- 田中 紳詞
- 株式会社Exciter 代表取締役/主席コンサルタント
- 東京都
- 経営コンサルタント/ITコンサルタント
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対象:ITコンサルティング
トイレで学ぶ、システム開発の難しさ その3 開発~納品と検収
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開発
さて、いよいよ開発です。
設計した内容に忠実に基づき、開発を行います。
いざ開発してみると、設計段階での誤りや、更に考慮しなければならないことなどが出てきました。
「トイレに行く」の前に、「トイレを探す」という行動が入りますが、建物によっては場所がわかりづらかったり、いざ「トイレに行く」タイミングになったら
案外遠かったりすることがあり、想定より時間がかかってしまうことがあり、ロボットはトイレに行きたくなってから二時間半の間は我慢できますが、間に合わず漏らしてしまうことがありました。
これは仮に顧客がokを出していたとしても運用を考えないシステム屋に原因があり、しかし今更言っても遅いので、もう少しサイクルを短くして余裕を持たせ二時間おきに設計を変更しました。
また、「おしっこ用の便器に行く」ということで、ロボットに搭載されているカメラとGoogle画像検索を使うことになっていますが、Google画像検索にノイズ(違うもの)がヒットしてしまうケースがありました。
例えば、有名な例では俳優の佐藤隆太さんを画像検索すると、柳沢慎吾さんがヒットするという例がありますが、運用上の問題が起きていないためよしとしました。
別段、お客さんに報告することでもないと判断し、システム屋さんの内部で情報共有するに留めました。
(後から、ロボットの中に関係ない画像がある!不具合だ!という指摘があったり、事前に分かっていたのに何故報告しなかったんだ!何故隠す!といって炎上したのは、また別の話とします)
そんなこんなで大変な思いをして、徹夜作業も越え、何とか納期に間に合いました。
要件定義や設計の結果をまとめたドキュメントや、テストの結果なども取りまとめて、顧客に引き渡す準備ができました。
納品と検収
お客さんのところに伺い、利用するための準備を行いました。
あとは、使ってもらうだけです。
(※その前に、顧客にokかどうかを判断してもらうという進め方もありますが、ここでは一括納品とします)
次の日、お客さんからのクレームがあり、すぐに何とかするようにとのことです。
内容は、「二時間おきにトイレに行くとは言ったが、夜中も二時間おきに起きてトイレに行くのはおかしい」とのことでした。
システム屋さんはボヤきます。そんな要件はなかったのに。ぶつぶつ。
仕方がないので「寝ている間は、二時間おきというカウントを停止する」とし、再度納品しました。
またクレームです。
今度は、「寝ている間に溜まり過ぎて、寝起きに漏らしたりオネショをしてしまう」という内容です。
サービスで変更してあげたのに、またかよ。ぶつぶつ。
今度は、二時間おきカウントとは別に、寝る前と寝起きに必ずトイレに行くように変更しました。
その週にもう一度連絡があり、仕様を変更しシステムを修正しました。
ああ疲れた。お客さんたち、そんなこと言ってなかったじゃん。すぐに対応しているのに文句ばかり言われる。ぶつぶつ。
次の週、またまたクレームです。
仏の顔も三度までと言いますが、さすがにトラブル続きでお客さんもお怒りです。
内容はと言えば、既にトイレに先客がいて、おしっこをしている人がいました。
何とロボットは、その人の後ろからくっついて、おしっこをし始めてしまったということです。
もちろんその方は激怒して、悪いことに重要な取引先の方だったとのことです。
なんとか経緯を説明して怒りを収めて頂いたものの、取引に不利な条件が加わってしまったし、社内での立場も悪くなった。どうしてくれるんだ!とのことです。
そうです。
このシステムには要件が漏れており、上記3の「おしっこ用の便器に行って」という箇所に「どの便器を使うかを判定する」という機能が足りなかったのです。
何でそんなことが抜けているんだ!とお客さんはお怒りです。
システム屋さんは「要件定義に無かった」や「要件や設計は御社に確認頂いて、okを頂いて進めた」と説明しましたが「常識的に考えれば、わかるだろう!」と火に油です。
事態を収束するため、急いて「誰かが使っていたら、空いている便器を選ぶ」という機能を組み込みました。
最優先として扱い対応し、システム屋さん側の偉い人がお詫びに伺ったり、なんとかこれで収まったのです。
余談ですが、この機能もすぐに下記の修正が入りました。
・既に誰かが使っている場合、他が空いているのに隣に来られたら気持ち悪いので、一つは空けて欲しい。ただし、空のの便器が無い場合は仕方がないけど。
・トイレの床が汚れている場合もあるので、汚れた便器は避けるようにしないと靴が汚れてしまう。ただし、すぐに排尿しないと漏らしそうな場合は仕方がないけど。
その後、いくつかの不具合を修正し、いくつかの追加要望をタダで対応することになりましたが、その甲斐あって、ようやく検収okを頂くことができました。
その後は、待ちに待った請求と入金です。
一括請負の場合は、お金の回収は全てが終わった後です。
それまでは、外注さんがいる場合は支払いは先ですし、従業員へのお給料も遅配するわけにはいきませんから毎月払います。
そういった諸々の事象を超え、ようやく開発プロジェクトは幕を閉じるのです。
このコラムの執筆専門家
- 田中 紳詞
- (東京都 / 経営コンサルタント/ITコンサルタント)
- 株式会社Exciter 代表取締役/主席コンサルタント
業務システムからモバイルまで、IT業界の無差別格闘家
専門はSAPなどの業務システムとコンサルティングですが、それに限らず企業にとって必要なITとその活用を考え、幅広い分野の経験を積んできたと自負しております。ITには多くの分野がありますが、一面ではなくトータルで勘案したプロの仕事をお届けします。
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