相続その4(相続財産) - 家事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
弁護士

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対象:民事家事・生活トラブル

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相続その4(相続財産)

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相続
■相続財産

遺骨の所有権は?
遺骨は、相続人の所有に帰属します(大判大正10年7月25日)。例えば、親(祖父母)、配偶者(父親)、子がいる場合に、片方の配偶者(母親)が死亡した場合には、配偶者(父親)及び子が遺骨の所有権があります。親(祖父母)には、遺骨の所有権はありません。

香典は相続財産に含まれますか?
香典は喪主に対する贈与と考えられており、相続財産に含まれません。
同様に、香典返しも、相続財産に含まれないと考えられます。

被害者が交通事故で即死の場合の損害賠償請求権は相続されますか?
被害者が即死した場合に、相続を考えることができないようにも思われますが、判例は、観念上被害者に損害賠償請求権が成立し相続される(大判大正15年2月16日)などの理由により、相続されると説明しています。

生命保険・傷害保険の保険金は相続財産に含まれますか?
保険金受取人の指定が相続人となっている場合・約款で保険金受取人が相続人とされている旨が定められている場合であっても、生命保険・傷害保険の保険契約の効力発生と同時に、相続人の固有財産となり、相続財産となりません(生命保険につき最判昭和40年2月2日、傷害保険につき最判昭和48年6月20日)。また、特段の事情がない限り、特別 受益、遺留分減殺の対象にもなりません(最決平成16年10月29日)。
ただし、相続税の計算の上では、保険金も相続財産として扱われ、みなし相続財産と呼ばれています。

死亡退職金は相続財産に含まれますか?
死亡退職金の受給権は相続財産に属さず、受給権者たる遺族が、自己固有の権利として取得するとするのが判例です(最判昭和55年11月27日)。

公営住宅の使用権は当然に相続されますか?
公営住宅は、公の目的で設置され一定の条件の下に使用が許可されるものですから、通 常の借家権と異なり、公営住宅の入居者が死亡した場合には、その相続人は、使用権を当然に承継するものではありません(最判平成2年10月18日)。

借地・借家の相続の場合に名義書き換え料を請求されましたが?
借地権・借家権は、当然に相続の対象となります。したがって、名義書き換え料を請求される理由はないと言えます。世上、借地契約の相続に当たって、名義書き換え料を請求されたなどと聞きますが、支払う必要はありません。

祭祀に関する権利
系譜、祭具、墳墓の所有権は、慣習又は被相続人の指定にしたがって、祖先の祭祀を主催すべき者が承継します。慣習が明らかではない場合には、家庭裁判所が定めます(民法897条)。したがって、墓の所有権などは、相続、遺産分割、遺留分とは関係ありません。

同居相続人が被相続人の建物を無償で使用しているが?
共同相続人の1人が相続開始前から、被相続人の許諾を得て、遺産である建物に被相続人と同居していた場合には、被相続人死亡から少なくとも遺産分割終了時までの間は、被相続人の地位 を承継した他の相続人を貸主、同居相続人を借主とする無償使用貸借契約があるとされています(最判平成8年12月17日)。したがって、他の共同相続人は、同居相続人が被相続人の建物を無償で使用することを拒否することはできません。

預金債権はどうなりますか?
可分債権が遺産に含まれている場合には、法定相続分に応じて、各相続人が相続します。したがって、預金債権は、法定相続分に分割されて相続します。ただし、銀行は、相続発生した場合には、通 常、相続人全員の印鑑証明書を添付した実印を押捺した払い戻し書類がないと払い戻しをしない旨を約款で定めていますから、その約款に従わなければ、預金の払い戻しを受けることはできません。

金銭は当然に分割されますか?
相続開始時にある金銭を相続財産として保管している他の共同相続人に対して、遺産分割までの間、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません(最判平成4年4月10日)。金銭は、可分債権と異なり、動産として扱われる(民法86条2項)からです。

借入金債務はどうなりますか?
借入金債務は、可分債権といって、その性質上分割しても問題がない性質の債権ですから、共同相続人は、法定相続分に応じて、当然に分割され、相続します。
遺産分割協議で資産に応じた負債を承継する旨を定めることがありますが、借入金の場合には、当然に分割されて相続されますので、債権者の同意がない限り、当然には債務の負担を免れることができません。なお、限定承認をした場合には資産の範囲内でのみ弁済すれば足ります。また、相続放棄をした場合には、最初から債務を相続しません。

身元保証契約は相続されますか?
身元保証契約は一身専属性のものと解されています。そこで、例えば、親が甥の就職に当たり勤務先の会社に対して身元保証契約をした場合では、甥が会社のお金を横領したような場合の損害賠償しなければならない場合について、その親の子供は、いとこである甥の身元保証契約を相続しません。ただし、被相続人の生前に既に損害賠償請求権が具体化していた場合には、損害賠償債務を法定相続分に応じて、当然に分割相続します。

連帯保証契約は相続されますか?
責任の限度額・保証期間の定めがある場合には、連帯保証契約は相続されます。責任の限度額につき相続人の法定相続分に応じて分割され(可分債務)、相続人は、相続分に応じた金額を主債務者と連帯して支払う義務があります(最判昭和34年6月19日)。
これに対して、責任の限度額及び保証期間の定めのない継続的売買取引についての連帯保証契約は、一身専属性のものと解され、相続の対象とはなりません(最判昭和37年11月9日)。ただし、被相続人の生前に具体的な保証債務額が生じていた場合には、その保証債務額を法定相続分に応じて分割された債務を相続し、本来の主債務者と連帯して支払う義務があります。