還付実例(1) ~見上げれば高圧線~

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公開日時
2011/05/06 13:00

フジ総合グループは、18年で1,500件以上の相続税還付・減額実績を誇る相続・不動産に特化した専門事務所です。

それらの実務経験の中から、いくつか実際に還付・減額になった実例をご紹介しようと思います。本コラムをお読み下さっている皆様のご参考になれば幸いです。

 

今回は、首都圏郊外で不動産管理業をなさっているI様のケースです。I様は幹線道路沿いに数多くの土地を所有し、ファミリーレストランや眼鏡・古本の大型チェーン店に不動産を賃貸し、不動産所得を上げています。

I様のご自宅は、幹線道路から1本奥まった場所にある800平方メートル程度の敷地で、私が初めて訪問した際にも、敷地の真上を堂々と高圧線が通っており、その圧迫感がとても印象的でした。

高圧線の使用電圧と高さによって、高圧線下の土地には建築制限が働きます。相続税財産評価においては、一般に建物の建築がまったくできない土地については50%の減価、建物の建築は可能だけれども建物の高さ制限や利用制限等が働く土地には30%の減価が認められます。(この規定は、市街化調整区域内の農地や山林等、初めから建物が建てられないことを前提に評価されている土地には適用できません)

通常、地役権が設定されている場合は、土地の全部事項証明書の乙区欄に「地役権設定」との記載があり、建造物の築造禁止や、危険物の貯蔵の禁止、植栽等の禁止等の利用制限が記載されているので一目瞭然です。

例え、地役権等の設定がない場合でも、お互いの意思表示だけで成立する債権契約があるはずですので、確認してみましょう。高圧線に関して言えば、「送電線架線保持に関する契約書」というものが電力会社と個人の間で締結され、その契約内容によってやはり土地の利用制限が細かくなされています。

 

当然、I様の相続税申告書にも、高圧線下の土地の減価が織り込まれているものと思いきや、まったく考慮されていません。誰が見てもすぐに気付くような減価を税理士さんが見落としていることにも驚きましたが、それをI様にご説明すると、I様はまた別の意味で驚かれたようです。

 

実はI様、当事務所にご相談頂く数ヶ月前に税務調査を受けていました。その際、預貯金等を厳しく調べられ、いくつかの孫名義の預貯金が相続財産と判断されてしまい、約300万円の修正申告をさせられていたのです。

その税務調査の際、税務署員は自宅の上空を見上げて、自宅敷地上に堂々と張られた高圧線を見ながら入ってきたそうです。当然、高圧線の存在には気づいていながら、税務調査中、一部の土地評価についての質問はあったものの、肝心の自宅敷地については読み飛ばし、何の指摘もしてくれなかったとのこと。

以前アップした、本コラム「相続税が還付される主な要因(3)~相続税申告制度の話~」でも触れましたが、税務調査において、税務署員は税額が増える事項については積極的に指摘しますが、逆に税額が減る事項については指摘してくれない場合がほとんどです。

 

結果的に、I様には、高圧線下で自宅敷地に利用制限がかけられている場合の30%減価を織り込んだ評価意見書を作成し、還付の手続きを行ったところ約400万円の相続税が還付されました。

 

よく「税務調査に入られると、税務署は必ずお土産を持って帰る」とは言いますが、仮に税務署員が税務調査でこの減額要因について指摘してしまうと、約300万円を追徴課税できるどころか、逆に100万円の置き土産(還付)をしなくてはならなくなるため、敢えて指摘せずにいたのかも知れません。

 

例え、税務調査が入って修正申告をしたからと言って、あなたの納めた相続税額が「適正」だとは言えない良い例かも知れません。

このコラムの執筆専門家

(東京都 / 不動産コンサルタント)

フジ相続税理士法人/株式会社フジ総合鑑定 不動産鑑定士/フジ総合グループ代表

「頼まれ事は試され事!」の精神でお客様に満足を与えたい。

IT化社会の進展により、人と人との繋がりが、年々薄まってきている印象を受けます。しかし、こんな時代だからこそ、機械的に仕事を行うのではなく、人間力を養い、何でもお客様の立場に立って考え、お客様目線で問題を解決していきたいと思います。

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