第5章 事業承継と後見制度 - 家事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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第5章 事業承継と後見制度

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第5章 事業承継と後見制度

 経営者が事業承継を考える場合というのは、一般にある程度年齢を重ねた段階であり、今後、病気等により、事業承継対策を行うことができなくなる事態も考えておかなければなりません。

 また、事業承継対策には、高度な判断能力が要求され、判断能力が低下している場合には、せっかく築き上げた事業を他人に奪われてしまうことも起こりえます。

 そこで、このような事態に備えて、後見制度の活用が検討されます。

 後見制度としては、民法が規定する法定後見制度と任意後見に関する法律による任意後見制度があります。

 

第1 法定後見制度

1 法定後見制度の概要

 法定後見制度とは、本人が精神上の障害による事理弁識能力の低下を来している場合に、本人や一定範囲の親族等の申立てに基づき、家庭裁判所が本人の権利を保護する者を選任する制度です。

 本人の判断能力の程度に応じ、もっとも重度である場合が後見(民法7条、838条以下。家事事件手続法117条~127条)、中程度の場合が保佐(民法11条、876条以下。家事事件手続法128条~135条)、もっとも軽度である場合が補助(民法15条、876条の6以下。家事事件手続法136条~144条)、と三類型に分けられています。

 後見人、保佐人、補助人が選任された場合、その旨が登記されます(後見登記等に関する法律4条)。そして、本人、後見人、保佐人、補助人等および本人の配偶者・4親等内の親族等一定の者は、登記事項証明書の交付を請求することができます(後見登記等に関する法律10条)。なお、取引の相手方は、登記事項証明書の交付を請求することはできませんから、本人側の者が登記事項を示し、取引の安全が図られることになります。

 

2 法定後見制度利用の費用

 申立ての費用として、1万円程度の裁判所実費、判断能力を鑑定するための鑑定費用5~15万円程度がかかります。この鑑定費用は家庭裁判所への予納金です。なお、事前に申立ての際に添付する医師の診断書等の費用は別途用意しておかなければなりません。

 また、後見人、保佐人、補助人には、家庭裁判所への申立てにより、家庭裁判所の定める報酬を受領する権利が与えられています(民法862条、876条の5第2項、876条の10第1項)。後見人等の報酬額は、家庭裁判所が後見人等から後見事務の報告を受け、本人の財産の状況等を勘案して、家庭裁判所が判断して決定することになっています。具体的な報酬額は一切公表されておらず、個々のケースによって異なります。筆者の経験では、毎月一定の家賃収入(年間約500万円)と支出があった成年後見の事例で、弁護士が成年後見人となり、その報酬は月額5万円でした。

【後見・保佐・補助の比較】

 

後見

保佐

補助

対象者

精神上の障害により事理弁識能力を欠く状況にある者

精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分である者

精神上の障害により事理弁識能力が不十分である者

審判に際して本人の同意

不要

不要

必要

取消しの対象

日用品の購入その他日常生活に関する行為以外の法律行為全て

民法13条1項に定める行為および2項の審判により同意を要するとされた行為

民法13条1項に定める行為のうち家裁の審判により同意を要するとされた行為

保護者の代理権の範囲

財産に関するすべての法律行為

家裁の審判により定められた特定の法律行為

家裁の審判により定められた特定の法律行為

保護者の同意権の有無

なし

あり

あり

追認

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