労働関係調整法に基づく労働委員会による労働争議の解決手続 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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労働関係調整法に基づく労働委員会による労働争議の解決手続

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労働関係調整法に基づく労働委員会による労働争議の解決手続

 

 労働関係調整法は、労働関係の労使の当事者が、直接の協議・団体交渉によって、労働条件その他労働関係に関する事項を定め、又は労働関係に関する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、労働関係の当事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない(労働関係調整法4条)。

労働委員会の権限を定めた労働組合法第20条は「労働委員会は、(中略) 不当労働行為事件の審査等、労働争議のあっせん、調停及び仲裁をする権限を有する」と規定し、労働関係調整法に基づいて、労働委員会は労働争議のあっせん・調停・仲裁を行う(労働関係調整法17条、29条など)。

なお、実務上、不当労働行為を審査する労働委員会においては、同じ労働委員があっせん・調停を担当することが通例である。

 労働関係調整法において「労働争議」とは、「労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生する虞がある状態」をいう(労働関係調整法6条)。

「争議行為」とは、「同盟罷業(ストライキ)、怠業、作業所閉鎖(ピケッティング、ロックアウトなど)その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するもの」をいう(労働関係調整法7条)。

 中央労働委員会・都道府県労働委員会に、労働争議の調停・仲裁に参与させるため、それぞれ特別調整委員を置くことができる。特別調整委員は、中央労働委員会にあっては厚生労働大臣が任命し、都道府県労働委員会にあっては都道府県知事が任命する。特別調整委員は、使用者を代表する者、労働者を代表する者及び公益を代表する者とする(労働関係調整法8条の2)。

 争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない(労働関係調整法9条。届出の方法につき労働関係調整法施行令1条の11、2条)。

 労働争議のあっせん・調停・仲裁に関する労働委員会の権限は、その労働争議が一の都道府県の区域内のみに係るものであるときは当該都道府県労働委員会が、その労働争議が二以上の都道府県にわたるものであるとき、中央労働委員会が全国的に重要な問題に係るものであると認めたものであるとき、又は緊急調整の決定に係るものであるときは、中央労働委員会が行う。中央労働委員会の権限に属する特定の事件の処理につき、中央労働委員会が必要があると認めて関係都道府県労働委員会のうちその一を指定したときは、当該事件の処理は、その都道府県労働委員会が行う(労働関係調整法施行令2条の2)。

 

 労働関係調整法第12条 の規定による斡旋員の指名、労働関係調整法第18条第1号 から第3号 までの規定による調停、労働関係調整法第26条第2項 の規定による調停案の解釈・履行に関する見解の明示又は労働関係調整法第30条 の規定による仲裁の申請は、関係当事者(当事者が法人、法人でない使用者又は労働者の組合、争議団等の団体であるときは、その代表者をいう。)又はその委任を受けた者が、事件の要点を記載し、書面でこれをなさなければならない(労働関係調整法施行令3条)。

 

特別調整委員、斡旋員などがその職務に関して知ることができた秘密は、漏らしてはならない(労働関係調整法施行令1条の8、6条など)。

 

◎労働争議のあっせん手続

 労働委員会は、斡旋員候補者を委嘱し、その名簿を作製して置かなければならない(労働関係調整法10条)。 斡旋員候補者は、学識経験を有する者で、労働争議の解決につき援助を与えることができる者でなければならないが、その労働委員会の管轄区域内に住んでいる者でなくても差し支えない(労働関係調整法11条)。

 労働争議が発生したときは、労働委員会の会長は、関係当事者の双方・-一方の申請又は職権に基いて、斡旋員名簿に記されている者の中から、斡旋員を指名しなければならない。但し、労働委員会の同意を得れば、斡旋員名簿に記されていない者を臨時の斡旋員に委嘱することもできる(労働関係調整法12条1項)。

労働委員会の会長は、斡旋員候補者の氏名・閲歴等を適宜の方法により、労働関係の当事者に、周知させなければならない(労働関係調整法施行令4条)。

 斡旋員は、関係当事者間を斡旋し、双方の主張の要点を確め、事件が解決されるように努めなければならない(労働関係調整法13条)。

 斡旋員は、自分の手では事件が解決される見込がないときは、その事件から手を引き、事件の要点を労働委員会に報告しなければならない(労働関係調整法14条)。

 労働委員会は、斡旋員候補者が、辞任を申し出たとき、又は斡旋員候補者として不適当であると認められるに至つたときは、これを解任することができる(労働関係調整法施行令5条)。

なお、労働争議の当事者が、双方の合意(団体交渉を含む)又は労働協約の定めにより、別の斡旋方法によって、事件の解決を図ることを妨げるものではない(労働関係調整法15条)。

 

◎労働争議の調停手続

労働委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合に、労働争議の調停を行う(労働関係調整法18条)。

  関係当事者の双方から、労働委員会に対して、調停の申請がなされたとき。

  関係当事者の双方又は一方から、労働協約の定めに基づいて、労働委員会に対して調停の申請がなされたとき。

  公益事業に関する事件につき、関係当事者の一方から、労働委員会に対して、調停の申請がなされたとき。

  公益事業に関する事件につき、労働委員会が職権に基づいて、調停を行う必要があると決議したとき。

  公益事業に関する事件、又はその事件が大規模なため・特別の性質の事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件につき、厚生労働大臣又は都道府県知事から、労働委員会に対して、調停の請求がなされたとき。

 

 労働委員会による労働争議の調停は、使用者を代表する調停委員、労働者を代表する調停委員及び公益を代表する調停委員から成る調停委員会を設け、これによって行う(労働関係調整法19条、21条1項など)。

 調停委員会の委員長は、会務を総理し、調停委員会を代表する(労働関係調整法施行令9条)。

 調停委員会は、調停期日を定めて、関係当事者の出頭を求め、その意見を徴さなければならない(労働関係調整法24条)。

調停をなす場合には、調停委員会は、関係当事者及び参考人以外の者の出席を禁止することができる(労働関係調整法25条)。

 調停委員会は、調停案を作成して、これを関係当事者に示し、その受諾を勧告するとともに、その調停案は理由を附してこれを公表することができる。この場合必要があるときは、新聞又はラジオによる協力を請求することができる(労働関係調整法26条1項)。

 調停委員会は、労働関係調整法第18条第1号 から第3号 までの規定による調停の申請、同条第4号による決議・同条第5号による調停の請求がなされた日から、15日以内に調停案を作成し、10日以内の期限を附して、関係当事者に、その受諾を勧告するものとする(労働関係調整法施行令10条)。

調停案が関係当事者の双方により受諾された後、その調停案の解釈・履行について意見の不一致が生じたときは、関係当事者は、その調停案を提示した調停委員会にその解釈・履行に関する見解を明らかにすることを申請しなければならない(労働関係調整法26条2項)。 調停委員会は、申請のあった日から15日以内に、関係当事者に対して、申請のあった事項について解釈・履行に関する見解を示さなければならない(労働関係調整法26条3項)。この解釈・履行に関する見解が示されるまでは、関係当事者は、当該調停案の解釈・履行に関して争議行為をなすことができない。但し、前項の期間が経過したときは、この限りでない(労働関係調整法26条4項)。

 

◎労働争議の仲裁

 労働委員会は、次のいずれかに該当する場合に、労働争議の仲裁を行う(労働関係調整法30条)。

・ 関係当事者の双方から、労働委員会に対して、仲裁の申請がなされたとき。

・ 労働協約に、労働委員会による仲裁の申請をなさなければならない旨の定がある場合に、その定めに基いて、関係当事者の双方又は一方から、労働委員会に対して、仲裁の申請がなされたとき。

 労働委員会による労働争議の仲裁は、3人以上の奇数の仲裁委員をもって組織される仲裁委員会を設け、これによって行う(労働関係調整法31条)。

 仲裁委員は、労働委員会の公益委員又は特別調整委員のうちから、関係当事者が合意により選定した者につき、労働委員会の会長が指名する。ただし、関係当事者の合意による選定がされなかつたときは、労働委員会の会長が、関係当事者の意見を聴いて、労働委員会の公益を代表する委員(中央労働委員会にあっては、一般企業担当公益委員)又は特別調整委員の中から指名する(労働関係調整法31条の2)。

 仲裁委員会の委員長は、会務を総理し、仲裁委員会を代表する(労働関係調整法施行令10条の2)。

仲裁をなす場合には、仲裁委員会は、関係当事者及び参考人以外の者の出席を禁止することができる(労働関係調整法32条)。

 仲裁裁定は、書面に作成してこれを行う。その書面には効力発生の期日も記さなければならない(労働関係調整法33条)。仲裁裁定は、労働協約と同一の効力を有する(労働関係調整法34条)。

 

◎労働争議の緊急調整(労働関係調整法35条の2)という制度もあるが、現在では、ほとんど使われていない。

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