- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:労働問題・仕事の法律
退職金の不支給、減額
退職金は退職時に具体的に発生するものであって、賃金全額払いの原則(労働基準法24条1項)は賃金発生を前提とする原則であるから、退職金の減額・不支給条項は、同原則には違反しない。
1、退職金不支給(減額)条項の有効性
退職金が賃金の後払い的性格と功労報償的性格をあわせもつことから、懲戒解雇などの場合に退職金を支給しない、または、減額する旨の、退職金の不支給(減額)規定が就業規則などに規定されている場合、その規定は有効と解されている。
もっとも、退職金不支給(減額)規定を限定解釈して、従業員の「退職(解雇)までの勤続の功労を抹消または減殺するほどの著しい(重大な)背信行為」の場合に限って、退職金の全部または一部を支給しないことを判例は認めている( 最判昭和45・6・4、最判昭和52・8・9など)。
2、懲戒解雇以外の場合
また、懲戒解雇(諭旨解雇含む)以外の解雇、退職の形式で従業員が退職した場合、原則として、使用者は退職金の支払いを拒むことはできない。
ただし、従業員に上記の著しい背信行為があったことが退職後に発覚した場合には、従業員の退職金請求権は権利の濫用として、許されない。
3、使用者の従業員に対する既払い退職金の返還請求
退職後に上記の著しい背信行為が判明した場合、既に支払った退職金を使用者に返還させる旨の条項は有効と解されている。
また、そのような返還条項がない場合にも、そのような背信行為が使用者に判明していれば、使用者は退職金を支払わなかったであろうことを理由に、使用者に従業員に対する退職金返還請求権を認める裁判例がある。
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