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日経記事;『東レ、米炭素繊維大手を買収 700億円、世界シェア3割に』に関する考察

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皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

9月27日付の日経新聞に、『東レ、米炭素繊維大手を買収 700億円、世界シェア3割に』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。

『東レは炭素繊維で世界3位の米ゾルテック(ミズーリ州)を買収する。買収金額は600億~700億円。

世界首位の東レは高機能品を主力としており、廉価品でトップメーカーのゾルテックを傘下に収めることで、炭素繊維の新たな用途を開拓する。

世界シェアは現在の2割から3割に上昇、成長市場で圧倒的な競争力を確保する。

炭素繊維は鉄に比べて大幅に軽く強度が高いのが特徴で、航空機の主翼・胴体、自動車のボンネットなどに採用されている。

ただ価格は鉄の数倍から十数倍と高く、普及が遅れる要因になっていた。買収により規模のメリットを生かした生産コストの低下が進めば、炭素繊維市場の拡大につながりそうだ。

東レはまず米国で特定目的会社(SPC)を設立。SPCを通じてゾルテックの全株式を取得する。今年度中に買収を完了する見通し。東レとゾルテックは27日に最終合意する。

ゾルテックが生産する炭素繊維の単価は、東レなどが生産する高機能品の6割程度。建材や自動車部品など向けに供給している。東レは買収を機に安価な炭素繊維の生産にも乗り出す。

東レの2013年4~6月期決算では炭素繊維複合材料事業の売上高は前年同期比32.9%増の244億円。米ボーイングの航空機向けや天然ガスの運搬タンク向けなどで売上高を伸ばした。

炭素繊維の世界需要は20年までに年14万トンと現在の約4倍に拡大する見通し。東レは買収をテコに顧客基盤を広げ、帝人などの日本勢や急速に台頭する中国・台湾メーカーを大きく引き離す。

東レの13年3月期の現金・預金類は約1100億円で前年同期比で約200億円増えた。過去には大型のM&A(合併・買収)をほとんど手がけていなかったが、成長分野で競争力を確保するため大型投資に踏み切る。』

本日の記事は、東レが世界3位の米ゾルテックを買収することについて書いています。東レによる買収の狙いは、記事にありますように炭素繊維の急速普及のカギとなる自動車用途の取り込みです。

また、東レはゾルテック買収で世界ナンバーワンのシェアをさらに増やせます。東レの現在の世界シェアは、生産能力ベースで21,100トンで21.2%となっています。

世界シェアのナンバーツーは、日系の帝人が13,900トンで13.9%のシェアをもっています。第3位が、東レが買収するゾルテックで、10,500トンで10.5%のシェアをもっています。

この結果、東レは買収で31,600トンで31.7%のシェアをもつことになり、帝人や三菱レイヨンの国内勢に大きな差をつけることになります。

ちなみに、現在の国内勢三社の世界シェアは、45.2%であり、ゾルテック買収で55.7%の圧倒的なシェアをもつことになります。

東レの買収は、帝人や三菱レイヨンを大いに刺激しますので、急速普及が期待できる自動車用途の需要確保も含めて、今後多様な動きが出てくるとみています。

炭素繊維は、以前にも本ブログ・コラムで書いていますように、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維のことです。JIS規格によると、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られる,質量比で90%以上が炭素で構成される繊維と定義されています。

炭素繊維の技術は、1959年にユニオン・カーバイドの子会社がレーヨンから炭素繊維を発明したことから始まっています。

国内勢は、炭素繊維の発明企業ではありませんでしたが、その先進性に着目して、多額の開発投資を行なって、商品化を実現しました。

最近では、東レの炭素繊維が最新型旅客機「ボーイング787」の構造材に全面採用されたことが話題になりました。

これは、炭素繊維が鉄と比べて、強度は鉄の10倍、剛性は7倍、重さは4分の1であり、強くて、軽い。錆びない、耐熱性がある、整形しやすい、などの特徴や良さをもっていることによります。

炭素繊維の欠点は、生産コストが高い、加工のしにくさでしたが、これらの課題は解決されつつあります。

この国内勢の不断な開発投資が、ボーイング787への全面採用などに結び付きました。

航空機への採用後、次の重要な使用目標になったのが、自動車用途です。自動車は、世界中で環境対応や低燃費を目指しており、車体の軽量化はその実現のために必須条件の一つとなっています。

炭素繊維は、軽量化の最適な素材ですが、従来は加工の難しさと高い生産コストが壁になっていて、採用まではいけませんでした。

この状況が、ここ数年で変化しつつあります。例えば、東レは、メルセデス・ベンツの高級車に炭素繊維を提供しています。

帝人は、米自動車大手、ゼネラル・モーターズ(GM)への炭素繊維供給を2012年に発表しました。

以下は、日経記事からの抜粋です。

「車体のうちフレームやボディーを鉄から炭素繊維に置き換えると、自動車の重量の3割に相当する約400キログラムの軽量化につながり、燃費性能の向上につながる。

炭素繊維は1キログラム当たりの相場が3千~5千円台と、同100~300円の鉄を大きく上回る。この価格差がスポーツカーなど限定的な採用にとどまる要因になっている。。」

炭素繊維が自動車用途で多く使われるためには、上記記事にありますように、生産コストの削減が必要になります。東レは、今まで高級車用途の供給を主に行なっており、一般乗用車用途への供給には積極的ではありませんでした。生産コストの削減が課題になっていました。

東レにとって、ゾルテック買収でこの状況が変わる一助になります。ゾルテックは、低コストでの炭素繊維の生産に強みをもっていることによります。

日経記事によると、ゾルテックは、1975年設立の米国の炭素繊維大手メーカーで、比較的安値の炭素繊維を製造し、樹脂の強化剤や風力発電の羽根向けに供給しているとのこと。

炭素繊維の商品ラインナップで、東レとゾルテックは、重なりません。「Win/Win」の関係が構築できます。

今後、東レ、帝人、三菱レイヨンの国内勢同士の競合もより一層激しくなります。合理的な競争が国内勢の競争力をさらに強めて、当面の主戦場となる自動車用途でしのぎを削ることで世界市場規模と世界シェアをさらに拡大させることを大いに期待します。

炭素繊維の使用用途の拡大は、関連する中堅・中小企業にも大きな新規事業の機会を提供します。

今後の、東レ、帝人、三菱レイヨンなどの国内勢の動きに引き続き注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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