- 松岡 在丸
- 松岡在丸とハウジング・ワールド
- 東京都
- 建築プロデューサー
対象:住宅設計・構造
人類の存在と同じほどの長さの歴史を持つ「住まい」という概念。
当然、その間取りやつくりにはそれだけ人類の経験に基づく英知が反映されてしかるべきです。
ところが、20世紀以降の経済産業に引っ張られるようにして、家というものもビジネス商品として規格化されて行き、それと共にデザインや間取りは歴史に見られる英知からはかけ離れていくこともしばしば。
食文化などは分かりやすいかもしれません。歴史・文化・医学の観点から人間の生理的・精神的必要はより詳細に理解されてきましたが、ジャンクフードやファーストフードを好む人間の「欲」と利益の追求によって英知は本来の必要とは逆の方向に用いられるようになりました。
家づくりについても同じです。暮らしやすい間取りというのはすでに歴史的な建物から明らかなのですが、現実問題として土地が狭い、部材が高いなどの理由で限界があり、効率ばかりが優先された「とりあえず住宅」が一般化しているように思えます。
その一つが、「人間の暮らし」に根差していないプランニング。
先に述べた生理的な必要や精神的な必要を無視してしまうと、住まいは次第に居心地が悪くなり、住み替えたくなって行きます。
自分のライフスタイルを見直してみよう
例えば、食事は広くて快適な環境の方が楽しく、食欲も増すでしょうか。それとも散らかっていて狭苦しい環境でも美味しく食べられるでしょうか。
また、近くに人の気配がするようなトイレでリラックスできるでしょうか。
自分の睡眠は寝室の温度や音、振動に全く左右されないでしょうか。
日常の中で、どれほど友人や親族と過ごす時間を持てるでしょうか。「持ちたい」ではなく、「持てる」です。期待や理想ではなく、今現在の生活レベルです。
考えてみると、自分に合った家というのは、誰にでも共通の面と、個性に基づいたものとに分かれてくることが理解できます。
こうしたことを総合的に考えるとプランニングに反映させると、いい家になって行きます。これは素人では難しいのですが、住宅のプロだからできるということでもありません。
生理学や心理学、精神医学の面から暮らしに基づいたプランニングの専門家というのが日本には少ない、というのが現状。これを打開できれば、いい家づくりに一歩近づきます。
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