インド特許法の基礎(第2回) (1) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第2回) (1)

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 インド特許法の基礎(第2回)  (1)

 ~外国出願に関する情報の通知について~ 

河野特許事務所 2013年7月9日 執筆者:弁理士  安田 恵

 

外国出願に関する情報の通知(第8条)について説明する。第8条はインド特許法における最も重要かつ特殊な規定の一つである。

 

 1. 第8条の規定の概要

(1)第8条は,表1に示すように2つの項からなり,大きく分けて2つの情報を要求している。

 

 一つ目の情報(第8条(1))は,外国出願の明細事項(出願国,出願日,出願番号,出願の状態,公開日,登録日等)を記述した陳述書(第8条(1)(a))であり,様式3(規則12(1))により提出する。また様式3には,当該明細事項を長官に随時通知する旨の誓約書((第8条(1)(b)))が含まれる。

 

 二つ目の情報(第8条(2))は,外国出願における拒絶理由通知書,拒絶査定,特許査定等のオフィスアクションの写し,登録又は拒絶されたクレーム,及びこれらの英語による翻訳文である。また,国際調査報告書及び国際調査見解書の写しも提出する。

 

 

 

表1 第8条の条文構造

 

条文

規定の概要

第8条(1)

(a)

外国出願の明細事項を記載した陳述書の提出

(b)

外国出願の明細事項を長官に随時通知する旨の誓約書の提出

第8条(2)

外国出願のオフィスアクション等の要求権限及び提出

 

 

 

(2)各提出書面の特徴

 

 様式3により提出する陳述書及び誓約書は,出願人が自主的に提出しなければならない。陳述書及び誓約書の提出期限は出願時から6ヶ月以内である(規則12(1A))。また,陳述書の提出後に,関連する外国出願を行った場合,その出願時から6ヶ月以内に陳述書を提出しなければならない(規則12(2))。更に,外国出願の明細事項に変更が生じた場合,登録時まで随時,更新された明細事項を長官に通知しなければならない。

 

 一方,オフィスアクション等の情報は,長官から要求があった場合に提出しなければならない。提出期限は,長官の要求時から6ヶ月以内である(規則12(3))。

 

 また,これらの情報の提供を怠った場合,異議申立理由(第25条(1)(h)),取消理由(第64条(1)(m))であり,侵害訴訟における無効抗弁理由(第107条(1))でもある。審査過程で第8条違反の瑕疵を包含したまま特許が登録になった場合,後にその瑕疵を治癒させることはできない。

 

 

 

表2 第8条が要求する各提出書類の特徴

 

 

第8条(1)

第8条(2)

提出書類

(a)陳述書及び(b)誓約書(Form3)

オフィスアクション等の写し及びクレーム並びにこれらの翻訳文

性質

自主的に提出

要求時に提出

期限

出願時から6ヶ月以内,

登録時まで随時(”from time to time”)

要求時から6ヶ月以内

違反

異議申立理由,取消理由,侵害訴訟における無効抗弁理由

異議申立理由,取消理由,侵害訴訟における無効抗弁理由

 

 

 

2.第8条(1)/Form3

 

(1)提出タイミングの例1

 

 外国出願の明細事項の提出タイミングの一例を図1に示す。出願人はインドにおける特許付与日まで(”up to the date of grant of patent in India”),外国出願の明細事項を書面で随時(”from time to time”)長官に通知しなければならない。出願人は,まず出願時に様式3による陳述書及び誓約書を提出する(提出①)。次に,出願時から6ヶ月のタイミングで明細事項に変更が生じた場合,更新された明細事項を提出する(提出②)。更に,追加で外国出願を行った場合,その出願日から6ヶ月以内に更新された明細事項を提出する(提出③)。

 

 更にまた,最初の審査報告(FER)の日から6ヶ月以内に更新された明細事項を提出する(提出④)。また,最初の審査報告の日から12ヶ月の時点で明細事項の内容に変更が生じていた場合,更新された明細事項を提出することが望ましい(提出⑤)。最初の審査報告の日から12ヶ月は,原則として特許出願を特許付与可能な状態にしなければならない重要な期限であり(第21条,規則24B(4)),この段階で審査結果を左右するような外国出願の明細事項に変更が生じている可能性があるためである。審査結果を左右する明細事項の通知を怠った場合,第8条違反になるおそれがある。更に,最初の審査報告の日から12ヶ月を越えて,ヒアリングが行われている状況において,外国出願の明細事項に変更が生じた場合も,更新された明細事項を提出することが望ましい(提出⑥)。最初の審査報告の日から12ヶ月を越えたこのタイミングであっても,審査結果を左右する明細事項の通知を怠った場合,第8条違反になるおそれがある。

 

 

 

図1 陳述書の提出タイミングの例1

 

 

 

(2)提出タイミングの例2

 

 外国出願の明細事項の提出タイミングの他の例を図2に示す。この例では,出願人はインド特許出願後,6ヶ月毎に外国出願の状況を確認し,明細事項に変更が生じていた場合,更新された陳述書を提出する(提出3-①,提出3-②・・・)。他の提出タイミングは例1と同様である。

 

 

  

図2 陳述書の提出タイミングの例2

 

3.第8条(2)

(1)第8条(2)の要求例

 審査官は最初の審査報告において,オフィスアクション等の写しを要求してくる。

審査報告における要求例

“Details regarding the search and/or examination report including claims of the application allowed, as referred to in Rule 12(3) of the Patent Rule, 2003, in respect of same or substantially the same invention filed in all countries outside India along with appropriate translation where applicable, should be submitted within a period of Six months from the date of receipt of this communication as provided under section 8(2) of the Indian Patents Act.”

 

(2)具体的な提出書類

 出願人は少なくとも主要特許庁,例えば欧州特許庁,米国特許庁,日本特許庁,中国特許庁,韓国特許庁で発行されたオフィスアクションの写し,特許又は拒絶されたクレーム,及びそれらの翻訳文を提出する必要がある(第8条(2))。翻訳文は機械翻訳で足りる。また,逐次訳である必要は無く,要点を英訳したものであっても良い。また,主要特許庁以外のオフィスアクションであっても,全て提出しておくことが望ましい。ただし,翻訳文の作成は大きな負担になるため,オフィスアクションの原文のみを提出しておき,審査官が必要であると判断した場合,速やかに翻訳文を提出する旨を意見書にて主張すると良い。

 また,PCT出願によるインド出願を行っている場合,国際調査報告書及び国際調査見解書も提出する。

 

(第2回へ続く)

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