小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ嘘をいうつもりがないのに、結果的に嘘になってしまうこと
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「嘘も方便」などといい、それを実践するかのようにうまく立ち回る人がいます。
私の周りにはいませんが、そういう行動をする人に関する話を聞いていると、やはり最後にどこかで恨みをかったりトラブルを起こしたりして、結局はお互いの縁が切れてしまうことが多いようです。
嘘を言う人は、周りにいる顧客、社員、その他関係者から信頼されず、中長期での安定した関係を築くことはできません。それはビジネスそのものが成り立たないということになりますから、やはりビジネスの上での嘘は禁物です。
また、海外ではいろいろなことがあるようですが、日本国内のビジネス慣習であれば、嘘を言ってまでも儲けようという人に出会うことはほとんどありません。正直にビジネスをしている人が9割以上だと思います。
そんな中で、ある会社の社長が新入社員にされていた講話で、「嘘をつくつもりがなくても、結果的に嘘になってしまうことがある」というお話が印象に残っています。
例えば、相手の言うことを深く確認せずに思い込んだまま、「わかりました」などと安請け合いをしてしまい、もしもその時にお互いの意図が食い違っていて、そのままに物事が進んでいったあとから、その食い違いがどこかで発覚したとすると、初めに言った「わかりました」という言葉が、「実はわかっていなかったじゃないか!」と、相手にとっては嘘をつかれたのと同じことになってしまう、というようなお話でした。
本人には嘘のつもりが全くなく、相手も嘘をつかれるとはまったく思わず、お互いにまったく悪気がなくても、少しのコミュニケーションギャップを放置しただけで、それが嘘につながってしまうようなことがあるということです。
この話を聞いた時、私自身も思い当たることがあってドキッとしてしまいました。
お互いの思い込みによる行き違いというのは、大きなことから小さなことまで、いろいろな場面で経験していますが、それが「結果的には嘘をついたことになる」とまでは、思ったことがなかったからです。
これを単なるコミュニケーションの行き違いだと軽く考えていると、それが意図していなかったことであったとしても、結果的には言ったことが嘘になり、その嘘が始まりとなって信頼を失い、人との縁が切れ、ビジネスが成り立たなくなる恐れがあるということです。
嘘をいうつもりなどまったくなかったのに、言ったことが結果的に嘘になってしまうということは、自分にとっては不可抗力だったとしても、相手にとっては嘘をつかれたという事実に変わりはありません。
コミュニケーションの中では小さな行き違いというのは、どうしても避けられないものですが、そういうことがきっかけで嘘につながってしまうことがあり、それで信頼を失ってしまうこともあり得ます。
一つ一つは小さなことでも、コミュニケーションギャップや勝手な思い込みが起こらないように、認識合わせを細かく行なうことが大切だと感じます。
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