「中小会計指針」各論~その4~ - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

山本 憲宏
山本公認会計士事務所 所長
滋賀県
公認会計士
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「中小会計指針」各論~その4~

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今日は「中小会計指針」の各論の解説の続きです。

 

今回も、「貸倒損失・貸倒引当金」の続きです。

今回は、主に貸倒引当金について解説していきます。

 

まずは貸倒引当金に関して「中小会計指針」の本文では次のように記載しています。

 

・貸倒引当金は、以下のように扱う。

(1) 金銭債権について、取立不能のおそれがある場合には、取立不能見込額を貸倒引当金として計上しなければならない。

(2) 取立不能見込額については、債権の区分に応じて算定する。財政状態に重大な問題が生じている債務者に対する金銭債権については、個別の債権ごとに評価する。

(3) 財政状態に重大な問題が生じていない債務者に対する金銭債権に対する取立不能見込額は、それらの債権を一括して又は債権の種類ごとに、過去の貸倒実績率等合理的な基準により算定する。

(4) 法人税法における貸倒引当金の繰入限度額相当額が取立不能見込額を明らかに下回っている場合を除き、その繰入限度額相当額を貸倒引当金に計上することができる。

・貸倒引当金の計上は、差額補充法によることを原則とし、法人税法上の洗替法による繰入額を明らかにした場合には、法人税法に規定する洗替法による処理として取り扱うことができる。

 

貸倒引当金の計上については、前々回のブログにて解説しましたので、今回のブログでの解説は省略させていただきます。

「取立不能のおそれがある場合」とは、債務者の財政状態、取立のための費用及び手続の困難さ等の要素を総合的に判断したときに回収不能のおそれがある場合をいいます。

取立不能見込額の算定方法については、「中小会計指針」と法人税法上の基準による算定方法が異なっています。そして、以前は、法人税法上の基準による算定方法においては、法人税法に規定する法定繰入率を乗じた金額が繰入限度額とすることができていましたが、現在はこの規定は中小企業等の貸倒引当金に特例として残っているだけです。ここに、法定繰入率による繰入ができる法人とは、資本金1億円超の普通法人及び大法人との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人並びに相互会社及び外国相互会社以外の法人をいいます。

「中小会計指針」による原則的な算定方法によると、債権の区分を債権者の財政状態及び経営成績に応じて一般債権か貸倒懸念債権か破産更生債権等かに区分することを求めています。この区分を行うためには、債権者の信用調査を定期的に行うことが求められてきますが、実務的にこの債権者区分を多くの中小企業が行うことは難しく、法人税法上の基準による算定方法によらざるを得なくなるというのが実情でしょう。

なお、一般債権とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいい、貸倒懸念債権とは、経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権をいいます。破産更生債権等とは、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権をいいます。

法人税法に規定されている個別評価金銭債権とは、更生計画の認可決定により5年を超えて賦払いにより弁済される等の法律による長期棚上げ債権並びに債務超過が1年以上継続し事業好転の見通しのない場合等の回収不能債権及び破産申立て、更生手続等の開始申立てや手形取引停止処分があった場合等における金銭債権をいいます。債務超過が1年以上継続し事業好転の見通しのない場合等の回収不能債権についても、先方から決算書を入手しておく必要があるため、相手先が非上場会社の場合には貸倒引当金の計上が難しいと思われます。

ただ、法人税法上の基準による貸倒引当金の計上が難しくとも貸倒懸念債権になるおそれが高いと感じたならば、貸倒引当金の計上を行うべきだと考えます。ただし、この場合において、法人税法上は貸倒引当金の計上が認められない可能性がありますので、損金におとすことができない可能性があります。

 

最後に、「貸倒損失・貸倒引当金」に関する会計の諸規則についてあげさせていただきます。

会社法においては、会社計算規則第5条第4項におかれています。また、表示についての規定は、会社計算規則第78条、第103条におかれています。

会計諸規則としましては、企業会計原則 第三・四、注解17におかれているほか、金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号) 27項、第28項に規定がおかれています。また、金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号) 122項~第125項に関連する規定がおかれています。

法人税法に関しては、法人税法第52条並びに法人税法施行令第96条及び法人税基本通達11--1に規定がおかれています。

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