「長持ちする」と「長持ちさせる」は異なる - 建築プロデュース - 専門家プロファイル

松岡 在丸
松岡在丸とハウジング・ワールド 
東京都
建築プロデューサー

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対象:住宅設計・構造

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「長持ちする」と「長持ちさせる」は異なる

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多額の資金を投じるのだから、家は出来るだけ愛着を持って長く住みたい、と考えるのは至極当たり前と言えますが、実際にはそんなに思い通りには行かないもの。

営業マンに家の耐用年数について尋ねてみると、大抵は平均耐用年数平均建替年数と共に、メンテナンスの必要性を強調されます。当然と言えば当然なのですが。

しかし、ここで家を見分けられるようになる必要があるのです。「その建物を長持ちさせるためにどれだけの労力が求められて来るか」というのは、どのような仕様で家づくりをするのかで大きく変わってきます。

言い換えれば、その家は「長持ちする」のか、それとも「長持ちさせる」のか、ということ。

分かりやすく表現すると、「長持ちする」というのは、メンテナンスが最小限で済むということ。「長持ちさせる」とは、どんどんリフォームや修繕を繰り返して騙し騙し使い続ける、とでも言いましょうか。

建物を100年使い続けることは、古い部分を新しいものにどんどん取り替えて行けば簡単なことです。犬小屋を100年使い続けることだってできるのではないでしょうか。傷んだ部分をどんどん取り除き、修理し、補強し、を繰り返して行けば良いわけですからね。

でも、だからこそ、家を100年使おうとした時に重要な部分というのが見えてきます。取り替えにくいところに、耐用年数の長い部材を用いる、ということです。

例えば、キッチンやユニットバスが100年使えるというのは必須でしょうか? 100年使える電化製品は? 屋根は? 壁は?

100年使い続けるということは、どの部分をどのように修繕して行くのか、どんなタイミングでリフォームして行くのか、あるいはどれほどの頻度で取り替えて行くのか、ということを計画すること。

高層ビルなどの建築構造物の場合はこうしたことがしっかりと計画されていますが、戸建住宅ではそこまで計画されることは稀です。「家は30年前後で建て替えるもの」という文化が今の日本の建築業界に根付いてしまっているからです。

もしあなたが、長持ちする家を建てたいと考えるのであれば、具体的に何年ぐらい住むつもりなのかという観点から考えましょう。将来、まだ見ぬ孫に継がせたいと考えるのであれば、何年ぐらい住める家が必要でしょうか。そのために、いつ、どの部分をどのように修繕して行くのでしょうか。現実的に修繕可能なプランになるでしょうか。

最も修繕しづらい部分を、使いたい長さの耐用年数を持つ素材と技術で達成することが大切ですね。

「長持ちする」家を「長持ちさせる」使い方ができればベスト、と言えるかもしれませんけどね。

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