小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ仕事の「不安」と「不満」
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会社を辞めて独立、起業したというある女性のブログが目にとまりました。
起業してからのエピソード、起業して初めて気づいたこと、その他苦労話が書かれていました。
私自身が会社員と事業主との違いで感じてきたこと、独立してから経験してきたこととの共通点がいくつもあったので、自分の経験と重ねながら興味深く見ていました。
この人も独立して起業した多くの人たちと同様に、独立したての頃はなかなか仕事が受注できず、自分なりにいろいろ工夫はしてみるものの、なかなか結果に結びつかず、それまでの収入が大きく減ったり途絶えたりという経験をして、毎日が不安で不安で仕方がなかったそうです。
独立するからには、そういうことが起こり得るという覚悟も必要ですし、またそうならないように、いろいろな手当てをしておく必要があります。生活資金も含めてお金を用意する、顧客先や仕事を得られる場所を事前に確保しておくなどがありますが、すべて思い通りに行く訳もなく、「不安」というものは常について回ります。
そんな中にあったこの人の言葉で、とても共感したものが一つありました。
それは、「独立したことで“仕事の不安”はものすごく増えたけど、同時にそれまでたくさんあった“仕事の不満”はまったくなくなった」というものです。
会社勤めの頃は、自分のやりたくない仕事だったり、嫌いな上司だったり、職場環境であったり、いつも何かしら「不満」を感じていたが、起業してからはそれがまったく無くなったそうです。「“不安”はあっても“不満”はなくなった」と書かれていました。
これは自分の経験に照らしてみてもまったく同じで、会社員時代は、自分の力だけではどうしようもない「不満」が常に先にあり、そのために最後は他責にできてしまう部分がありました。
ただ、これは独立、起業などをすると、良くも悪くも自分の思い通りなので、これらの「不満」は一切なくなり、かわりに先が見えないことによる「不安」が大きく増えていきます。この「不安」を解消するには、少しでも先の見通しが立つように、地道に行動し続けるしか方法はありません。
一般的に見ていると、会社勤めの人は、会社の愚痴を含めて「不満」を語ることが多く、経営者は様々な「不安」を抱えていることが多い気がします。
ここで思うのは、「仕事の不安」と「仕事の不満」の間には、トレードオフの関係性が結構強いのではないかということです。もしそうであれば、「仕事の不満」を減らしたければ、「仕事の不安」の比率を高めればよいということになります。ここでいう「不安」とは、“先行きがどうなるのか想定できない”という意味です。
これは起業などの大げさなことではなく、会社の中でできることもたくさんあるはずです。例えば「やったことがない仕事に取り組んでみる」「話したことがない人と話してみる」「知らない場所に行ってみる」など、思いつくことはいろいろあります。
私は「“不安”は自分次第で解決できるが、“不満”はそうはいかない」と思います。
「仕事の不満」の多い人の方が、自分の力ではどうにもならない閉塞感が強く、仕事を通じての幸福感が薄いように感じます。必ずしも自分の意思で決められないことが多ければ多いほど、そんな気持ちになってしまうのは仕方がないでしょう。
一方の「仕事の不安」は、うまくいくかわからない、失敗するかもしれない、見通しが立てられないなど、先行き不透明なことがそれを感じる主な理由です。
この「どうなるかわからないから“不安”だ」という気持ちは、見方を変えれば「どうなるかわからないから“希望”がある」ともいえます。
自分の不安解消を他人に委ねても、他人が思い通りに対応してくれるとは限りません。不透明感は変わらず、たぶん不安は解消されませんから、少しでも不安を減らすには、自分なりに活動するしかありません。他人のせいにできないことが多くなり、その結果として「不満」は減っていきます。
未知のこと、先行きがどうなるのかわからない「不安な仕事」は、実は「希望に沿った面白い仕事」になるかもしれません。
そんなことにあえて取り組んでみると、「仕事の不満」は減らすことができるのかもしれません。
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