遺産分割協議書の効力について

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遺産分割協議書を作成しています。
私(二男)と母と長男の3者にてかわす遺産分割協議書(父の遺産)で不動産と預貯金などの分割と合わせて、
「長男から母に毎月10万円を振り込む、振り込まない場合は貸家の名義を母に変更する」といった内容の文言があります。貸家を長男が相続する見返りとして母への生活費の振り込みを明記したものです。この場合、長男が振り込まなければ貸家の名義を母に変更をすることは可能でしょうか?(当然、長男は拒否します。)また、母が振り込むように訴訟を起こした場合どうなりますか?
「長男から母に毎月10万円を振り込む」だけの文言の場合は結果が異なるのでしょうか?
条件付きの遺産分割協議書の効力はどこまででしょうか?
よろしくお願いします。

相続人に債務を負担させる代償分割について

2014/02/08 14:27

 「長男から母に毎月10万円を振り込む」という部分は、貸家を長男が相続する見返りとして母への生活費の振り込みを明記したとのことですので、現物を相続人の一人が取得しつつ、他の者に対する債務を負担させるという「代償分割」の一種ということになると思います。それ自体は有効な条項だと思います。この条項を理由とする母親から長男に対する支払いの請求は、訴訟になれば認められる可能性は高いと思われます。

 問題はその債務が履行されなかった場合ですが、最高裁は、債務不履行を理由とする遺産分割の解除は認められないとしつつ、全員の合意によって遺産分割を合意解除し改めて分割することを許容していますので、これを踏まえて考える必要があると思われます。

 まず、「振り込まない場合は貸家の名義を母に変更する」との条項がなかった場合、債務不履行となっても、遺産分割を解除できないため、長男が遺産分割の合意解除に応じない限り、単に母親が長男に対して分割協議に沿った債務の履行を求めることによって解決することになります。母親が裁判を起こして勝訴をしたがそれでも長男が支払いをしないという場合には、長男の所有物である貸家等に対して強制執行をする余地はあると思われますが、その場合は原則的に競売で処理されることになります(競売代金の中から発生済みの未払金の回収をすることになります。母親が競売で落とさない限り母親が所有権を取得できませんし、競売で落とすにはそれなりの費用がかかります。)。
 
 次に、「振り込まない場合は貸家の名義を母に変更する」との条項がある場合には、債務が履行されなかった場合の分割の内容についても当事者間で予め合意してあることになります。分割協議を一部解除の上で改めて分割する内容が予め合意されているもの、あるいは解除条件・停止条件が付されているだけで、有効な条項とみることができるのではないかと個人的には思いますが、裁判官によってはこのような条件付きの遺産分割などは法律関係の安定性を害するなどとして無効と判断するかもしれません。
 また、有効な合意であったとしても、いったん長男名義になっている貸家の登記名義を母親に移すためには、長男の協力が得られない限り、裁判をして判決を取らざるをえないでしょう。

 なお、遺産分割の方法の一つとして信託の利用も考えられなくはないと思いますが、かなり専門的ですし、第三者を受託者とするのであれば通常、費用が別途発生することになります。

 協議書の原案を作られましたら、一度文面全体を専門家に見てもらうことをお勧めします。また、公正証書にすることも検討されるとよいと思います。
 大阪・南森町の弁護士、酒井が回答しました。

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