小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「お手本になる人」は、いれば幸せ、いなくて当たり前
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「お手本にしたい上司がいない」
「目標にしたい先輩がいない」
いろいろな会社で良く聞く話です。お手本になる人(ロールモデル)が身近にいないということです。
最近聞いた話でさらに問題と思ったのは、「身近にお手本がいないから自分が成長できない」「目標になる人がいないから仕事がつまらない」など、そのことを転職や異動希望の理由として聞く機会が増えたことです。
そういう私自身も、特に社会人になりたての頃は、「“この人なら!”と尊敬ができて目標になるような人が身近にいれば良い」とは思っていました。ただ、今はこの考えとはかなり違っています。
もちろん「お手本になる人」が身近にいれば、それは確かに良いことですが、そんな人に出会うチャンスはめったにないと思うからです。
私の場合、書籍や読み物を通じての情報収集はもちろんしますが、どちらかといえば他の人の経験談やその他の話、ある人の態度や言動、行動パターンやお勧めのお店など、他人から直接得た情報や、実際に見たその人の振る舞いなどを、参考にしたり、マネしたり、反面教師にしたりということが圧倒的に多いです。ただしそれは、決して特定の個人ではありません。
実際に人から聞く話の方がリアリティがあり、自分の意識に深く刻まれるのは確かですが、私にとっての「お手本」は、自分が目にした数多くの人たちの様々なおこないです。
そんなことから、私には特定の「尊敬する人」や決まり文句の「座右の銘」はありません。理由は単純で、そんな全人格的に尊敬できるような人はいないし、良い言葉は世の中にいっぱいあるので一つだけには決められないだけです。「お手本」は特定個人ではなく、「お手本」になりうる言葉もたくさんあります。
少し前に、あるホテルの和食の料理長のお話を聞く機会がありました。自分を仕込んでくれた尊敬できる師匠がいらっしゃり、どんなに年齢を重ねても師匠は師匠、弟子は弟子だとおっしゃっていました。
まさに自分のお手本、ロールモデルが存在することはうらやましいと思いましたが、同時にそれはめったに出会うことができない、本当に幸せなことなのだろうとも思いました。
「お手本になる人がいない」と言って、それを自分が行動しない理由にしている人からは、他人に頼ることで安心しようという依存心や他責のようなものを感じてしまいます。
しかし、「お手本」というのはなりゆきで現れるものではなく、自分で見つけ出すものです。
自分がそのことを意識していれば、いま隣にいる同僚でも家族でも友人でも、もちろん上司や先輩でも、何かしらのお手本になることは必ずあります。
「お手本になる人」というのは、いれば幸せなことでしょうが、いなくてもそれは当たり前のことだと思います。
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