小笠原 隆夫
オガサワラ タカオお金へのこだわり方からうかがえる職業観の違い
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少し前のことになりますが、アメリカのAmazon社が、同社を辞める社員に、勤続1年ごとに1000ドルずつ、最大5年分までの最高5000ドル(約50万円)を提供する制度を始めたという話題がありました。
その背景は、同社としてはできるだけ社員に留まってほしいと考える一方で、「お金を受け取れば仕事を辞めてもいい」と考えている社員は、会社の長期的な展望に満足していないと見なして、その人たちに去ってもらうことで、残った社員の満足度を向上させようという考えなのだそうです。
この考え方を聞き、少し思い当たったことがあります。
私がこれまで社員採用に関わってきた中で、中途採用の場合は、応募者との間で給与条件などの折衝を行うことになりますが、中にはその金額について、かなりシビアな要求をしてくる人がいます。
そのこと自体は全く悪いことではありませんが、そういう経緯で入社した人は、概してあまり長く在籍せずに辞めて行ってしまうことが多いと感じていました。
こういう人たちに辞める理由を聞くと、仕事内容や社風などというよりは、「転職先の会社の方が、待遇条件が良いから」と言われることが多かったように思います。そして、ここでいう待遇条件とは、ほとんどが給与額の部分でした。
私がいた会社は、給与水準がすごく高い会社というわけではなかったので、辞める理由が給与だと言われてしまうと返す言葉がありません。
ただ、給与へのこだわりを、すでに実績を上げてきた事実に基づくものでなく、入社前から主張するような人は、入社後の様子を見ていて、当初の主張に見合うだけの評価をされない人も多く、自分の処遇の現状を、自分の能力ではなく周りの環境のせいにしている傾向を感じていました。
そんなことから、社員に長く会社に留まって勤務してほしいと考えた時に、入社時のまだ実績がない段階で、強くお金にこだわるタイプの人は、あまり採用すべきでないと思っていました。やはり、お金の優先順位が高い人は、お金を理由に辞めていくということです。
お金のために働くことは当然のことですし、そこにこだわることも、そのための転職も全く悪いことではありません。
ただ、自分の処遇状況を、周りの環境だけに原因を求めてしまうのは、あまり良いこととは思えません。少なくとも会社側からは、他の社員の満足度を下げる存在と捉えられてしまうように思います。
何においても他責の姿勢は、結局自分が損をするだけだと思います。
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