早わかり中国特許:第28回 中国特許民事訴訟の基礎(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許:第28回 中国特許民事訴訟の基礎(第1回)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

2013年10月29日

執筆者 河野特許事務所

弁理士 河野英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2013年9月号掲載)

 第28回 中国特許民事訴訟の基礎(第1回)

 

1.概要

 第27回に引き続き中国民事訴訟法について解説する。

 
2.移送

(1)管轄違いに基づく移送

 人民法院は、受理した事件がその人民法院の管轄に属するものでないことを発見した場合には、管轄権を有する人民法院に移送しなければならず、移送を受けた人民法院は受理しなければならない(中国民事訴訟法第36条)。ただし、移送を受けた人民法院が、移送を受けた事件が規定によりその人民法院の管轄に属するものでないと認めた場合には、上級の人民法院に管轄の指定を申請しなければならず、自ら重ねて移送してはならない。

 

(2)管轄異議の申し立て

(i)改正内容

 管轄異議の申し立てについては2012年の改正中国民事訴訟法により取り扱いが変更されたので注意を要する。

 訴訟を提起された場合、答弁書提出期間内であれば管轄異議の申し立てを行うことができる。管轄異議の申し立てがあった場合、人民法院は異議が成立するか否かの判断を行う。人民法院は、異議が成立する場合には管轄権を有する人民法院に事件を移送する旨を裁定し、異議が成立しない場合には却下する旨を裁定する(中国民事訴訟法第127条)。

  法改正により、当事者が管轄異議を提出せず、かつ、応訴答弁した場合には、管轄が誤っていようとも訴状を受理した人民法院が管轄権を有すると規定された。従って、管轄が誤っていても被告にとって有利といえる地域の人民法院であれば、当該人民法院において応訴することもできる。

  ただし級別管轄に違反する場合は、この限りではない。例えば、特許権侵害事件の第一審案件は原則として、中級人民法院が管轄する(司法解釈[2001]第21号第2条)。これに反し、高級人民法院に訴訟を提起した場合、中級人民法院に移送されることとなる。また、専属管轄規定に反する場合も、応訴することはできず、移送される。

 

改正前

改正後

第38条(管轄権に関する異議申し立て)

人民法院が事件を受理した後に、当事者が、管轄権について異議を有する場合には、答弁書を提出する期間内に異議を提出しなければならない。人民法院は、当事者が提出した異議について、審査しなければならない。異議が成立する場合には管轄権を有する人民法院に事件を移送する旨を裁定し、異議が成立しない場合には却下する旨を裁定する。

第127条(管轄権に関する異議申し立て)

人民法院が事件を受理した後に、当事者が、管轄権について異議を有する場合には、答弁書を提出する期間内に異議を提出しなければならない。人民法院は、当事者が提出した異議について、審査しなければならない。異議が成立する場合には管轄権を有する人民法院に事件を移送する旨を裁定し、異議が成立しない場合には却下する旨を裁定する。当事者が管轄異議を提出しておらず、かつ、応訴答弁した場合、訴えを受理した人民法院が管轄権を有するものとみなす。ただし、級別管轄に違反する場合及び専属管轄規定に違反する場合はこの限りではない。




(第2回へ続く)



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