現代の便利屋は、主に高齢者家庭や夫婦で勤めている家庭をお客さんに、力仕事や危険な仕事を代行しています。高齢化社会を迎え、このようなビジネスには需要が多いと思われがちですが、新規に開業した便利屋さんはほとんどが苦戦しています。思いもしなかったライバルがいるからです。
それは、市町村の社会福祉協議会が運営している、シルバー人材センターの存在です。大工仕事、植木の手入れ、ペンキ塗り、空き家の清掃など、便利屋の仕事とシルバーの仕事はほぼ重複します。便利屋は本職とはいえ、シルバーには一度リタイアした専門家がいたりしますから強敵です。
そのため、仕事の取り合いになった場合、料金の安いシルバーには敵いません。新人便利屋さんの開業前の目算は、大半がこのシルバーの厚い壁に立ち塞がれてしまいます。官業が民間の仕事を奪うとはこのことですが、地域の元気な中高年が相手では喧嘩にもなりません。
そのな便利屋ビジネスのモデルとなるような話が、7月29日付け日本経済新聞朝刊に載っていました。宇都宮市で便利屋を開業しているKさんは、スズメバチの駆除を、20年間で5千個以上行ってきています。他の仕事と違ってスズメバチ駆除の場合は、人命にも係わる危険な仕事です。
この特技があるおかげで、Kさんの便利屋は長いこと仕事を続けてこれたと言っています。自宅の裏庭にはスズメバチの石碑を建て、毎朝線香を絶やさないほど感謝もしています。今では小学生を相手に、スズメバチから身を守る啓蒙活動にも力を入れていると言いますから本格的です。
Kさんとスズメバチとの組み合わせは、他のビジネスにも言えます。やはり業種での得意技を身に着けないと、安定してビジネスを展開することは難しいです。当然、得意技だけでは食べていけないほど市場が小さいこともあります。それでも、他の人にはできないビジネスを身につけることが、他の仕事をもらうきっかけになり、息の長いビジネスが可能になります。
【一言】
まったく知らない業種で、新規に起業する人に比べ、これまでに関わりのある業種で起業した人が長持ちするのは、やはりお客さんのニーズを判っているからです。一見簡単なようですが、お客さんの気持ちが判るようになりますと、何を提供すると喜ばれるか判りますから、現代のビジネスにおいては答えの判っている問題を解くようなものです。
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