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日経記事;『昭電の産業ロボ向け磁石合金、中国産の希少材料不要に 同性能で3割安く』に関する考察

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皆様、
こんにちは。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

10月3日付の日経新聞に、『昭電の産業ロボ向け磁石合金、中国産の希少材料不要に 同性能で3割安く』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『昭和電工はレアアース(希土類)の一種、ジスプロシウムを使わない産業用ロボット向け磁石合金を開発した。高価なジスプロが不要になり磁石合金の価格を約3割安くできる。

中国産レアアースの使用量削減で需給が緩和すれば、まだジスプロを必要とするハイブリッド車(HV)向け高性能磁石の価格低下にもつながりそうだ。

磁石メーカーが合金を購入し、成形して磁力をつける(昭和電工の磁石合金)。

ジスプロは磁石の耐熱性を高めるため、ネオジムや鉄などからつくる磁石合金に添加する。添加率を上げると耐熱性が高まる。産業用ロボットのモーターに組み込まれている磁石は、重量ベースで3.5%程度のジスプロを含む。

特殊な熱処理で結晶構造を変えることで、ジスプロをゼロにした磁石合金を初めて量産できる体制を整えた。

昭和電工によると、ネオジムや鉄を主原料にした高性能磁石の2013年の世界生産量は2万3千トンの見込み。

16年には高性能磁石の世界生産量に占める産業用ロボット向けの比率は3割強の約1万5000トンにのぼると予想されている。これに比例して磁石合金の市場も拡大する。

昭和電工が今回開発した磁石合金の採用拡大で、9割が中国産といわれるジスプロの需給も緩和する見通し。

その結果、現時点では添加率が6~8%と高く、まだジスプロをゼロにできていないHV向けの高性能磁石の価格も下げることができる。

ジスプロの価格は1キログラム当たり6万~7万円。鉄(同100円前後)やネオジム(同1万円前後)を大きく上回る。産業用ロボット向け磁石合金の価格は1万円弱。

今回、昭和電工が開発した磁石合金を使えば3割程度安くなる。今後も風力発電機や産業用ロボット向けを中心に高性能磁石の需要が高まるとみて、来春にも秩父事業所(埼玉県秩父市)で量産を始める。

高性能磁石合金で世界シェアの約25%を持つ同社は現在、耐熱性のより高い磁石合金の研究を進めている。日立金属は2%添加相当の磁石を販売し、さらに多くのジスプロをゼロにできる技術を研究しており、磁石メーカーもレアアース削減を急いでいる。』


何度か本ブログ・コラムで書いていますように、国内素材、あるいは関連メーカーは、レアアース、レアメタルを使用しない、または使用量を減少させる代替技術や代替素材の開発・実用化を急いでいます。

この代替技術や代替素材開発のきっかけとなったのは、中国による反日政策の一環として行なわれました、レアアースやレアメタルの輸出規制です。

この輸出規制を境に、レアアースやレアメタルの輸入価格が高騰し、自動車や電機機器などのメーカーは、商品の生産に大きな影響を受けました。

かって、日本と中国は、政治関係が冷えていても、経済関係はお互いに必要とすれば、活発に交流する政経分離が基本形でした。

しかし、尖閣問題に端を発した日本と中国の関係は、政経分離の基本形が崩れたことを示しています。レアアースやレアメタルの輸出規制はその一例です。

他の事例として、反日暴動が中国内のパナソニックの工場内に入り込み、製造装置などを破壊する行為がありました。

パナソニックは、松下幸之助氏が国内企業の中でいち早く中国進出を決めて、技術移管などを積極的に行った中国にとって重要な企業であり、工場でありました。

そのパナソニックの中国内工場を暴徒が襲撃するのを阻止しなかった中国政府の対応に、政経分離の基本形がなくなったと感じました。


レアアースやレアメタルは、モーターなどの主要デバイスの性能を飛躍的に向上させるための、重要な添加材です。

現在はレアアースやレアメタルなしに高性能・高機能を実現することは難しい状況になっています。

しかし、国内素材メーカーや関連企業は、レアアースやレアメタルの輸出規制以降、代替素材やこれらの素材を必要としない技術を集中的に行なってきました。

例えば、過去の日経記事から抜粋すると以下のような動きがあります。

・「ジスプロシウム」に関して(2012年12月10日)

トヨタ自動車や三菱電機は、ハイブリッド車や省エネ家電のモーター用にレアアース(希土類)を使わない新磁石の開発に乗り出す。鉄の磁石にレアアースを混ぜなくても、強い磁力を保てる技術を生み出す。

2021年度の実用化を目指す。レアアースなど希少金属を中国などからの輸入に依存する体質を抜本的に見直し、次世代製品に不可欠な強力磁石の安定生産につなげる。

ハイブリッド車やエアコン用の高性能モーターに使う磁石は主原料の鉄に、磁力を高める「ネオジム」と耐熱性を高める「ジスプロシウム」を混ぜる。レアアース全体の中国依存度は5割程度まで低下してきたが、ジスプロシウムはなお9割超とずばぬけて高い。

これまで各社は中国依存を脱却するため、レアアースの使用量の削減や調達先の多様化、さらには他のレアアースへの切り替えなどの対策に取り組んできたが、今回の取り組みは全くレアアースを使わない強力磁石の開発という新段階に入る。。。


・レアアースの使用量削減(2012年6月15日)

レアアースを使った高性能磁石で2~3割の世界シェアを持つ信越化学工業は、モーター用磁石でジスプロシウムの使用量を大幅に減らす製造法を導入済み。エアコン向け磁石では既にジスプロシウムを半減した製品の採用が進みつつあり、来春までに全量をこの製品に切り替える計画だ。レアアースの在庫も積み増しており、購入量は大幅に減っているもようだ。

磁石を使う日本企業の間では金属磁石から従来のフェライト磁石などに戻す例も増加。磁石各社はレアアースの利用量を減らした新型の金属磁石も開発しており、今後の採用も見込まれる。。。


何れもレアアースの使用量を大幅削減するか、全く使用しない技術や代替素材の確立に関するものになっています。

特に、今後の日本経済にとって最重要産業の一つである自動車のハイブリッド車や多くの電機機器のモーターに使用されているジスプロシウムの使用量をゼロにする研究・開発は重要です。

トヨタ自動車や三菱電機は、2021年までにジスプロシウムを全く使用しないモーターの開発・実用化を本格化しています。

この技術が実用化されると多くの産業用途に使用される高性能モーターのコスト削減と、ジスプロシウムなどへの依存度を一気に低下することができます。

特定な天然資源の依存を特定国に偏ることは、供給削減や購入価格の急激上昇などに陥るリスクが高まりますので、現在行っているように、官民一体となって短期的に代替技術や代替素材を開発・実用化することは極めて重要です。

この観点からみますと、本日の記事にありますように、昭和電工がジスプロシウムを使わない産業用ロボット向け磁石合金を開発し、2016年度から供給開始することは大きな援軍になります。

本日の日経記事によりますと、ネオジムや鉄を主原料にした高性能磁石の2013年の世界生産量は2万3千トンの見込み。16年には高性能磁石の世界生産量に占める産業用ロボット向けの比率は3割強の約1万5000トンにのぼると予想されています。

一方、ハイブリッド車で使用する高性能磁石は、現時点で1割程度あり、今後も当面の間増加します。産業用ロボットの使用量が減ると、ジスプロシウムの需要が縮小しますので、ハイブリッド車向けの購入価格が安くなる事業環境になります。

国内の自動車企業にとっては、ジスプロシウムを全く使用しないモーターの実用化までのカンフル剤となります。

改めて、国内素材メーカーや関連企業の高度な技術力を実感しています。「必要は発明の母」を実現していく国内素材メーカーや関連企業の動きに今後も注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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