ビジネス法務2013年9月号、労働法 - 労働問題・仕事の法律全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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ビジネス法務2013年9月号、労働法

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ビジネス法務2013年9月号、労働法

「紛争を未然に防ぐ就業規則と労働契約」と題して特集が組まれている。

倉重「就業規則・労働契約の整備で労務トラブルは激減する」

統計を引用して、近時の労働紛争として、以下の論点を指摘している。

・労働審判の増加傾向、

・個別労働相談件数の増加、

・残業代請求の増加、

・長時間や過重な労働による健康障害の防止、

・セクハラ、妊娠出産を理由とする不利益取扱い(マタニティ・ハラスメント)

岡芹「名ばかり管理職による残業代支払請求への対応」

管理職の要件は、以下の3要件に整理できる。

使用者の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を有すること

自己の出退勤を含め労働時間についての裁量権を有すること

一般従業員に比して、管理職の地位と権限にふさわしい賃金上の待遇を受けていること

日本マクドナルド事件(東京地判平成20・1・28)は、上記①のうち、店舗のアルバイトの採用・昇格の決定権限、店舗内の従業員の人事考課の一次評価をする権限があるとしても、使用者の経営決定に参画しているとはいえないこと、②労働時間の裁量性がなく、長時間労働の実態があること、③賃金面でも、管理監督者ではない者の賃金額を下回っていること等を指摘して、管理職といえないと判示している。

このうち、管理職ではない従業員が長時間残業すると残業代がかさみ、残業代がつかない管理職の賃金よりも高額となる逆転現象が以前から指摘されていた。これは、むしろ、一般従業員の無駄な残業を抑制すべきであろう。残業代を支払いたくないので「役付き」(管理職)に昇格させるのでは、問題解決にならない。

小山博章「休職制度はどう設計する? メンタルヘルス不調を想定した就業規則」

私傷病休職について、就業規則に「私傷病を理由とする欠勤が3か月連続した場合、または、これと同視できる欠勤状況のとき」という定めとすべきという提案をしている。

しかし、私は、「私傷病を理由とする欠勤が連続して、または、合計して3か月以上の場合」と定めるべきと考える。「同視できる」という抽象的な定めでは、評価の余地を残してしまうからである。

なお、昔の就業規則では、「私傷病休職の勉強には、賃金の60%を支払う」という定めをしている事例も散見された。おそらく休業手当と混同したものであろうが、誤解である。雇用保険に加入している限り、帰責事由が労働者にある私傷病の場合には、無給であっても構わない。雇用保険から傷病手当として平均賃金の60%が、労働者福祉事業機構から20%が、合計80%が支給されるからである。

私傷病休職の休職期間満了の場合には「自然退職」ではなく、「当然退職」とすべきであろう。ただし、「当然退職」のほうが、労働者にとって若干厳しい印象を与えるが。

小鍛冶「高齢者継続雇用にかかわる就業規則・労使協定の見直し」

定年延長により、能力不足を理由とする雇止め・解雇はできないというのは誤解であり、年齢以外の理由により、更新拒絶・解雇は可能である。ただし、雇止め規制(労働契約法19条)、解雇権濫用規制(労働契約法16条)により、当該解雇などが無効とされるおそれはある。

高年齢者雇用安定法による継続雇用後の労働条件をあらかじめ詳細に定めておくと、選抜基準をみたさない定年退職した労働者についても、継続雇用後の労働契約を特定できてしまうので、定めておかないほうが良いとの論者の見解の当否については、やや違和感を覚える。

むしろ、

・合理性や具体性のある選抜基準を定める、

・選抜基準をみたさない証拠をそろえる、

・人事考課を日頃からきちんと行う

などの方が正攻法ではなかろうか。

また、有期契約であることを理由とする不利益取扱いの禁止(労働契約法20条)にも留意すべきである。

石井「無期転換は正社員化ではない! 有期労働契約を無期可する際の注意点」

有期契約の従業員が無期契約に転換しても、それ以外の労働条件は従前と同一である(労働契約法18条)から、無期有期契約の従業員が無期契約に転換しても、それ以外の労働条件は従前と同一である(労働契約法18条)から、無期転換後の労働条件の制度設計について論じており、参考になる。

 

 

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