報告することの大切さは多くの場面でいわれ、それゆえに報・連・相などをテーマにした各種研修が実施されていたり、多くの報告書類や会議があったりします。確かに報告しなければならないことはたくさんあります。勤怠、出張、営業状況、作業状況、顧客動向、予算実績、部門業績など多岐に渡り、報告のタイミングも日報、週報、月報、四半期、半期、年間、その他日常業務の中でも折りに触れて行われます。
組織規模の増大や会社の成長とともに、無駄な報告書や会議が増えてきたり、報告そのものが形骸化してきたりということも言われます。報告にまつわることに多くの時間を費やしているにもかかわらず、あまりその情報を活かした組織運営になっていないなど、報告のやり方や扱い方には多くの問題点が挙げられます。それはそれで大きな問題ですが、今回はそことはちょっと違う視点で、「社員に向けた報告」という話です。
・・・というのは、前に挙げた様々な報告については、ほぼすべてが上司や会社に向けたもので、逆に「社員への報告」というのは圧倒的に少ないか、もしくはほとんど行われておらず、会社で行われる報告が、あまりにも一方通行ではないかということです。
組織の管理者、決裁権者が適切な判断をするためには現場の状況把握が重要で、それには部下からの適切な報告が欠かせません。そのための仕組みや決まりは様々作られていると思いますが、その逆方向で、上司や会社から社員に「報告」するということを、きちんとした仕組み、決まりとして行っていることは非常に少ないように思います。会社から個別の事柄についての指示はあるでしょうが、部下に何をどうやって知らせるかということについて、たぶん大部分が上司の個別判断に委ねられているのではないでしょうか。
社員に向けた「報告」というのは、伝達事項や周知事項という場合もあるでしょうし、現状認識の共有、情報共有ともいえますが、現場からよく聞くお話で、「○○部はちゃんとやるけど、××部はきちんと伝わらない」「△△部長はいいけど、●●部長はあまりきちんとやらない」など、所属部門や管理者の姿勢、能力による取り組み差があります。会社の所管部門から紙一枚の書面が出され、管理者はそれを配るだけなんてことも珍しいことではありません。
管理者は皆さん忙しいでしょうし、部下や社員には話せない情報もあるでしょうが、社員からの報告を強く求めるわりには、社員に対して伝えることをサボっている傾向があるのではないでしょうか。また、会社や上司に対する報告書は仕組みとして定められていても、その逆が仕組みとなっている企業は非常に少ないのではないでしょうか。
もしも社員間の不満や他部門批判が強い、もしくは社員の視野が狭い、全体の事を知らない、興味を持たないなどということがあるならば、「社員への報告」というところに問題があるかもしれません。そんな状況があるならば、「社員への報告」の書式や内容を定め、頻度や実施方法などを仕組みとして決めていく必要があるのかもしれません。
ちょっと見過ごしがちですが、意外に大事なことではないかと思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
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