小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「私語厳禁」の職場を見て思ったこと
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仕事中の私語について、あなたはどう思われるでしょうか?
職場の雰囲気を和ませるような、ほどほどの内容のものを、ほどほどの時間で行うなら、一概に悪いものだとはいえないでしょう。
しかし、中にはいつまでもダラダラと話し続ける時間のケジメが無いもの、仲間や会社の悪口、不快と思う人もいるであろう下品な話、その他不適切な内容のもので困るようなことはあるでしょう。
リーダーやマネージャーの立場であれば、できるだけ自由にさせてやろうとは思っても、度が過ぎていて注意せざるを得ないようなこともあるでしょう。ただ、良し悪しの判断には個人差もありますし、相手によって注意のしかたも違ってくるでしょうから、なかなか難しいところがあるのではないでしょうか。
真面目に考えるほど扱いが難しい「仕事中の私語」ですが、私がうかがったある会社で、仕事中の「私語厳禁」というところがありました。システム保守・運用会社のある一つの部署でしたが、そこの部門長が決めたことだったようです。
その部門で担当している業務内容は、継続的な集中力や注意力が必要で、確かに私語をしていることはあまり好ましくない感じはします。
ただ、机の配置は、個人が黙々と作業する工場のラインのように、人と人との距離が離れている訳でもなく、デスクが並んですぐ隣に人がいるような、多少の雑談は当たり前にありそうな一般的なオフィスの環境です。にもかかわらず、少しでも話をしている様子が見られると、部門長が自ら飛んで行ってすぐに注意をしてやめさせています。
私語禁止を始めたばかりの頃は、「仕事の話をしているのに」と反発する者もいたようですが、この部門長は、「そういう話は会議か打ち合わせの時に済ませろ」と問答無用の対応をしています。
その結果、私が知っている一般的な会社からすれば、ちょっと驚くような静けさですが、この部門長は、あくまでそれが当然という考え方のようです。
この様子を見ていて気になったのは、やはり社員同士のコミュニケーションの総量が、圧倒的に少ないことです。
昼休みに入ってこれから食事というような時でも、お互いに会話を交わさず、個別にぞろぞろ移動していきます。仕事が終わってからの帰り道でも、みんな何となく口数が少なく、部外者の私の目には、みんなが何となく沈んでいるように見えます。
本人たちは、あまり自覚していないようですが、就業時間をずっと無言で過ごしている訳で、それが生活の中の多くの時間を占めていますから、とにかく話をしないでいることに慣れてしまっているようです。
私が思ったのは、こうやってコミュニケーションを極端に制限すると、不要なものや重要でないものだけが減る訳ではなく、必要なものや重要なものも、同じように減ってしまうということです。
コミュニケーションが減れば、お互いが意思疎通をしなくなり、仕事上の協力関係も減り、ミスや行き違いは確実に増えます。
こう考えると、仕事中の私語もある程度は必要なものとして、状況に応じてうまく活用していくことが、一番良い方法のように思います。
良し悪しの線引きは確かに難しいですが、「私語厳禁」の会社の様子を見ていると、私は適度な私語も必要なのではないかと思います。
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