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菅原 茂夫
菅原茂夫税理士事務所 代表
東京都
税理士

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伊勢神宮と人間のつながり

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今年は伊勢神宮の「式年遷宮」の年です。正殿などを丸ごと造り替え神さまに引っ越し願う二十年に一度の祭典は、私たちの生き方を見直す機会ともなります。

たくさんの人から親しみを込めて「お伊勢さん」と呼ばれる伊勢神宮は、全国の神社の聖地とされ、正式な名を「神宮」といいます。

昔の人々にとって「お伊勢さん」とは、国土のほぼ真ん中で、文化や食の発達した地だからこそ、伊勢へのお参りと旅は、あこがれだったと考えられます。

北から南から全国の老若男女が伊勢を目指した「おかげ参り」が周期的にはやりました。最盛期の文政年間(一八三〇年ごろ)の参詣者は五百万人ともいわれ、江戸から歩いていっても十五日はかかったそうです。

今年は六十二回目となる式年遷宮です。年に千五百もの祭りがある神宮。その中でも最も重要で、その永続性をも左右する祭りが、二十年に一度の、遷宮なのです。

式年とは「定めの年」という意味。千三百年ほど前、持統天皇の代から続く制度とされます。

内宮、外宮の社殿をそっくり造り替えて、神さまに東西入れ替えで、お引っ越し願う。内宮は、太陽に例えられる天照大神が祭られています。外宮に祭られているのは、米をはじめ衣食住の暮らしをつかさどる豊受大神です。

神々の服飾品や調度品とされる御装束・神宝もすべて、かつての優れた技術、素材で替えます。その数は千六百点余。携わる宮大工や工匠、芸術家らは数え切れないほどの人数に上るでしょう。

では、なぜ二十年ごとなのか。

諸説ありますが、今の私たちが置かれた時代状況と重ね合わせると、宮大工などの伝統技術を次代に継承するには二十年周期が適切な区切り、との考え方がとても説得力があるように思われます。

神が新しい社殿へ遷られる、もっとも重要な儀式「遷御の儀」は十月の予定です。お伊勢さんの遷宮は、実に八年前から始まっており、三十二の祭りと行事を重ね、やっと一回果たされるのです。

書物などに目を通すと、お伊勢さんを訪ねた国内外の人たちの多くが「懐かしさ」を口にしていることがわかります。

作家のC・W・ニコルさんも二十数年前、初めて神宮の森に包まれたとき

「生まれる前の感覚になった」

と言います。英国ウェールズ生まれですが、ケルト人の血が流れています。宗教は土着信仰のドルイド教です。

「森とか水とか太陽とか、先祖とかの中に神を知覚していた」

自然との共生こそが神宮の、そして遷宮の基本的姿勢でしょう。

「だから受け入れられる。それが何世代も延々と続く例はそうはない」

と、ニコルさんは話します。

社殿は、ヒノキの白木造りで屋根もかやぶきと、いたって簡素な造り。いわば古代のお米の倉の形で、南方に多い高床式です。

内宮、外宮の古い柱は宇治橋の鳥居となり、さらに二十年後には「桑名の七里の渡し」の鳥居に生かされるなど、用材は可能な限り再利用されます。全国の神社などからも引く手あまたです。

成熟した私たちの社会。別の面から見れば低成長や閉塞感に悩む社会ともいえます。次代に、たすきが渡しにくい社会です。東日本大震災も手ひどい契機となり私たちは日本人としての生き方、ありようを問い直し始めています。

そんなとき、二十年ごとに繰り返される遷宮から、開けるべき扉の鍵が浮かび上がってくる。

それは、繰り返し、つまり「循環」の大切さであり、循環による「再生」です。その鍵で開ければ社会、経済、環境や、人間自身の「持続可能性」が見えてくるともいえるのではないでしょうか。

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