日経記事;『武田、グローバル戦略加速 外国人社長、英グラクソから』に関する考察 - 海外展開 - 専門家プロファイル

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日経記事;『武田、グローバル戦略加速 外国人社長、英グラクソから』に関する考察

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皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

11月30日付の日経新聞に、『武田、グローバル戦略加速 外国人社長、英グラクソから』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『武田薬品工業が製薬世界大手の英グラクソスミスクライン(GSK)の幹部を次期社長に迎えるのは経営のグローバル化を進めなければ激戦市場を勝ち抜けないとの強い危機感からだ。

武田は売上高規模で国内最大手だが、世界では15位前後に過ぎない。GSKで成長部門のワクチン事業を統括してきたクリストフ・ウェバー氏を経営トップに据えて海外の研究開発や新興国市場開拓を加速する考えだ。

武田の長谷川閑史社長は最近まで「武田薬品を経営できるのは日本人だ」と語ってきた。だが、先行きの収益環境の厳しさを踏まえ、外国人トップを迎え入れる大胆な決断をした。

武田は連結売上高が年1兆6000億円程度。世界最大手の米ファイザーは5兆円を超える規模だ。武田は糖尿病治療薬「アクトス」の特許切れなどが響き、13年3月期には営業利益が大幅に落ち込んだ。収益の立て直しのために、がんや糖尿病の新薬の開発を進めているが、当面は厳しい収益環境が続く。

長谷川社長はこれまで財務や研究開発など主要部門のトップに海外から人材を招いてきた。社長も海外から招くことで経営のグローバル化を一段と進めて世界で戦える経営体制を整える。5割程度の海外売上高比率の向上も狙っている。

ウェバー氏はGSKで成長部門のワクチン事業を統括してきた。武田は国内外でワクチン事業を展開する計画を進めており、ウェバー氏の手腕がすぐに生かせる。

今後、収益の拡大が見込める新興国を攻めるにはワクチン製品が不可欠。11年に買収したスイスの後発薬大手ナイコメッド社の販路を生かし切れておらず、武田の新興国戦略は進んでいなかった。

長谷川社長は来年6月下旬に開催する株主総会と取締役会で会長となる予定だが、CEO職は当面兼務する。

社長に就任するウェバー氏とともに社内の求心力を保ちながら、グローバル化を急ぐ。』

新社長のウェバー氏については、以下のように書かれています。

『武田薬品工業は30日、英グラクソスミスクライン(GSK)でワクチン事業を統括してきたクリストフ・ウェバー氏を来年6月に社長兼最高執行責任者(COO)に迎える人事を発表した。

長谷川閑史社長は同6月に会長兼最高経営責任者(CEO)に就く。医薬品国内最大手の同社は初の外国人社長を起用して経営のグローバル化を進め、欧米の製薬大手に対抗する。

ウェバー氏は来年4月までに入社しCOOに就く。長谷川氏の後任CEO候補としている。日本の主要製造業で外国人トップを同業から招くのは異例。武田は欧米製薬会社を相次ぎ買収。海外売上比率は5割を超える。長谷川氏は経済同友会代表幹事を務めている。

クリストフ・ウェバー氏 1992年リヨン第1大学薬学・薬物動態学博士号取得。93年スミスクライン・ビーチャム入社。03年グラクソスミスクライン(GSK)フランス会長。11年ワクチン社社長。フランス出身。47歳』


今回の武田薬品の新人事は、同社が海外市場開拓をより本格的に行う姿勢を鮮明にしたことになります。

記事によると、武田薬品の海外売上比率は、2012年度で以下のようになっています。

・日本;47%
・北米;23%
・欧州;15%
・新興国;15%

武田薬品は、国内最大手の薬品企業ですが、世界市場では15位の売上規模になっています。武田薬品が世界市場で勝ち組になるためには、海外市場での売上拡大が必須になります。

国内は、人口減少で薬品に対する潜在需要は減っていきますので、海外売上比率の拡大なしに事業拡大はありえません。

薬品だけでなく、今まで国内向け事業売上が大きな比率を占めている企業が、事業拡大を目指すには海外市場開拓が必要になります。

特に、人口増加が続いている東南アジアを中心とする新興国市場の開拓が最重要になります。薬品事業の場合、この新興国市場には、すでに欧米の大手企業が積極的に進出を行っていますので、これから当該地域で事業拡大する国内企業は、後発組になります。

国内薬品企業の中で、武田薬品は最も積極的に海外市場開拓を模索してきました。その典型例となるのが、武田薬品が2011年に行ったスイスの製薬大手ナイコメッドを96億ユーロ(約1兆1000億円)で買収したことです。

その後も、同社は積極的に海外企業の買収を進めました。これらの買収の背景には、武田薬品の自力で収益を支える画期的な医薬品を開発するのが、非常に難しくなったことと、海外市場開拓にあります。

記事にありますように、武田薬品は糖尿病治療薬「アクトス」の特許切れなどが響き20、13年3月期には営業利益が大幅に落ち込みました。収益の立て直しのために、がんや糖尿病の新薬の開発を進めているが、当面は厳しい収益環境が続くとされています。

また、薬品の研究開発をより効率的に行うために、研究開発のヘッドに外国の専門家を積極的に雇っています。

今回のウェーバー氏をCEOとして迎えることは、海外市場開拓を最重要課題として位置付け、一気に新薬開発を加速させる狙いがあります。

上記しましたように、海外市場開拓のポイントの一つになるのが、新興国市場への対応です。新興国市場で最も需要が高い薬品の一つが、ワクチンです。

ワクチンは、季節性インフルエンザワクチンに加え、時々発生する新型インフルエンザへの対応ワクチンの需要が急増することがたびたびあります。

インフルエンザウイルスの需要は、どの国でも高くなっていますが、特に新興国ではより一層高く、また国民の生命を守るためにも必要になっています。

日本では、1990年代に予防接種の副反応をめぐる裁判が数多く行われ、国の責任を認める判決が多く出されました。

その結果、国内薬品企業の多くはワクチン事業からの撤退しました。2000年代になって国内薬品企業のワクチン関連の年間売上高は、各社100~200億円となりました。他方、海外薬品企業は、4000~5000億円くらいの売上をもっていました。

国内では、2007年に厚生労働省から「ワクチン産業ビジョン」が発表されました。増大する医療費を抑制するため、予防医学の重要性を認識し、ワクチンの積極的活用を方針として出しました。

2009年に発生した新型インフルエンザの大流行で国内でのワクチン不足が問題になりました。これ以降、国内でもワクチン需要が高まりました。

外国薬品企業も、積極的に国内ワクチン市場に参入しています。国内ワクチン市場では、国内勢と海外勢との間で激しい競争が起こっています。

しかし、この国内市場は、上記しましたように縮小状態にあります。

武田薬品が手ナイコメッドを買収した目的の一つが、当該企業の既存販路を活用した海外市場開拓にあります。記事によると、海外市場開拓は期待した通りの成果を出していないようです。

武田薬品は、ウェーバー氏のCEO起用で、ナイコメッドなどの販路を活用して、新興国市場でのワクチン事業拡大を実現しようとしています。

当該地域でのワクチン需要の大きさと人口増加を考えれば、合理的な決断になります。武田薬品が、国内薬品業界の先陣として、より積極的に海外市場開拓を行うことを期待します。

今後、中小企業を含めた国内企業は、海外市場開拓なしに事業拡大することは難しく、武田薬品のやり方は事例の一つになります。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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