小規模宅地特例の「主として居住の用」への武富士事件の影響

-

公開日時
2011/03/31 14:05

山岡美樹税理士が書かれた「武富士事件の今後の実務への影響第2回

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」が

国税速報6159号(平成23年3月28日発行)に掲載されている。

 

武富士事件(最高裁平成23年2月18日判決、TAINSコードZ888-1572)

については、2月24日に、すでにご紹介させて頂きましたが、

実務に与える影響は、かなり大きなものになりそうです。

 

「例えば、被相続人に「居住の用に供されていた宅地」(生活の拠点と

していた宅地)が複数個所ある場合の小規模宅地等の特例の対象となる

特定居住用宅地等は、一の者の「居住の用に供されていた一の宅地等」は

一か所に限られるという趣旨から、被相続人が「主としてその居住の用に

供していた一の宅地等」が本件特例の対象となります。」(山岡論文6頁)

「相続税の申告書は、被相続人の住所地を管轄する税務署長に申告を

しなければならず(カッコ内略)、仮に被相続人の生活の拠点が複数個所

ある場合、(略)「反対の解釈をすべき特段の事由がない場合、客観的に

生活の本拠たる実体を具備している一定の場所を判断(武富士事件では、

日数の多寡により客観的に判断しています。)する」こととなります。」

(山岡論文7頁)

 

そうすると、平成20年10月2日裁決(裁決事例集76集450頁、

TAINSコードJ76-4-25)のように、長期的に老人ホームに入居した後、

亡くなったケースでは、生活の本拠は、入居前に居住し、相続時に空き家に

なっている旧宅にはなく、老人ホームにあるから、小規模宅地等の特例は

適用されないことになろう。

 

それでは、長期入院で1年以上家を留守にし、帰宅の可能性がない

ケースではどうなるのだろうか。

 

武富士事件は、生活の本拠の判断を日数の多寡に求めていますから、

小規模宅地等の特例を適用して、相続税の節税に努めたいのであれば、

老人ホームへの入居はもとより、長期入院さえ、在宅介護を選択せざるを

得なくなる危険性を孕んでいることになりはしないか?

 

山岡論文を読み、勉強不足を恥じながら、ゾッとしました。

この点について研究を深めて、論文にまとめなければなりませんね。

このコラムの執筆専門家

平 仁(税理士)

ABC税理士法人 税理士

企業の税務対策、自計化サポート!「下町の頼れる税理士」です

刻々と変わる経済情勢や法律に対応しながら、体系的な法律知識を持って、企業様の税に関する不安を解消し、安心できる節税対策を行います。お客様と直接お会いし面談しながら、企業内での自計化など、適切な会計処理を含めた税務指導を行っています。

平 仁
遺産相続全般について分からなくなったら「相続 専門家プロファイル」へご相談ください。
最適な相続の専門家を無料でご紹介いたします。 相談内容を入力する

※専門家の紹介、また、専門家からの提案・見積りは、無料でお使いいただけます。実際にお仕事を発注する段階で金額などは専門家と個別にご相談ください。