小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「管理職になりたくない」はそんなにダメか?
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2016年から「女性活躍推進法」という法律が施行され、301人以上の社員を雇用する事業主は、女性社員比率の向上や女性管理職の比率向上など、行動計画の策定が義務付けられることとなりました。
これで良い方向に進めばよいと思いますが、この件について私は、従来の男性中心社会を温存したまま、そこに女性を巻き込む要素が強いと感じること、女性に対する逆差別と感じてしまう部分があること、そもそも企業が個別の経営判断のもとに行うべきではないかと感じることなどから、あまり前向きな捉え方ができていません。
女性活躍が成長戦略と結びついているなど、政治的な意図が少し強すぎて、果たして実効性があるのだろうかと心配しています。
それはさておき、この法律と関連したある記事に、気になる内容のものがありました。
日本生産性本部が2015年春に実施した新人研修プログラムの参加者を対象とした調査によると、「管理職になりたい」と回答した女性社員は53.5%、逆になりたいとは思わない女性は46.5%だったそうですが、その半年後にも同じ調査を実施したところ、今度は「管理職になりたくない」という女性社員が73.0%に増加し、なりたい女性は27.0%に減少していたそうです。
近年、若手社員の間では、男女を問わず「管理職になりたくない」という人が増える傾向にありますが、希望を持って社会に出てきた新入社員の女性が、わずか半年の間にこれほど気持ちが変わってしまうということは、ちょっとショックな感じがします。
理由はこれまで若手社員全体の間で言われてきたこととほぼ同じで、「過大な責任を負いたくない」「現場で専門性が高い仕事をしたい」というようなことですが、要は半年間で見てきた管理職たちの様子が、自分にとって魅力的ではなかったということで、現実を知ってしまったということでしょう。
ここから見ると、「女性の管理職比率30%」などと法律で決められ、「数値目標を作れ」などと言われても、相当に先が思いやられるという気がします。
ただ、私はその一方で「管理職になりたくない」というのが、そんなにダメなことなのか、とも思っています。
私自身のことで言わせてもらえば、入社したての若手の頃も、それからしばらく経験を積んでからも、取り立てて「管理職になりたい」と思ったことはありませんでした。それでも結果的には管理職になった(してもらった?)わけですが、それは組織の中で自分の仕事をやりやすくするためには、管理職である方が都合が良いと思ったからです。
「管理職になりたくない」という心理は、報酬に見合った仕事ではないと思ったり、ただ大変そうなハードワークに見えていたりすれば、私はある意味当然ではないかと思っています。あえてそんな仕事をしたいとは思わないでしょう。
その反対に、管理職であることのメリットを知り、管理職の人たちがイキイキと仕事をしている様子を見ていれば、その考え方は変わっていくでしょう。
管理職などというものは、やりたくない人に無理やりやらせるものではありません。反対に、やりたくて仕方がない人がいたとしても、その人が適任とは限りません。
「女性管理職比率」の件は、法律で決められたことではありますが、管理職になる、ならないというような、会社の事情と個人のキャリアに関することで数値目標などを要求されるのは、あまり気持ちが良いものではありません。
組織の中での役割というものは、それぞれ構成する人たちが、意外にうまく分担していくものです。その点で、「管理職になりたくない」という人が今は増えているとしても、その後の立場によって気持ちは変わっていきます。そういう意味では、私はあまり心配する必要はないと思っています。
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