小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「環境先行型」と「事前準備型」で、それぞれ考えなければならない接し方
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サッカー日本代表の本田圭佑選手は、以前から「自分は環境先行型で、自分よりレベルの高いところでやることで、いろんなものを吸収することができる」ということを話しています。
「良い環境に身を置けば、それに応じて自分もレベルアップできる」ということだと思います。
私もどちらかといえば同じようなタイプで、例えば「言葉を覚えたければ、とりあえずその国に行ってしまえばどうにかなる」とか、「やらざるを得ない環境に置かれれば、必要なことは身につく」などと考えるところがあります。
本田選手のような高い意識というよりは、「切羽詰まればどうにかなる」「その場にならないとわからない」というような、ちょっと行き当たりばったりな感じでもあります。
こんな私とは逆のタイプになると思いますが、何事も事前にしっかりと準備をしようとする「事前準備型」と言えるような人もいます。
「海外に行くなら、先に語学学校に通う」とか、「必要と思われることは事前にリストアップして、計画的に準備をする」というような人です。
私からこういう人たちを見ると、「そんな計画通りにはいかない」「前もって準備しても、思い通りにはならない」などと思ってしまいますが、反対にこういう人たちが私のようなタイプを見れば、「計画性がない」「準備が足りない」などと思うのでしょう。
この「環境先行型」も「事前準備型」も、どちらが良いとか悪いとかいうことはなく、望ましいのはこれらを両面とも持っていて、その場に応じて使い分けられるということだと思います。
ただ、一人の人間がそうやって使い分けるのはなかなか難しいことですから、現実を考えると、同じチームや人の組み合わせの中で、両方の特性を持った人がいるということが良いのでしょう。
こんなことを考えている中で、それぞれのタイプとの接し方として、少し注意しなければならない場面が二つほど頭に浮かびました。
一つは、顧客に対して業務提案などをするような場面です、
相手が「環境先行型」であれば、緻密な計画は「細かすぎる」「現実性がない」などと捉えられがちでしょうし、いくら説明しても、あまり興味を持ってもらえないでしょう。
反対に「事前準備型」の相手であれば、おおざっぱな話では、「無計画」「雑」などと捉えられてしまうでしょう。
どちらの場合も、対応を間違うと、せっかくの商談がうまくいかなくなってしまいます。相手のタイプによって、対応を変えなければならないということです。
そしてもう一つは、人材育成の場面です。
「環境先行型」の人に対してであれば、事前に事細かにレクチャーするよりは、どんどん実体験をさせた方が本人も納得するでしょうし、身につくのも早いでしょう。あまり事前の準備を強いると、たぶん飽きてしまいます。
これが「事前準備型」の人であると、前もってある程度の準備期間をとり、必要な知識や技術を教え、多少は練習を積ませる必要があります。例えば「見て覚えろ」「とりあえずやってみろ」では、本人たちはまったく納得できないでしょうし、実際について来るのも難しいでしょう。デビューさせるまでには、それなりの準備と時間が必要です。
特に二つ目の人材育成に関しては、新入社員や若手社員が辞めていってしまう原因の一つとして、「環境先行型」と「事前準備型」のタイプを見誤った指導があるのではないかと思います。
これはあくまで私の主観ですが、上司など教える側には「環境先行型」が多く、新入社員や若手社員などの教えられる側には、特に最近「事前準備型」が増えているように感じます。
「環境先行型」や「事前準備型」というのは、タイプ分けの視点としてはごく一面的な切り口です。ただ、ある人にとっての成功体験は、ある人にとっては自分に合わない、もしくは疑わしい体験であったり、ある人にとっては自信につながる、参考になる体験であったりします。その感じ方はあくまでその人の主観であり、本人が納得できない事では、その後の前向きな行動にはつながりません。
何事も、人のタイプに合わせた接し方が大事だということを、あらためて感じています。
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