相続その8(相続の3つの方法) - 家事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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対象:民事家事・生活トラブル

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相続その8(相続の3つの方法)

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相続
■相続の3つの方法

相続には3つの方法があります。

1、単純承認
被相続人の有した権利義務をそのまま相続することです。
次の場合には、法定単純承認といって、限定承認・相続放棄をした場合であっても、被相続人の権利義務を相続します。


(1) 相続人が相続財産の全部又は一部を処分した場合。ただし、保存行為及び民法602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りではありません。
(2) 相続人が相続開始時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかった場合
(3) 相続人が、限定承認又は相続放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産目録中に記載しなかった場合。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りではありません。


2、限定承認
相続開始を知った時から3ヶ月以内に、被相続人の積極財産(資産)の範囲内でのみ、消極財産(負債)を支払う旨を家庭裁判所に申述する方法です(民法922条、915条)。相続人が数人いる場合には、限定承認は、共同相続人全員が共同してのみすることができます(民法923条)。3ヶ月以内に相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認する旨を申述し(民法924条)、限定承認をした後5日以内に、全ての相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内(2ヶ月以上)に請求の申し出をすべき旨を公告しなければなりません(民法927条)。相続人が数人いる場合には、共同相続人の中から相続財産管理人が家庭裁判所によって選任され、相続財産管理人の選任後10日以内に公告をしなければなりません(民法936条)。

3、相続放棄
相続開始を知った時から3ヶ月以内に、全部相続しない旨を家庭裁判所に申述する方法によって、相続しないこととするものです(民法915条、938条)。
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
限定承認と異なり、共同相続の場合であっても、単独ですることができます。


●被相続人にかなり借金があることがわかりました。どうすればよいですか?
被相続人に資産があるのであれば、積極財産の範囲内でのみ弁済する限定承認の方法が得策と言えます。ただし、共同相続の場合には、全員で限定承認することが必要です(民法923条)。
また、相続放棄をすることもできます。家庭裁判所の実務では、「相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内という期間について、相続債務があったことが判明した時と解しており、被相続人の死亡から3ヶ月を過ぎていても、後から借金があったことが判明したような場合には、相続放棄をすることを認めています。配偶者と子が相続放棄をすれば、直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となり、兄弟姉妹が放棄したければ、相続放棄をすれば、債務を承継しないで済みます。なお、相続放棄は代襲相続の原因とはなりません(民法939条)。

●相続しないことは可能ですか?
限定承認、相続放棄により相続しないことは可能です。相続人の債権者が、相続すれば相続財産を承継することができたはずであることを理由に、債権者取消権(民法424条)を行使することはできません(最判昭和49年9月20日)。相続放棄をすることは、一身専属的な権利だからです。
また、遺産分割により、共同相続人のうちの特定の相続人が相続しないことを定める協議を成立させることも可能です。