小笠原 隆夫(経営コンサルタント)- コラム「その制度や仕組みは、本当に会社に合っているか?」 - 専門家プロファイル

小笠原 隆夫
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。

小笠原 隆夫

オガサワラ タカオ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
ユニティ・サポート 代表
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その制度や仕組みは、本当に会社に合っているか?

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社員にやる気を出させるヒントになるエピソード集 現場の事例・私の体験 2019-01-29 08:00

 企業にはいろいろな制度や仕組みが存在し、そこにはユニークなものもたくさんあります。

 例えばグーグルでは、社員が仕事の創造性を維持するため、できる限り組織階層をつくらず、仕事の管理をしないことを実践しています。

 また、「20%ルール」といって、会社と社会をよくする目的であれば、就業時間の20%を、個人的に好きなテーマに割いてもいいというルールがあります。会社の考え方をよく反映していると思います。

 

 私がお話をうかがったある会社の社長は、新たに「提案制度」の導入を考えているそうです。

 「現場の意見を吸い上げて問題解決につなげる」という一般的な目的とともに、自分なりの意見を考えて発信することで、「自律性や積極性を育てる」「今起こっている課題を他人任せにせずに、自分のこととして考える」「自分から発案させることで、その後の行動まで責任を持たせる」「行動力、実行力につなげる」などの意図があるそうです。

 社長の知人の会社が、こういう制度を取り入れていることを耳にして、自社の現状への問題意識から、自分たちもやってみようと思ったようです。

 

 社長は、自分の意図や狙っている効果をかなり熱心に話すので、私は「とりあえず3カ月後にやってみて、改めて検証しましょう」と言いましたが、正直言って、私はこの会社の「提案制度」は、今のままでは定着しないと思っています。なぜかというと、この会社の企業風土が、提案にはなじまないからです。

 

 社長はオーナー経営者で、会社での判断や決裁事項は、現状ではすべて社長に集約されています。良くも悪くも、社長がうんと言えば話が通るし、首を横に振る限りは何も前に進みません。

 ですから、いかにして社長の意向に沿うかが、この会社で仕事を進める秘訣になります。意向に沿わないことは、いくら提案しても無駄だということを、社員はみんな身にしみてわかっています。

 そんな企業風土ですから、自律的な志向の人にとっては、息苦しい環境であることは間違いありません。自律的な人材は辞めてしまいがちで、今いる社員は、上からの指示に従順な人材がほとんどです。

 

 ここからは想像ですが、これから「提案制度」を始めても、たぶん提案らしい提案はほとんど出て来ないでしょう。それに業を煮やした社長から、提案することを義務付けるような動きが始まり、何かが出てきたとしても、あまり意味があるものとはならず、制度が機能しないままで終わっていく気がします。

 この会社で「提案制度」を機能させるには、社員の意識を変える取り組みや、提案を出しやすくする制度上の仕掛け、象徴的に取り上げられる実績など、企業風土に合わせた工夫が必要です。

 

 「提案制度」は、機能すれば良い仕組みだと思いますが、その運用に耐えられる企業風土があるのか、発想できる人材はいるのか、そもそも提案が受け入れられる環境はあるのかなど、その会社特有の問題があります。これはどんな制度、仕組みにおいても同じことです。

 もしも、グーグルの「20%ルール」を真似して導入しても、会社によってはただのサボりの口実に使われるだけかもしれません。

 

 考えている制度や仕組みがあるならば、それが本当に自分たちの会社に合っているのかを、あらためて慎重に見直してみて、その上で自社の環境に合わせた工夫をする必要があります。

 

 

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