小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「何か欲しければ、自分から先に与える」ということ
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これは私が独立してから何度も思う機会があり、何度も経験してきたことです。
つい最近もあったのですが、起業したてのコンサルタントの人で、会うたびに自分の商材やサービスに関する営業ばかりをする人がいました。
いい人ですし、一生懸命な様子がよくわかり、応援してあげたいとも思うのですが、周りの人たちは、その一方的な営業の姿勢を見て、何となくその人を避けるようになってしまっています。あまりにも自分の話ばかりで、かかわると面倒なことになりそうですし、周りがそんな感じになるのも仕方がないと思います。
私自身のことを振り返ると、特に起業したての頃は、自分では無意識のうちに、自分の都合ばかりの一方的な話をしていたことが、結構あるような気がしています。自分はこんな仕事をしているとか、こんな専門だとか、仕事を紹介してほしいとか、そんな内容の話です。
しかし、そんな話が自分に都合よく回るはずもなく、ごく少数の関係者を除いては、何かを自分に与えてくれるような人はいませんでした。
そんな中、ある日ちょっとしたつながりから依頼された仕事を、知人のコンサルタントに紹介したことがありました。特に見返りなどは考えていない気軽な気持ちでしたが、紹介した相手にとってはそうではなかったようで、その後ほどなくして、その人は私に別の仕事を紹介してくれました。もちろんとても有り難いことです。
このお礼をした時に、相手の方から言われたのは、「お互い様だから」という話と、「紹介がものすごく有り難かった」という話でした。
話を聞くと、ちょうどその頃あまり仕事がなく、困り始めていた時だったようで、たまたま私が紹介したことが、本人にとってはとても大きなことだったようです。こちらの思った以上に恩義に感じてくれていたようでした。
こんなことがあってから、私自身の心がけとして、まずは相手のメリットになることを、できるだけ先にやろうと考えるようになり、自分のできる範囲で少しずつ実行するようにしていきました。やったことはたいして大きな話ではなく、ちょっとした知り合いを紹介するとか、ちょっとしたアドバイスをするとか、その程度のことです。
そして、そんな意識をするようになってからは、徐々にですが自分に何かを与えてくれる周りの人が増えてきたと感じています。これは仕事以外のことでも同じで、先に何か行動すると「前回はあなたがやったから」などと言って、次を担ってくれる人が出てきたりします。
前述のコンサルタントに話を戻すと、結局は自分に対するメリットを求めるだけで、相手に何かを与えることはしていません。
こうしているうちにいつの間にか姿を見かけなくなり、そのうち会社もなくなってしまった人を、今までたくさん見てきましたが、やはり誰からも与えられることがなく、仕事が成り立たなくなってしまったのではないかと思います。
聖書に「与えよ、さらば与えられん」と書かれているそうですが、実感としてそれが大切なことだと思います。
自分の心に余裕がない時ほど、求めるばかりで与えることができなくなってしまいます。そんな気持ちを乗り越えて、自分が何かを先に与えれば、誰かが必ずそれに応えてくれると思います。
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