小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「適材適所」と「個人のキャリア」を合わせる難しさと大切さ
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今ごろの時期は、年度末の人事異動がそろそろ落ち着いてきたか、中にはこれから新たな部署で本格的な始動という人もいるのかもしれません。
この人事異動の際によく言われるのは、「適材適所」ということです。言葉の意味を調べると、「その人の適性や能力に応じて、それに ふさわしい地位・仕事に就かせること」とあります。組織の機能化、効率化を進める上で、「適材適所」というのは重要な要素だということでしょう。
人事異動にはいろいろな種類があります。役割が変わる部分では、昇格も降格もありますし、部署異動や仕事内容の変更においては、栄転も左遷も横滑りもあります。
組織にとって大切な「適材適所」も、個人の立場からすれば不本意なことがたくさんあり、まさに翻弄されている感じがしますが、それは結局のところ、「適材適所は他人が決めること」だからです。
個人のキャリアをどうするかよりも、組織の都合が優先される訳ですが、組織に属している限りは、これもやむを得ないことでしょう。
このような人事異動が受け入れられてきた大きな理由には、終身雇用をはじめとする雇用の維持と、年次とともに役職や給料が上がる年功序列の前提があります。多少の無理強いであっても、最後は会社がどうにかしてくれるから、言いなりに受け入れておけば良いという部分がありました。
ただ、最近はこの前提を維持することが難しくなってきています。また、社員の側もそれがわかってきていますから、不本意な仕事に対しては、それを受け入れずに転職という選択をする人も増えています。
にもかかわらず、人事異動に関する会社側の意識は、組織の都合優先の「適材適所」から脱していないように思います。もっと組織の都合と個人のキャリアを合わせて行かなければ、様々な弊害が出てきます。
個人のキャリアに注目しない異動を繰り返すことで、キャリア意識を持った優秀な人材が社外に流出し、自分のキャリアを人任せにしている意識の低い人材が社内に残りやすくなります。社内価値しか持たないゼネラリストや、専門範囲が狭すぎるスペシャリストが増える恐れがあり、会社が活用しづらい人材を次々と生み出しているようなことになりかねません。
最近は、「自社に必要な人材要件を見極め、その選抜や能力開発を戦略的に進める取り組み」として、「タレントマネジメント」が注目されています。
組織で考える「適材適所」と「個人のキャリア」を合わせるのは難しいことですが、その重要性はこれからもますます増していきます。そのことはしっかりと認識する必要があると思います。
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