Google Apps が必ずしも素晴らしくはない理由 - Webシステム開発・導入 - 専門家プロファイル

井上 みやび子
すぐ使える株式会社 代表取締役
東京都
Webエンジニア

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:システム開発・導入

清水 圭一
清水 圭一
(IT経営コンサルタント)
井上 みやび子
井上 みやび子
(Webエンジニア)
清水 圭一
清水 圭一
(IT経営コンサルタント)

閲覧数順 2024年04月18日更新

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

Google Apps が必ずしも素晴らしくはない理由

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. システム開発・導入
  3. Webシステム開発・導入
徒然 IT 考

はじめの一歩を踏み出すためのパッケージや SaaS

さて昨今、これだけ社会の変化が早いとじっくりとシステム設計や開発に割ける時間も少なくなり、パッケージソフトや SaaS などのオンラインツールをカスタマイズして使う事が多くなってきました。

例えば、Google Apps 。Google ドライブやカレンダーだけなど、部分的にでも、何かしら使っている方は多いのではないでしょうか。国産だとサイボウズなどのグループウェアが有名ですね。

こういったツールは多数の方が同じものを使う事によって開発や運用の効率を上げていますので、無料や比較的低価格(少なくとも初期費用はかなり低い)でシステムが利用できます。はじめの1歩を踏み出せるのはすばらしい事ですが、実は汎用ゆえに非効率な部分があります。

規模によって異なるシステム動作の「正解」

例えば「システム利用者を管理する画面」を考えてみましょう。利用者を追加したり登録済の利用者の情報を表示したりする機能ですが、社員が30名のA社も社員が1000名のB社も同じシステムを使いますから、登録済の利用者を表示するには当然、何かの情報で検索する機能が必要になります。そうでないとB社では特定の利用者を見つけるのにすごく時間がかかってしまいます。また例えば、「2010年に新規登録した利用者」で検索した時にヒットする人が150人もいるとすると、検索結果を一定件数ごとに分割する機能も必要です。

さてそうなると、登録された利用者を表示する際の手順は以下のようになります。

1. 管理画面にアクセス → 2. 検索する → 3. 結果一覧から探す → 4. 無ければ次のページを表示する

これはとても一般的な手順で、みなさんも日々色々な場面でこのような作業を行っていると思います。システム開発する側からしても、様々なニーズに一つのシステムで対応するとしたら、このようにしておくのが安全です。

ただ、30名しか社員がいないA社の担当者だったらどうでしょうか? 一番効率がいいのはおそらく、以下のような動作でしょう。

1. 管理画面にアクセスすると30名の登録者一覧が表示される

30名の中から目的の人を見つけるのは難しい事ではないからです。いちいち検索して結果が表示されるのを待つよりずっと効率的ですね。

このように、一つ一つはほんのちょっとの違いですが、汎用のシステムを使うという事で毎日毎日各人が少しずつ、余計な時間を使わざるを得ない状況になっています。「お弁当箱の蓋の裏に着いた米粒の総量」と同じで計る事はできませんが、実はそれを積み上げた合計は結構大きなものではないかと思います。

自分にこれは必要か? という観点

別の例をもう一つ。私が使った事のある顧客管理ツールは大規模な会社で使う事を想定したシステムでしたので「顧客担当者の所在地 (支社)」と「その会社の所在地」は異なるというのが基本設定でした。当然と言えば当然ですが、このため、私のように小規模の事業者でも一人のクライアント情報をそのツールに登録すると、後で所在地が変更された際には2カ所別々に住所変更をしなければなりませんでした。 (どちらが正か決めてしまえば一方は変更しなくてもいいのですが、思い違いで逆を編集してしまったり後できっと混乱してしまいますので毎回両方変更していました。) また、所在地には「国」を登録する欄が付いていました。とても便利な点もあるツールだったのですが、毎日それで情報を管理する事を考えると「面倒くさいなあ」という感情が先に来てしまいます。面倒くさい事はなかなか続けられません。

システムの汎用化とその代償

では、希望に応じて動作を変更できるようなオプション設定を予めシステムに組み込んでおけないのか? というと、できます。理屈としては。

ただそのオプションを付ける事でシステムは大きくなり動作が重くなり、また、開発に手間が掛かる分たくさんの人に (または高い値段で) 売らないとペイしない、という事でますます色々なニーズに応えるためにシステムは肥大の一途を辿ります。使う側からすると色々なオプションをいじくり回さないと自分の望みの動作にたどり着けないという事になります。

規模の違うものは共存できない

このため私は、いくら安いプランが提供されていたとしても、全体として規模の大きな汎用システムを小さな会社で使うのは、オペレーションを行う個々の人の時間のクオリティの面からすると不幸な事だと思っています。逆に、会社が小規模の時には良かったシステムが、規模の成長とともにニーズに合わなくなって行く事もあります。

システム選定の際は「そのシステムのメインの想定顧客層に自分 (自社) は含まれているか?」という視点が重要です。

このコラムに類似したコラム

EXCELで自社システム開発 小笠原 宏之 - ITコンサルタント(2010/06/06 10:32)

SAPやERPは、今後どうなる? 田中 紳詞 - 経営コンサルタント/ITコンサルタント(2014/03/30 00:00)

SAPのテンプレート導入について その3 ベンダ側のメリット・デメリット 田中 紳詞 - 経営コンサルタント/ITコンサルタント(2013/12/30 23:20)

今更ながら、SAPとはなんぞや? 田中 紳詞 - 経営コンサルタント/ITコンサルタント(2013/08/29 22:17)

第213号:開発は面白い。皆さんも挑戦しよう! 小笠原 宏之 - ITコンサルタント(2010/11/17 09:57)