小笠原 隆夫
オガサワラ タカオベテラン社員を「お荷物」ではなく、認められる「長老」にするには
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“働かないオジサン”、“やる気がない中高年”など、ベテラン社員に関する良くない話を耳にすることが増えた気がします。
実際にそう言われても仕方がないような仕事ぶり、態度、振る舞いの人は、人事の現場では確かに目にすることがあります。ある年齢以上の人同士で、「再就職は無理だからとにかく組織にしがみつく」「追い出される口実になるような余計なことはできるだけしない」などと話しているのを聞いたこともあります。
これは給料に見合った成果があるならまだしも、相応の仕事をしないとなると、会社にとってはまさに「お荷物」でしょうし、逆にそう言われてしまうベテラン社員からも、いろいろ言いたいことはあるでしょう。
ベテラン社員に対する「お荷物」という表現は、物事の足を引っ張る、下位が常連になっているという意味だと思いますが、これと反対にベテランを敬う意味合いの「長老」という言葉があります。
特に経験が豊かでその社会で指導的立場にある人、年長で徳の高い僧侶、キリスト教会などで信徒の訓練にあたる代表者などを指して言うようです。
最近、この「長老」的な立場で活躍している人を見かけるのは、主に経営者もしくはその経験者、商店主や自営業者など自分で事業をしている人、技術や経験が必要な職人さんなどが多く、企業の中で、なおかつ現場に近い場所で、「長老」と呼べるような人に出会うことは多くありません。大企業になるほど、そんな傾向があるように感じます。
ベテランが「長老」になるか、「お荷物」になるかの違いは、私は“周囲からの期待があり、その期待を本人が自覚しているか”の一点にあると思っています。周囲の期待がなかったり、自分はできると独りよがりで思い込んでいたりせず、期待と自覚が両立していることが必要です。
企業の現場で「長老」が少ない原因は、実はこのあたりにあるのではないかと思っています。
例えば、役職定年制などがあれば、能力に関わらず一律に役職から退かなければなりませんが、いかにも「会社からあなたへの期待は終えました」と言っているような感じです。
さらにゼネラリストのキャリアでは、急に現場で何かするといっても、できることが少なかったり、何をして良いのかわからなかったりします。何ができるかと質問されて、「部長ができます」などと答えてしまうのは、この典型だと思います。
自分に対する周囲からの期待が感じられず、できそうなことも見つからないとなれば、「長老」ではなく「お荷物」の意識に陥ってしまうのは無理もないでしょう。
ベテランが「お荷物」扱いされてしまう原因には、年功的な賃金体系の問題、年齢構成のいびつさの問題、ポスト不足の問題、年長者に不利な業務特性の問題、組織風土の問題、その他いろいろあり、すぐに解決できるようなものではありません。
ただ、ベテラン社員に対する向き合い方に問題があるのは確かです。社員であるならば戦力として活躍してもらった方が良い訳で、そのために何らかの役割を与え、期待を伝えることは絶対に必要なことです。一人ひとりを良く見れば、「長老」として活かせる能力、経験がどこかにあるはずです。
組織にぶら下がろうとするだけのベテラン社員を、甘やかす必要はありません。
ただ、「お荷物」として追い出そうとしたり、若年者と同列で評価したりするばかりでなく、「長老」に転換する方法を考えることも必要ではないかと思います。
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