小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ閉じた世界の中では気づきづらい「現象」から離れた「原因」
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目に見えている「現象」のすぐ近くに「原因」があるとは限らないということは、多くの人はすでにわかっていることでしょう。今さら言うほどのことでもありません。
ただ、自分の会社での課題など、身近で起こっている「現象」の場合、この状況が客観的に把握できていないことがよくあります。
そうなる理由は、個人間の親密度や思い入れ、その他主観に左右される要素がたくさんあるということと、世間の状況や他社事例など客観的な判断をするための情報量が少ないなどというです。
社内ということで、様々な事情を把握しているつもりでいて、その「現象」に対する「原因」をつかんだと思っていて、その中でいろいろな対策を考えていても、それを私たちコンサルタントのような第三者的な立場から見ると、実はそれが正しいとは思えないことがよくあります。
会社で特に「人」の問題として起こっている「現象」の場合は、その「原因」はさらに複雑に絡み合っていることが多いです。
例えば、「組織内でのコミュニケーション不足が見られる」と言って、その対策として、コミュニケーション技法を研修する、面談を義務付けてよく話をする、レクレーション行事をやってお互いがつながる機会を作る、などということを行います。
一般的にはよく見られる方法ですが、これはコミュニケーション不足の「原因」を、“スキル不足”“時間の不足”“面識の不足”などにあると判断して、その対策をしているということです。
しかし、この手の課題は「原因」が全く別のところにある場合があります。
これは私が経験した例ですが、組織上のポジションとして、全社のコミュニケーションの中心にいる事業部長が、部下たちからの人望がなく、信頼されていなかったためにコミュニケーション不足が起こっていたということがありました。コミュニケーション不足の「原因」を突き止めるために、社員のヒアリングをしていく中から、徐々にわかってきたことでした。
この事業部長の上司にあたる人は、経営幹部である役員クラスしかいませんし、役員たちと事業部長との関係はとても良好でしたので、その事業部長と部下との関係性までを把握している人は、経営幹部には誰もいませんでした。
ただ、コミュニケーション不足の問題は認識していて、その状況に対する意見を、部下である一般社員たちにいろいろ聞くことはあったようです。
しかし、話を聞かれた部下たちからすれば、役員クラスに気に入られているこの事業部長のことで、マイナスの発言をするのは勇気がいることです。本人の耳に入って自分が不利益を被らないとも限りません。
コミュニケーション不足の「原因」が事業部長にあると表立っては言いづらく、意見としていえるのは、キレイごとのような話ばかりで、なかなか解決には至らなかったようです。
こういうことは、第三者の方が気づきやすく指摘もしやすいということがあります。
私がこの時実際に行なったのは、多少の組織変更と人員の異動によって、この事業部長に集中していたコミュニケーションルートと、部下に対する権限を分散するということでした。
本人のプライドにも配慮したことで、わりとスムーズに事は進み、コミュニケーション不足の多くの部分は解消することができました。
「“現象”から離れたところに“原因”がある」ということは、頭ではわかっていても、自分の日常に近い閉じた世界での話になると、なかなか視野を広げて判断できないということがあります。
本当の「原因」を見極めるためには、閉じた世界の中での視点だけでなく、それ以外の様々な視点を活用する必要があると思います。
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