- 井川 征博
- 日本橋ジェム矯正歯科 院長
- 東京都
- 歯科医師
対象:一般歯科・歯の治療
- 赤岩 経大
- (歯科医師)
- 赤岩 経大
- (歯科医師)
【むし歯から歯を守るむし歯の予防方法】
むし歯は、1度できてしまうと治療しないかぎり治らず、放っておくと痛いばかりか、最終的には歯を失ってしまう恐れがあります。みなさんはむし歯についてどこまで知っていますか?敵に勝つにはまず敵を知ることです。むし歯がどのようにしてできるのか、むし歯はなぜできるのかについて理解し、むし歯の予防方法を身につけ、むし歯から歯を守りましょう。
-むし歯のメカニズム-
むし歯とは、歯が溶かされて脱灰が起こっている状態をいいます。口の中には健康な状態でも常に300種類以上の細菌がいます。その中でむし歯を作るのがむし歯菌であるミュータンス菌です。このミュータンス菌の活動により脱灰が起きているのです。
①口の中に存在するミュータンス菌は、清潔な状態だと害はなく悪さをしません。この時、口の中は中性です。
②食事をしたあと、ミュータンス菌は食べカスなどに含まれる糖を栄養分とし、歯垢を作ります。
③歯垢は細菌の塊であり、歯垢中のミュータンス菌が増殖しネバネバしたバイオフィルムを生成し、歯に付着します。
④バイオフィルムで守られたミュータンス菌は、糖を発酵させ酸に変えます。口の中を酸性にし、むし歯になりやすい環境にします。
⑤酸により歯のエナメル質の内部から、歯の成分であるカルシウムやリンが溶け出します。歯は溶かされ脱灰が起こり、むし歯となります。
-脱灰と再石灰化-
口の中は普段は中性であり、糖により酸性に傾きますが、唾液の働きにより中性に戻そうとします(再石灰化)。このように口の中では、酸が歯を溶かす「脱灰」と中性に戻し歯を守る「再石灰化」がバランスよく行われ、歯は健康な状態を保っています。しかし、このバランスが崩れ、酸性度が一定の濃度に達してしまうとなかなか中性に戻らなくなり、脱灰してしまうのです。再石灰化が上手く行われず、口の中が酸性である時間が長いとむし歯になってしまうというわけです。
-むし歯ができる4つの条件-
むし歯になる4つの条件があり、これらが重なることで脱灰が起こりむし歯になります。それは、①歯質②糖質③細菌④時間(口の中が酸性に傾いている時間)です。これらの力が強くなると脱灰が起きやすく、大きなむし歯へとなってしまいます。
つまり、以下のような人はむし歯になりやすい環境といえます。
・歯の質が弱い
歯のエナメル質は非常に硬い物質ですが、歯の形成時に石灰化が不十分だと、エナメル質や象牙質の無機質が不足してしまうことがあります。このような場合、エナメル質が弱くなりむし歯になりやすくなります。
・甘い物を好む
ミュータンス菌の栄養分である糖質を摂取すると、ミュータンス菌は活動を始めます。糖質を多く摂取すれば、もちろんですがミュータンス菌は活発に活動します。
・口の中が不衛生
食べカスなどにより歯垢が付着し、ミュータンス菌は増殖します。歯磨きを行い食べカスや歯垢を落とすことで、ミュータンス菌は減少しますが、放っておくとミュータンス菌はどんどん増殖していき、口の中は酸性に傾き続けむし歯になりやすくなります。
・唾液の分泌が不足している
食後、酸性に傾いた口の中は唾液の再石灰化の作用により中性に戻ります。唾液の分泌が少ないと再石灰化が上手く行われず、中性に戻りにくくなります。
・食事回数が多い
食後、酸性に傾いた口の中は唾液の再石灰化の作用により中性に戻ります。しかし、食事回数が多いと中性に戻れず酸性の状態が続き、むし歯になりやすい環境となってしまいます。
-むし歯の予防法-
むし歯のメカニズム、むし歯ができやすい環境を理解することで、おのずとむし歯の予防法が見えてきます。むし歯を発生させない環境を作りましょう。
☆フッ素
エナメル質を強くし、歯を丈夫にするにはフッ素が効果的です。フッ素はエナメル質の成分の(ハイドロキシアパタイト)とくっつき酸に抵抗性のある成分(フルオロアパタイト)を形成し、歯を強くします。また、フッ素はむし歯菌の働きを抑え、むし歯予防に非常に効果があります。歯科医院でのフッ素塗布やフッ素入り歯磨き粉の使用をオススメします。
☆甘い物を控える
ミュータンス菌の栄養分である、糖質の摂取を控えましょう。特に、チョコレートやキャラメル、クッキーなどは歯にくっつきやすく、ミュータンス菌の大好物です。また、コーラーやソーダなどは、砂糖が多く使われているだけでなく、酸性が強く脱灰が起きやすい飲み物です。特に歯が形成される幼児期の摂取には十分注意しましょう。
☆唾液の分泌を良くする
唾液には再石灰化作用があり、口の中をむし歯になりやすい酸性から中性に戻してくれます。よく噛むことで唾液が多く分泌されます。食事はよく噛みましょう。また、口呼吸など口が開いた状態であると口の中が乾燥し、唾液の分泌が損なわれます。鼻呼吸を行い、口の中を乾燥させないようにしましょう。
☆規則的な食生活
食事回数が多かったり食事の時間が不規則であると、脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、むし歯になりやすくなります。何度も間食をしたりせず、食事の時間をきちんと決め、ダラダラ食いは避けましょう。
☆口の中を清潔にする
むし歯予防において最も重要なのが、歯磨きです。いくら甘い物を控えて食事回数を減らした所で、口の中が汚れていては何の意味もありません。甘くない食事にもわずかな糖質は含まれています。食後の丁寧な歯磨きで食べカスや歯垢をしっかりと落とし、むし歯を予防しましょう。歯ブラシだけでなく、フロスや歯間ブラシを使用するとより効果的です。
-むし歯をつくらない食事-
食事をすることがそもそものむし歯の原因になっています。しかし、生きていくうえで食事をしないというのは不可能です。むし歯になりにくい食事をし、ミュータンス菌の活動を抑えましょう。
☆キシリトール
キシリトールとは、様々な野菜や果実に含まれている天然素材の甘味料です。キシリトールは口の中で酸を作りません。さらに酸の中和を促進する働きもあります。唾液が出やすくなり、むし歯になりにくい状態に保ってくれます。また、歯垢を付きにくくし、歯の再石灰化を促します。さらにキシリトールは、ミュータンス菌の活動を弱める働きを持っています。歯垢中のミュータンス菌を減少させ、使い続けることでむし歯になりにくい歯垢に変わります。また、歯垢の性状の変化によって歯磨きがしやすくなります。食後にキシリトールガムを噛むことで、ミュータンス菌を減少させるだけでなく、噛むことで唾液の分泌を促進させることができます。
☆むし歯になりにくい食べ物
以下のような食品は糖質が低くむし歯になりにくいです。
・野菜(人参、きゅうり、キャベツ、セロリなど)
甘くなく、食物繊維が歯についた汚れを落としてくれる効果もあります。
・果物(イチゴ・林檎・スイカなど)
イチゴにはキシリトールが多く含まれています。林檎は食べたあと歯の間に残る量が少ない食べ物です。
・お煎餅
砂糖が少なく歯にもくっつきにくいため、むし歯になる可能性が低いお菓子です。
・チーズ、ヨーグルト
歯を丈夫にするカルシウムが豊富です。
・ゼリー
ほかのお菓子に比べると砂糖が少なく、歯にくっつきにくい食べ物です。
むし歯についてしっかり理解し、むし歯を予防しましょう。また、いくら丁寧に歯磨きをしきちんと予防しているつもりでも、むし歯はできてしまう可能性があります。歯科医院での定期健診を受け、むし歯の早期発見・早期治療に努めましょう。
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