- 村田 英幸
- 村田法律事務所 弁護士
- 東京都
- 弁護士
対象:民事家事・生活トラブル
- 榎本 純子
- (行政書士)
労働者性の論点の意味
労働者かどうかは、個別的労働法では、労働契約法、労働基準法、労働者災害補償保険法などの適用があるかという点で問題となる。
なお、労働組合法などの集団的労働法では「使用者」は使用者及びその利益を代表する者などを含み、それと対立する関係での「労働者」であるから、ここでいう「労働者(従業員)」とは定義が異なる。
労働契約法では、労働者は、「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」(労働契約法2条1項)と定義され、労働基準法では上記に加えて、「事業」に使用されていることという要件が加わる(労働基準法9条)。
労働者災害補償保険法の労働者は、労働基準法と同一と解されている( 最判平成8・11・28)。
労働者に該当すれば、労働契約法や労働基準法などで定められた労働者の権利(例えば、解雇権濫用など)を主張できる。
例えば、使用者から、労務の契約を解除された場合、労働者であれば、解雇を争うことができ、従業員の地位確認請求・賃金仮払いなどの請求ができる。しかし、労働者ではなく、個人事業主であれば、労働法の適用はなく、別の争い方(例えば、下請法など)になる。従業員ではない取締役であれば、会社法の取締役解任の要件を満たすかどうかが問題となる。従業員兼務取締役の場合には、労働者と取締役の双方の争点が問題となる。
また、労働時間の規制を主張する場合や、解雇予告・未払い賃金・残業代・割増賃金を請求する場合、労働者に該当すれば労働基準法の適用が有り得るが、個人事業主や従業員兼務ではない取締役には適用がない。
就業規則または退職金規程に基づいて退職金を請求する場合、労働者に該当すれば、就業規則または退職金規程の適用により退職金を請求できるが、労働者でない場合には適用を主張できない。なお、取締役の退職金については、税法上取扱いが異なることもあって、別途、役員退職金規程を設けている会社も多く、従業員ではない取締役については、役員退職金規程により請求することとなる。
労働者であれば労働者災害補償保険法の適用を主張できるが、労働者でない場合には原則として適用がない。
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