小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「仕事を任せてもらえない」には理由がある
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ある会社でのことです。社員からこんな話を聞きました。
「上司が仕事を任せてくれない」
「自分に判断させてくれない」
「権限委譲してくれない」
と言います。
だから自分の目標達成ができないのだそうです。
この社員のことを上司に話を聞いてみると、ちょっと渋い顔をして言うのは、
「指示したことはやらないで、違うことばかりやるんですよね・・・」
「だから信用できずに、任せたい仕事も任せられないんです」
とのことでした。
最近は、自分のスキルアップに対する意識の高い人が増え、早くいろいろなことを経験したい、いろいろな仕事をやらせてほしいという話を良く聞きます。
自分のキャリアを自分なりにきちんと考えるのは大事なことですが、その一方で、下積み的な仕事を嫌がったり、どう見ても能力不足なのに背伸びをしたり、それを認めないと不満を持ったりする人も増えたように思います。
この会社の件で言えば、私は日々の仕事ぶりをいつも観察している訳ではありませんので、上司が慎重すぎて部下を過小評価したりしているのか、それとも部下の仕事ぶりの方が問題なのか、実態がどんな状況なのかを客観的に見ることはできません。
ただ、それでも言えることは、部下にその仕事を任せるかどうかを決めるのは上司であり、上司が「任せられない」と判断するには、それなりの理由があるということです。
そして、その理由を一言でいってしまえば、その部下は「上司の望んでいる実績を残していない」「上司のニーズにはこたえていない」ということになります。
もしも、これが顧客との取引の上での話だとしたら、顧客が自社に仕事を発注して(任せて)くれなかったからと言って、その顧客に不満をいうことはほとんどないでしょう。
たぶん、自分たちが顧客のニーズに応えられなかったということを反省し、できることを改善し、新たな提案をして受注につなげる努力をするはずです。
しかし、相手が上司になると、途端に捉え方が変わってしまい、あたかも「自分に仕事を任せない上司が間違っている」というような話になってしまいます。相手のニーズに応えていないということでは同じであるにもかかわらずです。
これは、上司と自分との関係性を、少し勘違いしているということです。
上司は自分の両親のように、無償の愛を注いでくれる存在ではありません。相応のメリットを提供しないと、自分への見返りは得られない存在です。
仕事を効率的に進めることを考えると、作業的な判断はできるだけ現場に近い人が判断できるように、権限委譲することが必要です。その前提があるのに、「任せてほしい」という部下に対して、上司が「任せられない」というには、それなりの理由があります。上司の側に問題があることはもちろんありますが、それでも上司は上司です。
上司に媚びたりゴマをすったりする必要はありませんが、上司のニーズが何なのかを考え、それに応える行動をすることは、自分のやりたい仕事にたどり着くためには必要なことです。
「仕事を任せてもらえない」ということには、必ず理由があります。
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