小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「失敗体験」「修羅場体験」の不運と幸運
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最近、リーダー人材やイノベーション人材の育成がテーマになることが多くあり、ここでよく出てくる話の中に、「失敗体験」や「修羅場体験」の有無というものがあります。
「修羅場」と言っているのは、仕事での相当に大きな失敗の恐れであったり、生活基盤が脅かされるような危機であったり、極限近くに追い詰められた状況で、そういう中でいろいろ想定しながら実際に事業を回した経験がないと、本当の意味での事業リーダーにはなれないと言うのです。
こういった経験は、特に中小零細企業の経営者は、かなり多くの人がしていると思われ、そんな危機や失敗はなかったという人の方が、たぶん少数でしょう。
これが一定規模以上の企業に属している人となると、こういった「修羅場体験」は、なかなか出会う機会がありません。
例えば、海外事業を一から立ち上げろと放り出されたり、ありえない目標を押し付けられたりという状況は、一種の「修羅場」ではありますが、やはりどこかに会社の後ろ盾があります。急に借金を背負う、職を失うなど、自分の生活基盤が失われるまで追い込まれることは、たぶんないでしょう。
この「失敗体験」や「修羅場体験」は、研修会社などが工夫したプログラムの中で、疑似的に体験させるような取り組みもありますが、しょせんフィクションなので、なかなか実践的なところまでには至らないといいます。
要はこの手の経験は、その人の置かれた立場上で偶然に出くわすもので、意図的にコントロールできるものではないということです。まさにその人の運によるものです。
「失敗体験」「修羅場体験」は、一般的には不運な体験です。しないで済ませたいし、あってもできるだけ短期間に、ほどほどで終わって欲しいことです。
しかし、このような経験がリーダーとして重要な要件で、なおかつそう簡単にはできない経験だとしたら、この「失敗体験」や「修羅場体験」は、幸運な体験ということになります。
将来に活かせない経験はありませんし、それがなかなかできない貴重な経験であったとすれば、それは自分の大きな財産です。
「人生経験はバランスだ」などと言われ、良いことがあってもそれで舞い上がらないように戒め、悪いことがあってもその分違う幸運への希望を持ちますが、「失敗体験」や「修羅場体験」は、なかなかできない経験だからこそ、その後に活かせるものも大きいのではないでしょうか。
私自身は、こういう体験を問われても、思い出せる場面がないので、たぶんそこまでの体験はしていないと思いますが、これも他人から見ると違っていることがあります。本人に自覚がないままで「失敗体験」や「修羅場体験」ができていたとしたら、それは幸せなことでしょう。
失敗を思い出せないということは、反省が足りないとも言えますし、逆にメンタルが強いといえるのかもしれませんが、いずれにしてもその経験は、必ずどこかに活きてくるはずです。
いずれにしても、ある時の不運は、後から幸運になることもあるのだと、あらためて感じたお話でした。
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