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最近の愛聴盤から(5) シャコンヌ ~佐村河内守 弦楽作品集

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 今年、クラシック音楽界で一番の注目を浴びている作曲家、佐村河内守。

テレビや多くのメディアで彼、というよりも彼の半生に注目されたことで「交響曲第1番『HIROSHIMA』」のディスクがクラシックのCDでは異例のセールスを続けています。

 彼自身は、私は作曲家であるので自分を表現するのは音楽である、と語っています。(当然ですがこう語る作曲家は実に多い)

2007年に刊行された著書「交響曲第1番 闇の中の小さな光」が今年文庫版となり、私も読ませていただきました。

「自分を表現するのは音楽」とはいうものの、結果的に彼の作品や彼の才能を多くの人が知るきっかけとなったのはメディアであり文章でした。

 

 文庫版のあとがきを読むと2007年から2013年5月までの自身の環境の変化について書かれています。

2007年、当時の広島市長がこの本を読んだことをきっかけにご尽力され、翌年佐村河内さんの故郷である広島で「交響曲第1番『HIROSHIMA』」が世界初演されました。

 【初演データ】

 指揮: 秋山 和慶

 演奏:広島交響楽団

 日時:2008年9月1日

 会場:広島厚生年金ホール

以降、東京、京都、大阪など各地で再演されCD化されました。

大友直人 指揮、東京交響楽団とのレコーディング初日は2011年3月11日。

東京(収録会場:パルテノン多摩)も大きく揺れたのですが収録は続行。

大地震は演奏中の最中でしたが止まることなく、止めることなく続けられその演奏は鬼気迫るものだった、という記事を読んだことを覚えています。

 

 佐村河内さんと東京交響楽団とはこうしたつながりもあり、ソロ・コンサートマスターの大谷康子さんからヴァイオリンのための楽曲の委嘱を受け、献呈されたのが「無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌ」。

このディスクのタイトルになっています。

 シャコンヌと言えば、バッハ。

「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 第5番」

14分を超えるこの曲は作曲家にとってもヴァイオリニストにとっても巨大な山と言われています。

佐村河内さんの「シャコンヌ」も19分54秒という無伴奏の作品としては大作になっています。

 

 シャコンヌというのは音楽の形式の一つで、一つの主題(テーマ)を基に変奏していく形式の曲です。

「一つの主題」ということは、明確な旋律を持つ、聴き取れる旋律である、変奏に耐えうる体力を持った旋律である、ことが重要です。

現代的な作曲手法とはまた別な、高度の作曲技法が必要とされます。

シャコンヌという形式を用いた曲を作曲したということが佐村河内さんがどのような作曲家であるかを知るひとつの鍵になります。

 現代音楽、といってもシェーンベルク(1874~1951)以降の音楽は明確な旋律線や協和音の音楽から距離をおいたものとなりました。

私が佐村河内守という作曲家を知ったのは吉松隆さんのブログでした。

吉松さんも調性から離れることに異を唱える作曲家であるので、この点は2人の共通項といえるでしょう。

(吉松さんの最近の活躍といえば「NHK大河ドラマ 平清盛」「タルカス」でしょうか)

 

 この、旋律線を持ち調性を持つ楽曲はこのディスクに収録されている弦楽四重奏曲にも聴くことができます。

弦楽四重奏曲第1番で時折聴かれる不協和音や(特殊奏法による)ノイズはその後に流れる協和音への対比のものであり、無調性を表現するものではありません。

「桜、ふたたびの加奈子」では登場人物の心の変容を振り子時計のように不協和音と協和音との往復となっており、映画全体を強く印象付けるものとなっています。

 対比という面では第1番と第2番の関係もこのような関係になります。

第2番の第1楽章は短調の物悲しい旋律で始められ、弦楽器特有の哀愁を帯びた響きと相まって非常に美しい楽曲です。

 

 このディスクを手に入れてから僅か後に東京佼成ウインドオーケストラ演奏の「火の鳥」を購入し拝聴しました。

この中にも佐村河内さんの作品が収録されています。

 指揮:飯森 範親

 演奏:東京佼成ウインドオーケストラ

 日時:2012年12月1日 第113回定期演奏会によるライブ録音

 会場:東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

 楽曲:「祈り」 東京佼成ウインドオーケストラ委嘱作品  世界初演

弦楽器の響きとはまた違う、編成の大きい管楽アンサンブル特有の厚みのあるサウンドによる壮大さを聴くことができ秀逸な1枚。

暗闇の中に光る小さな光というよりは、暗闇を通った先に見えた壮麗な希望の光、というように感じます。

 

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