、復審委員会に対し拘束力を有し、自由に取り消しまたは変更を行うことができない。

 

 発送日(3月25日)は復審委員会が当事者に無効宣告請求審査決定を発送した時間であり、これは送達過程の開始時間である。該時間は無効宣告請求審査決定書上にまた明確な記載がある。

 

 到達日(2011年4月3日)は当事者が無効宣告請求審査決定を受け取った時間であり、行政訴訟を提起できる期間の起算点となるものである。到達日は無効宣告請求審査決定書上に記載する術はなく、送達当事者の具体的状況に基づいてだけ、調べて明らかにすることができる。

 

 無効宣告請求審査決定がなされた後では、発送日または到達日であろうと、共に人為的要素を起因として変動する可能性があり、時には大いに決定日が遅延することになる。発送日または到達日を特許権が無効と宣告された時間点とすれば、決定がなされた日から、発送日または到達日までのこの時間間隔は、当事者に利用される可能性があり、悪意をもって執行または履行を急がせまたは遅延させ、無効宣告請求審査決定の遡及力に影響を与え、自己の遡及力に有利な結果を得ることができる。

 

 最高人民法院は以上のことから、無効宣告請求審査決定の発送日または到達日を特許権無効宣告の時間点とすれば、共に不合理な結果を招くこととなると判断した。反対に、無効宣告請求審査決定の決定日を、特許権が無効宣告された時間点として確定すれば、対世性及び確定性を有するだけではなく、一定の程度において、無効宣告請求審査決定が遡及力を発揮する機会を増加でき、公正な結果を実現することができる。

 

 以上の理由から、専利法第47条第2項における特許権無効宣告の時間点は、無効宣告審査決定の決定日を基準とすべきと判示した。

 

 本案中、本案特許権無効を宣告した第16225号決定の決定日は2011年3月15日であり、該決定は行政訴訟程序中にて維持され、かつ確定により法律効力を生じている。原一、二審判決の執行完了日は2011年3月16日である。前述した理由に基づき、本案特許権が宣告無効を宣告された時間は2011年3月15日となる。

 

 最高人民法院は、特許侵害判決が執行完了していないため、本案において専利法第47条第2項に規定する遡及力を有しない状態には属さないと判断し、一、二審判決の執行に基づき獲得した利益を被告に返還するよう命じた。

 

 

5.結論

 最高人民法院は、特許が無効とされたことから一審及び二審判決を取り消す判決をなした。

 

 

6.コメント

本事件では専利法第47条第2項における執行と特許無効に伴う遡及効発生時期との関係が明確化された。特許権は常に無効の危険性に晒されているため、判決の執行はできるだけ早く行うことが好ましいといえる。

 

 

以上

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